ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

163. 3月のセトゥーバル

2020-04-01 | エッセイ

どのチャンネルでも武漢ウィルスの事ばかり。ポルトガルも死者が160人を超えたそうだ。もう随分前から全国で自宅待機の命令が出て、レストランやカフェやホテルなどほとんど閉店している。我が家の前にあるカフェもこのところずっと閉まっているし、斜め前のホテルもいつもなら週末にイベントをやっているのだが、ひっそりと静まり返っている。

そんな時に、ビトシがメガネを失くしたことに気が付いた。それは形状記憶合金でできた眼鏡で、運転中にすぐ取り出せるように胸のポケットに入れていたらしいが、花の写真を撮る時に低いアングルから撮るので、状態を地面に伏せるようにする。その時たぶん落ちたのではないかと思う。

心当たりはないが、最近行った近くの森を探してみようということになった。

セトゥーバルの出口辺りで検問を受けるかもしれないが、その時は「眼鏡を失くしたので探しに行く」と言えば良いし、それでも「ダメ」と言われれば諦めて引き返すしかない。クルマは普段の10分の一程しかない。道はガラガラに空いている。検問なども気配すらしない。

森の入口にあるカフェにも人影は見当たらず、森の中も誰もいない。爽やかな風が吹き、しんと静まり返った森の中は様々な野の花が咲き誇っていた。

先日歩いた場所を点検しながら探した。意外なところにポンと落ちているかもしれない。以前にも別の森でサングラスを落とした。気が付いてあちこちさがしたら、低木の上に載っているのが見つかった。キノコ観察の時に、キノコに着いた砂を払い落とすのに使う筆をどこかに置き忘れたのに気が付いて、歩いたルートを記憶をたどって戻ってみると、ちゃんと発見した。他の人がいないから失くした物も発見できる。ところがその後、クルマのトランクに入れていた七つ道具の入ったバッグを盗まれた。自宅の前の駐車スペースに停めていたのだが。だいぶ経ってから、近くのゴミ収集場所に見覚えのあるバッグが捨てられていた。それは間違いなく盗まれたバッグだったが、なかに入れていた七つ道具はすべて無くなっていた。

 

森の中は誰もいないし、クルマも通らない。近くの葡萄畑には葡萄の新葉よりも一足先にアルクトテカ・カレンドュラ  Arctotheca calendula がびっしりと咲いている。

 

アルクトテカ・カレンドュラ  Arctotheca calendula

 

コルク樫の森にはラベンダーがびっしりと咲き誇っている。まるで栽培している様な規模だ。3月はいつも日本に帰国しているので、この森でこんなにたくさんのラベンダーが咲いている状態は初めて見た。

 

 

 

大株のラベンダー

 

草丈10cmほどのアキス・トリコフェラ Acis trichophylla

 

この辺りで眼鏡を落としたのではないかと重点的に探したがなかった。

 

近くの牧場に咲くケンタウレア・プラタ Centaurea pullata

 

ヒアキントイデス・ヒスパニカ  Hyacinthoidesu hispanica

 

国道脇に群生する野性蘭オルキス・イタリカ Orchis italica

 

昆虫に擬態した鏡蘭、オフリス・スペクルム Ophrys speculum

 

森に行ってからその後ずっと家に引き籠り。TVではニュースキャスターはもちろんだが、局のカメラマンをはじめ、名前も知らない様々なスタッフとかが口々に「フッカエンカザ」(家に居なさい)と言っている。昨日は近所の露地を消毒液を積んだトラクターが噴霧していた。ここまでするか!大変な事態になってきた!

©2020 MUZVIT 写真は何れも2020年3月4日から26日までの間にセトゥーバル半島内で撮影。

 

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