ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

033. 洗濯機がやってきた

2018-11-19 | エッセイ

 

とうとう洗濯機(Maquina de roupa)を買い換えることにした。
もう十数年も使い続けてきたのだから、これでもよく持ったほうだと思う。
一度、ゴムの部分を取り替えたことがあるが、そのあとはとても調子が良かった。

ところが去年あたりから少し異変が起こった。
キッチンに置いてある洗濯機に衣類を放り込むと、あとは終わるまでお任せで他の事をしているのだが、その時はたまたま途中でキッチンに入った。
ふと床を見ると、水がたまっている!
「これ何?どうしてここに水が?」
水の元をたどると、水は洗濯機の下からしみ出していた。
幸い、床はタイル張りなので下の階に漏れる恐れはないが、慌ててモップでふき取った。
ついでにキッチンの床掃除。
次からは洗濯物の量を減らし、時間も短く設定した。
洗濯機を回すモーターの力はまだまだ元気いっぱい。
でも下から漏れる水の量はだんだん増えてきて、モップでふき取るのも大変になってきた。

だいぶ前からTVのコマーシャルで、やっていたのですね~。
どういう内容かというと…
洗濯機から水が漏れ出して、必死で水をふき取っている主婦。
修理屋が洗濯機を開けて取り出したヒーターの部分に白いものがびっしりこびり付いている。
「奥さん、これじゃあいけねえよ!カルゴンを使ってる? 何、使ってない!」
そこで「~にはカルゴン~」という唄と商品名がでる…。

ヒーターに付いている白いものは、水に含まれている石灰質らしい。
我が家ではひどい汚れものはないから、よほどの事がないかぎり温度はかけない。
だからヒーターが傷むことはないだろうとかるく考えていたのだが…。
ハッと気が付けば、我が家のキッチンはコマーシャルとまったく同じ状況になってしまった。

このごろ例のコマーシャルも内容がだんだん詳しくなってきた。
ヒーターだけではなく洗濯機のあらゆる部分に付着して、排水管なども詰らせるらしい。
人間の血管にコレストロールがたまるようなものだろう。
ヨーロッパの水は硬水で日本の水は軟水だというのは知っていたが、今度のことで実感した。
水の中の成分が洗濯機に付着して壊してしまうから、それを溶かすための薬を入れなければいけない…ということ。
日本人にとっては馴染みのないことだ。

修理を頼んでもかえって高くつくから、このさい買い換えることにした。
ちょうど大型スーパーで洗濯機の売出しをしていることだし。
省エネタイプで、デリケート洗いもついている…うん、これはいい。
イタリア製…だいじょうぶかな?
値段が定価の半額近い…これで決まり!

それから数日後、店から電話があったので、翌日の2時に配達してもらうことにした。
洗濯機の後はたぶんホコリがたまっているだろうと、動かそうとしたが重くてビクともしない。
ビトシと二人がかりでやっとずらせて掃除ができた。
これで配達人がいつ来ても大丈夫。

翌日、2時という約束だがたぶん早くても3時過ぎだろうと思っていたら、ビビーッと玄関のブザーが鳴った。
2時15分、ほとんどぴったり!
でも我が家は4階にあり、しかもエレベーターなどない。
ちょっと動かそうにもまるで岩のように重たい洗濯機。
どうやってここまで運び上げるのだろう? クレーンでベランダに吊り上げるのだろうか?

心配していると、男が一人でやってきた。
伝票を持って、ここに間違いないかと確認にきたのだ。
「あれ、洗濯機は?」
「アゴラ、アゴラ」(今、今)と階段の方を指さす。
らせん状になっている階段を覗き込むと、大きな洗濯機が登ってきた。
洗濯機の下には若い男がいる。
「ヒェ-ッ!」
驚いた、その男はたった一人で洗濯機を背中に担いでここまで登ってきたのだ!
ドアの前で洗濯機を下ろした男は息さえ切らしていない。
私達はいつも両手に買物袋を持ってこの階段を上ってくるのだが、三階あたりで息が切れ、
我が家のドアまであと三段という所で後ろ向きに引きずられそうになる。
それに比べてこの若い男は…ギリシャ神話の英雄ヘラクレスじゃなかろうかぁ~。超人だ!

キッチンに運んで今度は二人がかりで洗濯機の梱包をバリバリとはがしていく。
次は様々な金具の取り付け。
超人ヘラクレスともう一人の男はものすごいスピードで作業をする。
こんなの初めて見た!
まるで素晴らしい格闘技を観ているようだ。
二人の息がぴったりあっている。
その間、無駄話いっさいなし。
こんなタイプのポルトガル人は初めて見た!

あっけにとられているうちに作業は済んで、超人ヘラクレスは今度は古い洗濯機を担いで瞬く間に姿を消してしまった。
もう一人の男が使い方を簡単に説明したあと、これも脱兎のごとく駆け下りていった。
チップを渡そうと用意していたのに、その暇もなかったのが残念。
あわてて窓を開けて、もう出発しようとしている彼らに「オブリガーダ」と大声でお礼を言うのが精一杯だった。

ピカピカの洗濯機はすごく快調。
それまでと同じ分量の洗剤で見違えるようにきれいに汚れがおちる。
それに脱水力が強い。
古い洗濯機では絞り終わってもジュタジュタであった。

電化製品も日々進化してるんだなぁ~。
もう少し早く買い替えればよかった。

超人ヘラクレスは毎日、重い洗濯機や冷蔵庫を担いで、階段を登り降りしていることだろう。
昔、山岳部の男達が重い石をリュックに詰めて学校の階段を登ったり降りたりして訓練していたのを思い出す。
超人ヘラクレスも身体を鍛えるために、実益を兼ねたアルバイトをしているのだろうか…。

ところでさっそく石灰質撃退の優れものを買ってきましたよ。
でもカルゴンではなく、同じようなものでずっと安いのを発見しました。
その名もずばり「Anti Calcario」(石灰質撃退)
これを洗濯のたびに少し入れて、温度も30度以上に設定するそうです。




ついでに洗濯と洗剤についてのおもしろサイトを見つけました。

石けん百科 (生活と科学社)
http://www.live-science.com/index.html

MUZ
2005/08/01

©2005,Mutsuko Takemoto
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(この文は2005年8月号『ポルトガルのえんとつ』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルのえんとつ』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)

 

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K.047. 飛ぶ魚絵柄深大皿 Prato Pintura de Peixe

2018-11-19 | 飾り棚

直径36cm

 アレンテージョ地方の陶器の町レドンドでは、毎年8月に紙の祭りがある。

 町のあちこちの通りがテーマごとに切り紙で作ったオブジェが飾られ、頭上にはアーケードが作られて、切り紙細工がびっしりと下がっている。
 見た目にもきれいだが、真夏の燃えあがるような太陽をさえぎる役目もしている。

 そんな中を歩き回っていて、ふと目に付いた。
 勢い良く跳ねる魚は飛び魚だろうか?
 でもメルカドで飛び魚を売っているのは一度も見たことがないし、カジキマグロにしては口が尖がっていないし…

 たぶん想像上の魚なのだろう。
 「魚と花」の図柄。
 なんだかシャガールの雰囲気がして、気にいっている。MUZ

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