セトゥーバルから南に4~5時間行ったところにカルダス・デ・モンシック(Caldas de Monchique)という温泉地がある。
実はこの二ヶ月の日本滞在中に宮崎空港近くの加江田にある温泉と霧島神宮の温泉に行きすっかり温泉好きになってしまった。
それと空港ビルのW課長さんが私たちのために近所の温泉水を時たま汲んで持ってきてくれた。
誰にも教えない、彼の秘密の場所の冷泉である。
お茶や麦茶にそれを使った。
化粧水としても使ってみたのだが、調子が良い。顔がすべすべ、ツルツルになった。
傷も治りが早いし、歯痛もこの温泉水で口をすすぐとすぐ治まるという。
日本滞在中ずっと愛用していた。
でもこの温泉水をポルトガルまで持って行くのも大変!
それでポルトガルに戻ってすぐに、以前にも行ったことのある、カルダス・デ・モンシックに行くことにした。
ポルトガルには温泉はあちこちにあるが、日本の温泉感覚は通じない。
療養所というか、温泉病院のようなものしかない。
そのてん、カルダス・デ・モンシックのホテルは部屋の風呂の湯が温泉なので、病人でなくても、なんとか温泉だけは入れる。
もちろんスケッチ旅行が第一の目的で、温泉は付録だが…。
今なら牧場などのお花畑がまだ枯れずに残っているぎりぎりの時期でもあるし、急いで旅に出よう。
フェリーに乗ってトロイアへ渡った。
トロイア半島のお花畑は以前に比べるともうほとんど終りかけ。でもところどころにまだ精一杯咲いているのもある。
コンポルタ村には去年よりもコウノトリの巣が増えているような気がする。
それぞれに卵を温めたり、雛の世話をしている様子だが、親鳥の身体が薄黒く汚れているのが気になった。
コウノトリが薄黒いのはたぶん田んぼの小魚を獲るために、泥水に染まったせいなのだろう。
コンポルタの周辺の田んぼの稲はようやく15センチくらいだろうか?
宮崎の早場米より遅い。宮崎では私たちが出発する時には稲は既に30センチ程にも伸びていた。
お昼は、以前、ポルトガル人から教えてもらった「アヒルのオレンジジュースオーブン焼き」が美味しいと評判の店に入った。
じゃがいもと玉ねぎを敷き、オレンジ果汁と香辛料で味を調えたアヒルをその上に置いてオーブンで焼く、…のだろうと思う。
アヒル特有の臭みもなく、バタータ(じゃがいも)がまったりとして旨い。
料理が出てくるまでかなり時間が掛かったが一度は食べてみる価値はある。
付け合せで、アヒルの内臓と一緒に炊いたご飯(アロス・ド・パト)が出て来た。
他の店のは脂ギトギトで私は好きではなかったが、この店のはあっさり薄味のリゾット風で、いくらでも入る。
でもその前に付け合せのバタータをどっさり食べてしまったので、もうお腹に隙間がない!
5月下旬でもまだところどころお花畑は美しく残っている。
途中花を眺めたり、村に立ち寄ってスケッチをしたりで、カルダス・デ・モンシックに着いたのが18時30分を回っていた。
実は数年前この村は洪水に見舞われた。
だから到着するまでかなり不安だった。
この村が以前のままであるか、ひょっとして洪水で壊滅的な被害を受けて、もうやっていないのではないかと心配だった。
でも、目指す宿(アルベルガリア・ド・ラゲアード)はそのままの姿で存在していた。
ただ、村の中心部にあった木造の療養施設はなくなっていて立派な公共の施設に替わっていた。
たぶんこのあたりが洪水に流されたのかもしれない。
albergaria do lageado
8550-232 Monchique Algarve Portugal Tel. 282 91 26 16
アルベルガリアは庭の美しい宿だ。今回は以前に泊まった時の隣の部屋になった。
温泉宿と言っても日本の様に露天風呂などはない。
普通のバスルームしかないので温泉気分は味わえないのが残念。
でもこの風呂は確かに温泉水で、入るとすべすべする。
ホテルの受付の女性は、どこの水も全部、村の冷泉から引いているから、バスルームの水でもどこのでも肌に良いし、もちろん飲んでも良いと胸を張った。
プールに浸かってもツルツルよ!と言う。
水着は持ってきたが、残念なことにもう陽が傾いている。
この温泉村は山の中で、しかも道路からぐっと下った谷間にあり、空気もヒンヤリする。
うっかりすると風邪を引きそう。
そのかわり風呂に何度も入った。
そして広いベランダで、傾きつつある太陽を求めてあっちこっちとイスを引きずりながら移動した。
それでもプールは最後まで陽が残る所に作られていて、宿泊しているドイツ人たちが残り陽を惜しむかの様に、陽が完全に落ちるぎりぎりまでプールで泳ぎ、日光浴を楽しんでいた。
崖をうまく利用した庭には、大木になったゴムの木、モンステラ、ブーゲンビリア、様々の色の薔薇、紫陽花、ブドウの木などが生い茂っている。
メルローや名前の知らない野鳥が良い声で囀っている。
そんな中をクジャクがのんびりと歩いていて、時たまその姿には不似合いの迫力のある声を発する。
ベランダに座っていると、下からフワリと飛んできてドドドッと迫ってきたので驚いた。
どうやら何か食べ物をくれると期待したらしい。
次の朝、家から用意してきた5リッターの水タンク4個を持って、原水が出ているところまで汲みに行った。
これでたっぷりと使える。
ひと夏はもつことだろう。
MUZ
©2004,Mutsuko Takemoto
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(この文は2004年6月号『ポルトガルのえんとつ』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルのえんとつ』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しずつ移して行こうと思っています。)