映画と渓流釣り

さよなら歌舞伎町のイ・ウヌに驚愕

 荒井晴彦脚本、廣木監督作品。歌舞伎町のラブホテルが舞台となれば、日本映画好きな人であればやっぱり期待してしまいますよね。所謂グランドホテル形式でつくられているのと、限られた時間軸で語られる数組の男と女の物語です。
一応主人公のカップルはラブホテルの雇われ店長(染谷)とミュージシャン志望の彼女(前田)になってますが、この二人はあまり面白くありません。彼女がメジャーデビューしたいがために枕営業をする下りは使い古されているし、ホテルの店長であるがために否応無く現実を見せ付けられるのも工夫が無い。AV女優になった妹と同棲している彼女が働いてるホテルに偶然来るか?と、まあそれは作劇上仕方ないとして、妹も彼女も店長に知れたところで悪びれもせず開き直るのはあまりリアリティが感じられませんでした。
嘘くさすぎる挿話ではありましたが、デリヘルのスカウトマンと家庭から見放された家出娘がチキンナゲットを山盛りにしてじゃれあう姿の方が愛らしかった。
南果歩の地味で従順そうなオバサンが、実は周到な腹黒さと大胆さを隠し持っている女でした。と言う件も荒井脚本らしくて楽しめました。ふたりで一尾の魚を食べるシーンで、松重旦那が「ひとり一尾ずつ食べたいな」とこぼすと、「管理人にバレルからもう少し辛抱」と諭すところなどは上手いなあと感心しました。

そんな一対の男と女の中でも、一番インパクトがあったのは、日本でお金を貯めて故国韓国に帰り母とブティックをひらく夢を持った女の子(その時は女の子だと思っていました)の挿話です。
同棲している同胞の彼氏に本当の素顔は見せないで、デリヘル嬢として歌舞伎町の夜を舞う姿は、いま交差点ですれ違ってもおかしくないリアリティでした。たどたどしい日本語もペ・ドゥナの空気人形の時のような可愛らしさを感じました。
驚いたのが、二十歳過ぎの女の子だと思っていた女優イ・ウヌが34歳だという事実。
いや~。すごいですね。言われてみりゃ少々頭は立っているかなと思うけど、あんな感じの若い韓国女性いっぱいいますよ。完全に同化してます。K-POPとか韓流ドラマとかに全然興味は感じませんが、韓国女優の演技力はすごいですね。日本のお嬢ちゃま女優ばかり観てるので、質の違いに愕然としました。
折があれば、女優イ・ウヌには日本の名監督と組んで、ねっとりした映画をつくっていただきたいと思いました。

学生の頃、毎週のように通った歌舞伎町 花園神社も懐かしい
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