ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

K.045. 乳鉢と乳棒 Almofariz e Mão de almofariz

2018-11-17 | 飾り棚

高さ 15.7cm


  ポルトガル料理には欠かせない台所道具。
  木工製のすり鉢。
  何の木で作ってあるのか分らないが、手に持つとすごく軽い。
  香辛料やニンニクそれにトマトなどもこの器で潰してしまう。
  おおまかに潰して鍋の中に放り込む。
  ポルトガル料理はどこで食べても旨い。
  それは大量に作るからだと思う。
  大量に作って大勢で食卓を囲んで喋るだけ喋って大量に飲んで大いに食べて食事時間を楽しむ。
  そして太るだけ太る…。MUZ

©2018 MUZVIT


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031. 塩田地帯に大出現

2018-11-17 | エッセイ

 ポルトガルではここ数年の間に巨大なショッピングモールが全国各地にできている。
 1998年のリスボン万博の時は それまで殺伐な工場地帯跡地だった所が万博会場として開発されて、敷地の入口に大型スーパーと有名ブランドのブティック街が同時にできた。
 万博が終った後は、テージョ川に面した公園と、パビリオンをそのまま利用した文化施設と、新しく建設されたマンション群と商業施設との組合せで、リスボンの新しい繁華街になって賑っている。
 鉄道と地下鉄とバスターミナルも乗り入れているから、とても便利だ。
 再開発の成功例である。

 万博の時に、リスボンとセトゥーバル半島を結ぶ長い橋もできた。
 テージョ川をまたぐ全長17キロメートルもある橋で、ヴァスコ・ダ・ガマという名前が付けられている。
 ヴァスコ・ダ・ガマは、アフリカの喜望峰を回るインド航路を発見した、ポルトガルの偉人である。

 橋を渡り終わるあたりの両側には広大な塩田があり、遠くにフラミンゴの姿が見える。
 テージョ川の中洲が自然保護地帯で、いろいろな鳥やフラミンゴの生息地になっているので、そこから飛んできて塩田に住むミジンコみたいな餌を食べている。
 橋が開通して間もないころは、橋のすぐ傍の塩田でピンクや白のフラミンゴをたくさん見かけたものだが、交通量が激増したせいで遠くに避難してしまった。
 橋ができたせいで塩田はもう放置されたものかと思っていたが、時々水を抜いて部分的に干上がった塩田もあるから、今でも細々と塩を作っているようだ。
 塩田は上流に行くほどたくさん見かける。
 都会のど真ん中にフラミンゴが生息し、天然の塩を採取する塩田があるというのはとても驚きだ。
 でもいつまでこの環境を保てるのか、心配だ。
 その心配がだんだん現実になっている。

 このごろ「フリーポート」という巨大ショッピングモールが橋のこちら側にできているそうだ。
 ブランド品のアウトレットを売るブティックが集っているらしい。
 その日はちょうどリスボンに出かけたので、いったいどんなものか?と、帰る途中に行ってみた。

 橋のたもとの町からだいぶ離れた所に異様な形の巨大な物が突然出現した。
 テージョ川のほとりにある、かなりの範囲の塩田を埋め立てて、広大な駐車場があり、その中央にまるでテーマパークのような街ができている。
 本物の木や石を使って、店の一軒一軒のデザインが凝っている。
 でも街の周りは塩田と畑と草っ原だけで、何もない。まったくの人工の街だ。
 平日のせいか、人工の街も人通りは少なく、店も半分近くは閉まっていた。
 巨大な映画館では21ものスクリーンがあるそうだ。

 レストラン街はドイツやイタリアやスペイン、ブラジルなどの異国の味で売り出している。
 もちろんポルトガルや中華の店もある。そして「レストランジャポネズ」と看板の出た店があった。でも「日本レストラン」としては何だか怪しげである。ガラス張りなので店の中が見える。
 U字型のテーブルはベルトコンベア式になっていて、くるくる回っている。「ホホ~、くるくる寿司だぞ~」私は一気に嬉しくなった!
 リスボンにくるくる寿司があるとは今まで聞いたことがない。
 この店はリスボンで初めての、いやポルトガルで初めてのクルクル寿司屋ではないだろうか?
 入口にはメニューの紙が一枚貼ってある。「なになに?8,5ユーロ、飲物別」
 日本でなら、「一皿がいくら」の方式だが、この店は料金が決まっているらしい。ということは、食べ放題なのだろうか?その店に入る気持がぐっと高まった。

 でもちょっと待って!
 くるくる回る台の上にはほとんど何ものっていない。たまに流れている小皿にはモヤシがちょっとのっているだけ。
 女性客が一人だけで、味噌汁を飲んでいる。
 味噌汁は海外の日本レストランでは「ミソスープ」と称して、食事の最初に出てくる。欧米流のスープのあつかいと同じである。
 でも味噌汁だけを単独で飲むのはなんだか変だ!といつも思う。
 スープはパンといっしょに食べる。「ミソスープ」もご飯といっしょに食べるのがいちばん美味しい。

 近頃は世界的な日本食ブームということで、日本食を売り物にするレストランがどんどんできている。
 パリではリュクサンブール界隈の中華レストランが、いつのまにかいっせいに「握り寿司と焼き鳥」の日本食レストランに化けてしまった。
 行きつけだった安くて美味しい中華レストランも日本食レストランになっていた。
 経営者も従業員も中国人で、そこで出される寿司や焼き鳥もたぶん中国かタイで作ったものではないだろうか。どの店も同じものを出している。店先に張られたメニューまで同じ。なんだか怪しい現象である。

 ところでこの店は…。
 あっ、回ってきた!
 あれはカッパ巻きか、鉄火巻きかな?
 近づいてきた皿の上にはたった一切れの鉄火巻きがどうどうとのっているのです。
 こ、困ったな~。入るべきか、止めとくべきか?
MUZ
2005/04/01

 

 

©2005,Mutsuko Takemoto
本ホームページ内に掲載の記事・画像・アニメ・イラスト・写真などは全てオリジナル作品です。一切の無断転載はご遠慮下さい。

 

(この文は2005年4月号『ポルトガルのえんとつ』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルのえんとつ』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)

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