直虎「ここのところのことで思うたのですが、表の世でうまくいかぬ者は必ず出続けましょう。さような者たちを逃がしたり、生き直す場を与えたり、世に戻るための洞穴(ほらあな)のような役目を果たすところがいるのではないかと。そのためにも、ここにはもはや、世捨て人がおるだけ、ただの一つの寺があるだけとしたほうが、動きやすいのではないかと」
直虎「(前略)ただもう、井伊の者はここにはほとんどおりませぬし、この際寺田家残し、井伊谷井伊家はさっぱりたたんでしまおうかと」
近藤「よいのかそれで!? 先祖代々の地であろう!?」
直虎「井伊の家の者である証… それは、それぞれの身の内にあると。それでよいと思うのです」
近藤「で、そなたは隠居なさるのか?」
直虎「私はここから徳川に天下を取らせたいと思います(後略)」
直政「碁石?」
和尚「井伊の魂じゃ。何じゃと思うそれは?」
直政「井伊が井戸端の拾い子が作った国。故にか、殿はよそ者に温かかったです」
和尚「うむ。それから?」
直政「民には竜宮小僧のようにあれかしとし、泥にまみれることもいとわず、恐れず、戦わずして生きて行ける道を探る…」
和尚「殿は、小さな谷でそれをやった。そなたはそれを、この日の本を舞台にやるのじゃ! 頼んだぞ」
直政「井伊万千代、皆様に一生のお願いがございます。どうか私に、北条との和睦の使者をお任せくださいませ!」
酒井忠次「和睦は相手あってのもの。若造をよこしたと怒らせては元も子もない!」
直政「恐れながら! 若造であるが故のよさもございますかと。徳川の下に入れば、たとえ敵でも若造でもつぶれた家の子でも悪いようにはされぬ、それどころか、使者を任されるほどに重きに扱ってもらえるかもしれぬ、何故というならば、目の前に左様な若造がおるからじゃ、そう思うていただけるのではないでしょうか?」
直虎「(前略)ただもう、井伊の者はここにはほとんどおりませぬし、この際寺田家残し、井伊谷井伊家はさっぱりたたんでしまおうかと」
近藤「よいのかそれで!? 先祖代々の地であろう!?」
直虎「井伊の家の者である証… それは、それぞれの身の内にあると。それでよいと思うのです」
近藤「で、そなたは隠居なさるのか?」
直虎「私はここから徳川に天下を取らせたいと思います(後略)」
直政「碁石?」
和尚「井伊の魂じゃ。何じゃと思うそれは?」
直政「井伊が井戸端の拾い子が作った国。故にか、殿はよそ者に温かかったです」
和尚「うむ。それから?」
直政「民には竜宮小僧のようにあれかしとし、泥にまみれることもいとわず、恐れず、戦わずして生きて行ける道を探る…」
和尚「殿は、小さな谷でそれをやった。そなたはそれを、この日の本を舞台にやるのじゃ! 頼んだぞ」
直政「井伊万千代、皆様に一生のお願いがございます。どうか私に、北条との和睦の使者をお任せくださいませ!」
酒井忠次「和睦は相手あってのもの。若造をよこしたと怒らせては元も子もない!」
直政「恐れながら! 若造であるが故のよさもございますかと。徳川の下に入れば、たとえ敵でも若造でもつぶれた家の子でも悪いようにはされぬ、それどころか、使者を任されるほどに重きに扱ってもらえるかもしれぬ、何故というならば、目の前に左様な若造がおるからじゃ、そう思うていただけるのではないでしょうか?」