伐られてしまった木
橋本承子
(小金井玉川上水の自然を守る会)
玄関のドアを開け、目の前の玉川上水を見ると悲しくなります。無残な切り口を見せて並ぶ大小の切り株、切り株・・・・。とうとうここまで伐りつくされてしまいました。桜以外は・・・。
ここは10年前までは鬱蒼とした緑に覆われ、渋滞の多い五日市街道がすぐ向こうにあるとは思えないほどでした。遊歩道に咲く古木の桜も楽しみでした。桜の花が終わると家の前にはエゴノキの白い花が咲き、新緑の朝にはいろいろな鳥の声が聞こえました。真夏に駅から上水に上ってくるとひんやりしました。そして秋には紅葉も見られ、大量の落ち葉には木々と共に暮らせることに感謝しました。こうして、一年中自然を感じることができる素晴らしいところでした。
それが「名勝小金井桜並木復活」という目的のため、突然ほとんど伐られてしまったのです。残念でなりません。その目的が「桜以外の樹木の伐採」だとは驚きました。桜並木復活とは、今ある遊歩道の桜を大切に守ることでも、寿命がきた桜を植えかえることでもなく、ここに自然に育った他の木を無くして新たに桜を植え、昔の風景に戻すことだそうです。
私はなんとか桜以外の樹木を残して欲しいと望む方々と、小金井市にも東京都にも要望を出してきました。しかし「上水の法面を崩壊させる恐れのある木も倒木や枝折れのある木も全て伐採する」という水道局の考えもあり、それが桜並木復活のやり方と相まって現在の無残な姿になりました。ここには何とか豊かな緑を守ろう、生物多様性を大切にしよう、という考えはありません。切り株は痛々しく、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
大きな問題だと思うのは、ほとんどの小金井市民はこの成り行きを知らないということです。小金井市はアンケートを取り「多くの小金井市民が名勝小金井桜の復活を願っている」と言いますが、アンケートは誘導的だし、その回答数は400件足らずにすぎません。この惨状を小金井市民にも東京都民にも大げさかもしれませんが、できたら世界中の人にも知ってもらいたいと思います。多くの方がここまでひどい伐採を望まないと信じています。
新小金井橋西. 21.2.16 安河内さん撮影