西郷「一蔵どん、おいはここに来るまで何も知らんかった。藩には途方もなか金があるもんじゃのう、ち思っちょったのう。そん金の多くは、この島から搾り取ったもんじゃった。そんためにこいほど島の人たちを苦しめちょったとは! じゃっどん、みんなよう笑っちょう。歌も踊りもほんのこて美しか。憎かはずのおいにまで優しか。砂糖や作物は薩摩に全部召し上げられるが、海には魚がおる。山にはイノシシがおる。腹が減ったらいつでん釣りや狩りをして、そん命をいただく。おいはここで生きる力をもろうた。人の愛っちゅうもんを教えてもろうたとじゃ。おいにとってここは極楽じゃ」
薩摩ではのう、幼か頃より「じっしんこうのいろは唄」ちゅうもんを教えられる。そん唄の中にこうある。「楼の上もはにふの小屋も住む人の心にこそは高きいやしき」
わかるか? 住む家の立派さや身分でそん人の値打ちは決まらん。心のあり方によって、人間の高い低いが決まるっちゅう教えじゃ。やんちゅの子も役人の子も、こん屋根の下では皆同じじゃ。おはんらはのう、皆国の宝じゃ!
わかるか? 住む家の立派さや身分でそん人の値打ちは決まらん。心のあり方によって、人間の高い低いが決まるっちゅう教えじゃ。やんちゅの子も役人の子も、こん屋根の下では皆同じじゃ。おはんらはのう、皆国の宝じゃ!