ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

177. ユーロ2020は2021年の今、開催されている

2021-07-01 | 風物

セトゥーバル半島内で2021年6月9日撮影の ケンタウリウム・エリサラエア Centaurium erythraea

 

 コロナ禍で1年間延期されていたサッカーユーロ2020大会が毎日TVで放映されている。昨日ポルトガルはベスト8をかけベルギーと対戦した。ベルギーはドイツやフランスに比べて大したことはないだろうと思っていたら、なんとFIFAランキング1位。驚いた!ポルトガルはだいじょうぶかな。ポルトガルが属するチームは強豪ぞろい。ドイツ、フランス、ハンガリー、ポルトガルが入るF組は「死の組み合わせ」と言われている。ポルトガルはハンガリーに辛うじて勝ったが、ドイツには負け、フランスとは引き分けた。そうしてベスト16に生き残った。

 ハンガリー戦の3点のうち2点とフランス戦の2点をクリスティアーノ・ロナウドが得点し、これまで109得点はポルトガル選抜記録だそうで、ポルトガル国民は大いに盛り上がっている。町にはポルトガル国旗が数えきれない程はためいている。

 階下のマダレナ小母さんのところなど北側のベランダに2つと南側にも特大のポルトガル国旗が掲げられてその熱の入れようは計り知れない。マダレナおばさんは出戻りの息子と二人暮らし。てっきり息子が熱心なサッカーファンだろうと思っていたが「あの息子は見るからに偏屈そうやからサッカーなんてばかにしてるで。国旗を掲げたのはきっとマダレナおばさんやで」とビトシは確信的に言い放った。マダレナ小母さんはすごく元気だがもう80近い高齢者だ。いっぽう、息子は40代というところか。階段で出会うことがあるが、いつも暗い顔をしてぼそぼそと挨拶をする。国旗はやはりマダレナ小母さんがかかげたのだろう。何しろ賑やかなことが好きな女性だから。

 ベルギー戦はスペインのセヴィリアで開催された。ポルトガルから3000人の応援団がかけつけたという。セヴィリアはポルトガルから国境を越えてクルマで2時間たらずで到着する。しかし問題なのは気温だ。

 かなり昔の話だが、セヴィリアに旅行に行った。たしか7月だったと思う。なにしろ外は猛暑で影を求めて道を歩いたものだ。ペットボトルの大びんを抱えて、でもすぐに水は空っぽになった。ホテルは中庭がパテオになっていて、2階の部屋は風通しが良く、涼しかった。窓を開けると小さな噴水がある広場が見え、なかなか良い雰囲気だ。良いところに泊ったものだと、気を良くして出かけた。ホテルは下町のサンタ・クルス地区にあり、フラメンコの「ロス・ガリリョス」まで歩いて行ける便利なところ。小さな劇場のような狭い舞台と観客のびっしり詰まった客席。私たちはワインを飲みながら、舞台では若い男女のジプシーが踊り年配の男たちが手拍子をしながら歌うカンテ。素晴らしかった。

 ホテルのベッドでうとうとしていると、なんだか暑い。汗がむわーっと噴き出してくる。ビトシが飛び起きて、廊下にあったホーキとモップを取って来て床の掃除を始めた。「ベッドに熱がこもってて眠れんから床に寝るわ」

 でもタイル張りの床も周りの壁もどこもここも熱を持って、部屋中に熱を発散している。

 ビトシは綺麗に床掃除をして直接床に寝た。胸にぬれタオルを置いたがすぐに乾いた。それでもいつの間にか眠ったらしい。が、突然ガガーンという大音響で驚いて目が覚めた。そして男たちの大きな声がする。喧嘩のようだ。この夜中に一体全体何事か!恐る恐るブラインドを開けて外を見ると、二人の男たちがブリキのごみ箱を乱暴に動かして、広場の掃除をしていた。なんのことはない。男たちは掃除をしながらしゃべっているだけだった。

 翌日もまっぱれ。こりゃたまらん!

 大慌てでバスに乗り、ポルトガルに帰宅。セトゥーバルには涼しい風がふいていた。

 そのセヴィリアでポルトガルとベルギーがサッカーの対戦をするという。セヴィリャの殺人的猛暑を思い出した。あの暑さの中、サッカーの試合が行われるとは、選手は大丈夫だろうか。ポルトガルの選手たちは猛暑に慣れているだろうが、ベルギー選手たちは?

 結果はベルギーが1:0で勝ち、ポルトガルは敗退。

 ドイツはイングランドに負け敗退。フランスもスイスに敗れ敗退。

 「死のチーム」と言われたF組は4チームがすべて敗退して空中分解してしまった。

MUZ  2021/07/01

 

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