JTDの小窓

川崎市幸区下平間の鍼灸・手技療法『潤天堂』院長のあれこれなつぶやき

深谷灸法の遠隔取穴

2016-01-30 | 臨床・治療
深谷灸法とは、昭和の名灸師 深谷伊三郎先生が古典や名著と呼ばれる医籍や先賢の諸説を臨床にあてはめてその効を確認し築かれた灸治療法。
深谷灸法には「基本十項」というものがあり、全部の紹介は次回以降に譲るが「そこが悪いからとそこへすえても効果はない」という項がある。


「灸穴というものは、上部の病気には下部の穴を用い、下部の病気には上部の穴を使うと治効が現れるという妙味がある。これは経絡現象を認める場合に、経絡の妙味がそこだと言わざるを得ない。そして病んでいるところから隔ったところ、遠く離れているところに病気や異和の反応が現れている。その部位を捉えて施灸すると奇効を奏するものである」

「(疾病は)遠隔部の体表のどこかへか過敏な圧痛や硬結となって現れる。治療を施すときは、そこを捉えそこを探し求めてそこへ治術を施すとそこから悪いところへ流れ込むように飛び込んでいくように響いて苦痛が軽減したり、異常感がなくなってくるものだ。治療の要点は、そういうところを捉えることにあるといわなければならない」

※入江靖二先生編書「図説深谷灸法~臨床の真髄と新技術~(緑書房)」のP18『遠隔取穴』より引用

わかりやすい例でいうと、腱鞘炎や弾発指などに対し肩甲間部に圧痛を求めている(肺兪や心兪、膈兪などに多壮灸)。


まさにTP(トリガーポイント)や筋・筋膜網(アナトミートレイン)を掴んだ効果を出すときと似ているように思える。
鍼でTPにアプローチするときは目的部まで針先を届けるわけだが、灸のような体表への熱刺激(熱痛刺激)でも同じ効果を出せていることになる。患部自体に直接届かなくても、熱痛刺激により刺激された体表受容器が、何らかの機序により目的深部まで刺激が届き治癒機転に結びついていると思われる。仮説の域だが考えると面白い。深谷灸で用いられる症状と経穴を検証していきたい。

ちなみに鍼灸学生のとき、入江靖二先生に「深谷灸法で用いる灸熱緩和器を使ったすえ方」を体感したくて浅草の治療院に伺ったことがありました。そのときおみやげにと灸熱緩和器(竹筒)をいっぱいくださいました。自分でも作っていたのですが、白衣の胸ポケットにしまえるようにと勝手にコンパクトサイズに作っていたので、我流をだしてはいかんなと反省したことを覚えています。













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