● 私たちはこの事実をできるだけ多くの小金井市民の皆さんに知っていただきたいと思います。このような殺伐とした景色と行いを、多くの小金井市民が歓迎するとはとても思えません。「桜は好きですか」と聞かれれば誰でもうなずきます。でもそのことは「桜以外の雑木は伐り尽くす」ことでしか実現できないわけではないはずです。このようなむごいことが桜を愛でる心につながるとは思えません。どうか実態を知り、この植生管理を見直すよう行政に声をあげようではありませんか。
「玉川上水花マップネットワーク」では2020年から「花ごよみ」と称して玉川上水に咲く植物の花の時期を記録しています。実際にはメンバーが10日に一度玉川上水を歩いて花が咲いていたら写真撮影をして報告してもらっています。
今回(2021年2月3日)小金井で一本だけ残っていたコブシの木が無残に伐られてしまいました。私は翌日、現地に行ってその変わり果てた姿を確認しました。水道局の伐採理由は倒木の危険があること、法面を崩す危険があることですが、この木はそのどちらにも該当しません。しかも計画には景観に配慮するとあります。このコブシは毎年春になると白い花を咲かせ、この辺りの景観に大きな貢献をし、それを楽しみにする市民も大勢いました。計画には地元の市民の声をよく聞いて計画を進めるともありますが、これも無視されました。
伐採されたコブシ
小金井市はこの場所にはサクラ以外の木は要らないから伐るという方針とのことです。しかし、本当に小金井市民の多くがこの殺伐とした景観を歓迎するのでしょうか。コブシが生えてい対岸を見ると、ケヤキを主体とするたくさんの樹木が無残な切り株となって冬の日を浴びていました。実に寒々とした景色でした。
このコブシの伐採痕は直径30 cmほどでした。改めて年輪を調べてみようと思いますが、おそらく30歳くらいと思われます。コブシは秋になると不規則にデコボコした果実をつけます。それが人の拳のようだということから「コブシ」という名前がつきました。
コブシの果実
中に赤い種子が入っていて目立つのでたぶん鳥が飲み込んで種子を運ぶと思われます。赤いので果実と思いがちですが、赤いのは種皮で、中には黒い種子が入っています。
コブシの種子
私は長野県のタヌキの糞を調べていて果実が出てきて驚きました。だから、哺乳類もコブシの種子を運んでいるようです。いずれにしても、このコブシは30年くらいまえにここに運ばれてきて芽生え、少しずつ成長して高さ5mほどの木に育ちました。
花ごよみで小金井公園辺りを担当している安河内さんから送られてきた写真を探したら2019年3月18日に白い花が確認されていました。
2019年3月18日(安河内撮影)
そして2020年は3月に3回の記録がありました(安河内撮影)。
2020年3月6日
2020年3月16日
2020年3月26日
そしてこの冬も休まずに幹の中を樹液が流れていたのでしょう。冬芽が少しずつ膨らんでいました。
膨らむ冬芽 2021年1月21日(高槻)
しかしその一生、これからという一生は「サクラ以外の木は要らない」という一方的で理不尽な理由で無残にも永遠に断たれました。もしその種子を運んだ鳥が小金井以外の場所まで運んでいたら、今でも花を咲かせる準備をしていたはずです。私たちは多くの人の声を受けて伐採を見直すよう請願書を提出しました。もし行政が市民の声に少しでも耳を傾けていたら、少なくとも今回は見送るとか、伐採ではなく剪定に止めることもできたはずです。
伐採の作業をする人は、このコブシとは別の木ではありますが、同じような木の幹を運んでいました。その淡々とした表情に却って気の毒さを感じてしまいました。この人たちは命じられた業務をしているに過ぎません。しかし、サクラだけを優先し、市民の声を踏みにじって「雑木は邪魔だから伐り尽くせ」と命じた大きな組織はその罪の重さを背負うべきです。
高槻成紀
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追記
あのコブシが伐採されてわずか4日後、私は玉川上水の小平部分を歩いていました。そうしたらコブシの花が咲き始めていました。あのコブシも伐られていなければ、きっと今日開花していたはずです。そして思ったのは、もしあのコブシもその種子を鳥が小金井でなく小平まで運んでいれば、このコブシと同じように花を咲かせていたのにということです。。
咲き始めたコブシ 2021.2.7 小平市