ハリーと楽しむアジリティー

ミニチュア・プードル ハリーとアジリティーを楽んだ日々の想い出

セメントと野鳥

2017-02-24 22:02:04 | 日記

 先般、理学博士 新名俊夫先生のお話しを聴かせていただく機会がありました。

 

 先生は、日米炉材という耐火物製造会社の研究員(応用的な研究)を永年勤めて定年で退職された後、余生を楽しむため広島大学の大学院で基礎的な研究をされた。ストラトリンジャイト(Stratlingite)(アルミナセメント)の研究をして、博士の学位をゲットされた方です。

 先生のお話は、目から鱗でした。

 普通のセメント(ポルトランドセメント)は、CaO・SiO2+nH2O → C-S-H

 すなわち、石灰と石英の水和物です。

 ところが、ストラトリンジャイトは、CaO・Al2O3+nH2O → C-A-H

 すなわち、石灰とアルミナの水和物なんです。石英をアルミナに置換するだけかな。

(日米炉材時代の耐火物(縦のパイプの部分)の応用的な研究)

 

 このことは、すでに外国の偉い先生が発見されてましたが、その論文通りに中々できない。新名先生は広島大学で来る日も来る日も条件を変えて実験を重ねては、電子顕微鏡を覗く毎日で、地味な作業の繰り返し。でも、ある日、ついに僅かですがストラトリンジャイトの結晶を作ることに成功した。そして、それを論文にしました。

(ストラトリンジャイトの結晶)

 ん…、そんなの何の役に立つの。先生曰く「何の役にも立ちません」とのことです。政治家の事業仕訳の影響で、役に立たない基礎研究は切り捨てられる風潮が蔓延している。すぐに役に立つ研究は、企業の研究所でもできる。役に立たない真理の探究こそは大学でないとできないというのに。ついに、先生も大学を追われることになっていたそうです。

 そんな時、某フランスの大企業が先生の論文をヒットして、「いくらでもお金を出すので研究を続けてほしい」と言い出した。そして

先生は、沢山お金を出してもらって精密な機材が大学に入り、研究を継続することが出来たそうです。

 ストラトリンジャイトとは、何なの。実は古代ローマのある遺跡、何度も大地震に見舞われながら今も健在です。この遺跡に使われていたのがストラトリンジャイトだったんです。

(セメントプラント)

 

 ストラトリンジャイトは、驚くほど強靭で、耐熱性があり、放射線による劣化にも耐える。建造物に使えば凄い頑健な建物ができる材料です。原子炉外壁に使えば、大幅に劣化した廃棄物=放射性廃棄物を減らせるそうです。

 それで、フランス企業がいくらでも研究費を出してくれたんですね。先生の研究は真理探究だけの基礎研究だけど、それを元に応用研究を進めて、実用化されるなら、とても人間生活に役立つ。

フランスがお金を出してくれた おかげで、先生は多くの論文を書いて、高齢ながら博士号をゲットできて、一躍その道で名をなすことができた。でも新名先生曰く、私の研究は「何の役にもたたない」とのことだそうです。役に立たない真理の探究をするのが永年の夢で、退職後それを叶えた。

 でも、それって凄いと思いました。

 私、この週末の2月26日に愛犬ハリーとともに、犬のスポーツ アジリティー競技会参戦のため、美祢ICで下りて中国山地を越えて宇賀に行きます。

 宇部興産などの工場のある石灰岩地帯を車で駆け抜けますが、石灰岩と粘土ではなく、石灰岩とアルミナの水和物(ストラトリンジャイト)が簡単に出来たら、世の中どうなるか、思いを馳せながら遠征の旅を楽しみたい。今までこの道を走るとき、漠然と石灰岩を眺めて走っていたが、ストラトリンジャイトに思いをはせながら行けます。

 そんなに頑健なコンクリートができたら、便利だろうな。でも、不要になったとき壊すには困るかな。ローマでは、偶然にストラトリンジャイトができたのかな。その土地の火山灰か何かが影響したのかな。

 先生は、今ではその基礎研究からも離れて、野鳥の観察に没頭しているそうです。

 ハタニシ企画印刷㈱のHPに「野鳥観察の楽しみ」があります。これは,毎月掲載中です。