玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します。

12月の野鳥調査

2021-12-18 20:36:58 | 調査報告

玉川上水の野鳥調査 − 2021年12月

 

大石征夫・大塚惠子・大出水幹男・尾川直子・鈴木浩克・高槻成紀(分析)

 

小平での調査のようす(2021.12/18)

 

2021年1月から隔月で玉川上水の野鳥調査をしてきたが、9月に野鳥が大幅に減少した後11月に回復した。これはヒヨドリをはじめとする野鳥が玉川上水から一時的にいなくなったためで、それが11月に戻ってきたためと思われる。同様なことは皇居や赤坂御所での調査でも確認されている。ただ回復した後の調査が1回ではやや不確実なので12月にも調査するのが望ましいと考え、追加的な調査を行った。調査は12月18日におこない、調査場所、方法などはこれまでと同じので省略する。

 

結 果

種数は三鷹が最も多く、小平がこれに接近して次いだ(図1) 。小金井は8種に過ぎず目立って少なかった。

図1. 各調査地での野鳥の出現種数

 

 個体数は小平が279と非常に多く、これはこれまでの全ての調査の最高値であった(図2)。他の3箇所は大幅に少なくことに小金井は60羽にすぎなかった。

 

図2. 各調査地での野鳥の出現個体数

 

 これらに基づいて算出した多様度指数は小平と三鷹が大きく、ほぼ同じで小金井が最小であった(図3)。

図3. 各調査地での野鳥の多様度指数

 

 野鳥の個体数の内訳から森林に生息する野鳥の個体数が全体に占める割合を「森林鳥率」として算出したところ、小平が最大で、小金井が目立って小さかった(図4)。

図4. 各調査地での「森林鳥率」(緑色、%)

 

 調査では、玉川上水沿いの樹林をアーケードのように捉えて、その内側にいた野鳥とその外側で発見された野鳥にわけ、全体に対する内側で発見された野鳥の個体数の割合を「内側率」とすると、内側率は小平が最大、小金井が最小であった(図5)。この率は三鷹よりも杉並で高い点が他の指数と違った。

図5. 各調査地での「内側率」(%)

 

 最も個体数の多かったヒヨドリの個体数が全体に占める割合を「ヒヨドリ率」とすると、小平と小金井が小さく、三鷹がこれに次ぎ、杉並が最大であった(図6)。

図6. 各調査地での「ヒヨドリ率」(%)

 

考 察

 当初確認したいと思っていた9月以降の野鳥の回復は確かに確認され、特に小平の野鳥が非常に多かった。小平では森林の状態が良いため、ほとんどの野鳥は「内部」で記録され、「森林鳥率」も高かった。調査した12月18日はコナラなどが落葉したばかりで、見通しがよくなったため、ヒヨドリだけでなく、シジュウカラ、エナガ、メジロなど典型的な森林性の野鳥が多く発見された。三鷹はさまざまな数字が大きい値を示したが、「内側率」は小さかった。このことは三鷹の野鳥が「玉川上水の樹林にあまりいない」のではなく、井の頭公園などの状態の良い樹林が周辺にも広がっているために「周辺の樹林にもいる」結果だと思われる。小金井は全ての値が他の3カ所よりも大幅に少なく、野鳥群集が貧弱であることが確認された。特に内側率と森林鳥率が小さかったが、これはサクラが間隔を置いて生えているだけで、他の落葉樹が皆伐されたために野鳥が玉川上水周辺にいなかったことの結果であり、この伐採が森林性の野鳥の生息に決定的なダメージを与えていることがわかった。

 

 調査には田中 操様、春山公子様、リー智子様にご協力いただきました。