goo blog サービス終了のお知らせ 

ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

リチャード・ホームズ/グルーヴ

2025-08-05 18:04:41 | ジャズ(ソウルジャズ)

1950年代にチェット・ベイカー、ジェリー・マリガン、バド・シャンクらを擁し、ウェストコースト・ジャズを強力に推進したパシフィック・ジャズですが、60年代になると新たな路線を模索し始めます。これまで白人ジャズマンが中心だった同レーベルですが、一転して黒人ジャズマン達を前面に出して行くようになります。その中にはテディ・エドワーズのようなビバップ期から活躍するベテランもいましたが、どちらかと言うと新人の発掘に力を入れ、ピアノのレス・マッキャン、テナーのカーティス・エイミー、トランペットのカーメル・ジョーンズ、そしてクインテットのジャズ・クルセイダーズらを続々とデビューさせます。

今日ご紹介するリチャード・ホームズもその1人。出身は東部ニュージャージー州でピッツバーグのクラブで演奏していたところを、ツアー中のレス・マッキャンに発見され、彼の後押しもあってパシフィック・ジャズでのレコードデビューに漕ぎ付けます。なので、ジャケットにはレス・マッキャン・プレゼンツとマッキャンの名前も記載されています。ちなみにタイトルの”グルーヴ”はその後彼のニックネームとなり、60年代後半にプレスティッジ移籍後はリチャード・グルーヴ・ホームズの名で活動しています。

録音年月日は1961年3月。メンバーはベン・ウェブスター(テナー)、ローレンス・”トリッキー”・ロフトン(トロンボーン)、ジョージ・フリーマン(ギター)、マッキャン(ピアノ)、ロン・ジェファーソン(ドラム)。全員が当時西海岸でプレイしていた黒人です。中でも注目はテナーの重鎮ベン・ウェブスターですよね。30~40年代にエリントン楽団のスター奏者として活躍し、50年代もヴァーヴを中心に多くのリーダー作を残した大御所的存在です。この時52歳で、50年代後半から一時的に西海岸で活動していました(「アット・ザ・ルネッサンス」参照)

オープニングトラックは”Them That Got”。レイ・チャールズの曲らしいですが、正直あまりヒットしなかった曲なので、私も知りませんでした。のっけからレス・マッキャンがソウルフルなピアノソロを聴かせますが、そもそもオルガン奏者のリーダー作に同じ鍵盤楽器のピアノが入っていること自体が珍しいですよね。解説書によるとこのセッションはもともとマッキャンのリーダー作を録音しようとしていたらしく、そこにゲストとして呼んだホームズ、ウェブスター、ロフトンらのプレイを聴いて、もう1枚アルバムを別に作ることにしたのだとか。なので、リーダーのはずのホームズの存在感は意外と控えめ。一応、マッキャンの後にオルガンソロを聴かせますが、それもその後のベン・ウェブスターの貫録たっぷりのテナーの前に霞んでしまいます。その後もウェブスターは全編にわたって絶好調で、本作の事実上の主役と言っても過言ではないでしょう。続く"That Healin' Feelin'"もマッキャン作曲のファンキー・チューン。ここからはギターとトロンボーンも加わり、フリーマンのギター→ウェブスター→ロフトンのトロンボーン→ホームズ→マッキャンとソロをリレーします。3曲目”Seven Come Eleven”はチャーリー・クリスチャンがベニー・グッドマン楽団在籍時に作った曲。ギタリストの曲なのにギターソロはなく、ウェブスター→ロフトン→ホームズがソロを取ります。

4曲目”Deep Purple”は本作中唯一の歌モノスタンダード。伝説的ハードロック・バンド、ディープ・パープルの元ネタになった曲(過去ブログ参照)で、多くの歌手やジャズマンにカバーされた名曲ですが、ここでの演奏も間違いなく名演の一つに数えられるでしょう。まず、ウェブスターが円熟を極めたテナーソロを披露し、その後はマッキャン→ロフトン→ホームズとソロをつないで再びウェブスターが締めます。やっぱり彼のテナーが主役ですね。最後の”Good Groove”は唯一のホームズの自作曲。まずホームズとウェブスターがソロの掛け合いをし、その後はウェブスター→ホームズ→フリーマン→ロフトンとソロをリレーして締めくくります。以上、50年代のパシフィック・ジャズからは想像もできないような黒々としたソウルジャズですが、これはこれでおススメです!

