開高健が“第二の処女作”と位置づける名作『夏の闇』のなかに出てくる言葉。
「美食と好色は両立しないよ」
「そうかしら」
「どちらかだね。二つに一つだよ。一度に二つは無理だよ。御馳走は御馳走。好色は好色。どちらを選ぶかだ。二つ同時では眠くなるだけだ。もともと両方とも眠るためのものらしいけれど、味ぐらいは知っておきたいね。あとは眠るだけだ。なら、二つに一つだ」
フランスで10年ぶりに再会た男と女はパリの学生町の安い旅館でひたすら“甘い生活”にふける。そのときに男が口にする睦言。
「美食」と「好色」の語音を重ねただけの言葉遊びのように感じられるのは、私自身がその二つは両立すると思っているからだろうか。もちろん“まったく同時”にというわけにはいかないが。

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