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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ブッカー・アーヴィン/クッキン

2024-07-18 19:33:59 | ジャズ(ハードバップ)

本日は個性派テナー奏者、ブッカー・アーヴィンをご紹介します。ジャンル的には広い意味ではハードバップの括りに入るのでしょうが、その中でもクセ強めでやや本流から外れた存在です。出身は南部テキサス出身で若い頃はR&Bバンドでプレイしていたようです。その後、1959年にチャールズ・ミンガスのバンドに加入し、「ミンガス・アー・アム」「ブルース&ルーツ」に参加。個性の塊と言って良いミンガスの影響も大いに受けます。そのあたりの経歴が独特のスタイルを生み出したのでしょうね。60年代にプレスティッジやブルーノートにそこそこの数のリーダー作を残していますが、正直あまりとっつきやすいとは言えません。私も60年代中盤から後半にかけての作品(「ザ・ブルース・ブック」「ヘヴィー!」等)を何枚か買ったものの、それらは中古屋に売り払ってしまいました・・・

今日ご紹介する「クッキン」は1960年11月にサヴォイ・レコードに吹き込まれた作品で、アーヴィンにとって2枚目のリーダー作です。若干クセはあるものの、アーヴィンの作品群の中では比較的聴きやすい方ではないかと思います。クインテット編成で、参加メンバーはリチャード・ウィリアムズ(トランペット)、ホレス・パーラン(ピアノ)、ジョージ・タッカー(ベース)、ダニー・リッチモンド(ドラム)です。ウィリアムズ、パーラン、リッチモンドの3人はミンガスのバンドの同僚で、ジョージ・タッカーはパーランの例のアス・スリー・トリオの一員ですね。

全6曲、うち2曲がスタンダードで、残りは全てアーヴィンのオリジナルです。1曲目"Dee Da Doo"はシンプルなリフの繰り返しによるブルースですが、アーヴィンのテナーソロがたまらなく良いですね。続くウィリアムズのトランペットはやや乾いた感じの音色です。その後タッカーのベース→パーランとソロをリレーします。2曲目”Mr. Wiggles"は必殺のファンキーチューンで、アーヴィンのノリノリのソロにウィリアムズがかぶせてくるところが最高です。続いてパーランが彼にしか表現できない独特の音階のピアノソロを披露します。3曲目は一転してスタンダードのバラード曲”You Don't Know What Love Is”。ソニー・ロリンズが「サキソフォン・コロッサス」で、コルトレーンが「バラード」でそれぞれ取り上げており、テナー奏者にとって腕の見せ所となる曲ですが、ここでのアーヴィンは奇をてらうことなく意外と正統派のプレイで静かに燃え上がるようなソロを聴かせます。

4曲目”Down In The Dumps"は再びファンキーチューンですが、取り立てて特筆すべきところはないです。5曲目"Well, Well"はまさに糸を引くようなという表現がぴったりのスローブルース。パーランが同じフレーズをしつこいぐらい繰り返しながら徐々に盛り上げていき、アーヴィンのこってりしたテナーソロへと繋ぎます。ラストトラックは有名なシャンソン曲”Autumn Leaves”。ジャズではかの名盤「サムシン・エルス」でのマイルス・デイヴィスの演奏が有名ですが、リチャード・ウィリアムズがそれを意識したのかミュート・トランペットでソロを吹きます。続くアーヴィンのソロはいかにもな感じのクセ強めの演奏です。以上、万人受けするとは言い難い作品ですが、ブッカー・アーヴィンの独特の世界を知るには入門編として最適の1枚です。

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