コメント

ルー・ドナルドソン/ザ・ナチュラル・ソウル

2025-07-16 18:11:21 | ジャズ(ソウルジャズ)

1960年代に入ってハードバップが下火になってくると、ブルーノートのジャズマン達はさまざまなスタイルを模索し始めます。そのうち大きな柱となったのはモード~新主流派路線ですが、一方でR&B色の強いソウルジャズ路線に舵を切ったグループもいます。その代表格がルー・ドナルドソン。50年代はチャーリー・パーカー直系のアルト奏者として活躍した彼ですが、おそらくモードジャズが生理的に合わなかったのでしょうね。1961年の「ヒア・ティス」を皮切りにオルガン奏者を起用したコテコテのソウルジャズ路線を一気に推し進めます。

今日ご紹介する「ナチュラル・ソウル」は1962年5月録音の作品。ここでドナルドソンが起用したのがオルガン奏者のジョン・パットン。ニックネームを付けて”ビッグ・ジョン・パットン”と呼ばれることが多いですね。この後売れっ子となり、60年代だけでブルーノートから9枚のリーダー作を残しますが、デビュー作はこの作品です。他にトランペットにトミー・タレンタイン。言わずとしれたスタンリー・タレンタインのお兄ちゃんですね。弟に比べると地味ですがサイドマンとしてはブルーノート作品にちょくちょく顔を出しています。ギターは「ヒア・ティス」でドナルドソンが抜擢したグラント・グリーン。ドラムにベン・ディクソンと言う布陣です。

ボーナストラック1曲含めて全7曲。オリジナル4曲、スタンダード3曲です。オープニングはジョン・パットン作の”Funky Mama"。タイトル通りのファンキーなソウルジャズで、グリーンのソウルフルなギターにホーン陣が絡み、トミー・タレンタイン→ドナルドソン→パットンとソロをリレーします。いきなりコテコテの演奏ですね。ただ、それだけでは従来のファンが離れると思ったのか、続く”Love Walked In”はジョージ・ガーシュウィンのスタンダードで、ドナルドソンがお馴染みのメロディを歌心たっぷりに奏でます。ただ、その後はアーシーなソウルジャズでパットン→トミー→グリーン→ドナルドソンのソロと続きます。3曲目と4曲目はドナルドソン自作の”Spaceman Twist"と"Sow Belly Blues"。前者はそのままダンスフロアでかかりそうなドファンキーなジャズ、後者もブルースと銘打っていますが結構アップテンポな曲です。個人的には前者の”Spaceman Twist”がなかなか楽しい感じで良いと思います。ソロはどちらもドナルドソン→トミー→グリーン→パットンの順です。

5曲目"That's All"は再びスタンダード曲で本作中唯一のバラード。パットンのムーディなオルガンをバックにまずドナルドソンがメロディを吹き、トミー→グリーンのソロが続きます。6曲目”Nice 'N' Greasy"はピアニストのジョニー・エイシアの曲。本作には参加していませんが、グラント・グリーン「ザ・ラテン・ビット」でピアノを弾いていました。フランク・シナトラのヒット曲"Nice ’N' Easy”をもじったタイトルで、greasy=脂っこいとある通りコテコテのソウルジャズです。ラストはボーナストラックの"People Say We're In Love"。LP未収録ですが、この曲がなぜお蔵入りになったのかわからないぐらい魅力的な演奏で、ロジャース&ハマースタインのミュージカルナンバーを軽快かつソウルフルに演奏します。以上、日本のジャズファンの間ではとかく軽視されがちなルー・ドナルドソンのソウルジャズ作品ですが、私は楽しくて良いと思います!

コメント

ジョニー・ハモンド・スミス/ア・リトル・テイスト

2025-06-30 18:11:30 | ジャズ(ソウルジャズ)

1950年代半ば、ジミー・スミスの登場を機にまるで堰を切ったかのように多くのオルガン奏者がジャズシーンに登場しました。ブルーノートからはジョン・パットン、ベビーフェイス・ウィレット、フレディ・ローチらが続々とデビューし、ライバルのプレスティッジも負けじとジャック・マクダフ、女流のシャーリー・スコットらを売り出します。今日ご紹介するジョニー・"ハモンド"・スミスも彼らと並んでプレスティッジがプッシュしたオルガン奏者の1人。1959年の「オール・ソウル」を皮切りに70年代初めまでに20枚近いリーダー作を同レーベルから発表します。本名はジョン・ロバート・スミス。ニックネームの"ハモンド"はジャズに使われるハモンドB3というオルガンの種類から付けられたものです。ジョニー・スミスだけだと、同じ名前の白人ギタリストがいますし、そもそもオルガンの偉大な先輩ジミー・スミスと似ていて紛らわしいので区別するためにつけられたもでしょう。

さて、本作「ア・リトル・テイスト」は1963年の作品。実はこのアルバム、プレスティッジではなくリヴァーサイド・レコードに吹き込まれたものです。細かい事情はよく知りませんが、1962年から翌63年までスミスは一時的にプレスティッジを離れ、リヴァーサイドから4枚のリーダー作を発表しています。2管編成のカルテットでリーダーのスミス以外のメンバーはヴァージル・ジョーンズ(トランペット)、ヒューストン・パーソン(テナー)、ルイス・テイラー(ドラム)と言う顔ぶれです。

全7曲、いわゆる歌モノスタンダードはなく、スミスの自作曲が5曲、他のジャズマンの曲が2曲です。その2曲とはホレス・シルヴァーの”Nica’s Dream"とキャノンボール・アダレイの”A Little Taste”です。前者はジャズ・メッセンジャーズの「ニカズ・ドリーム」及び「ホレス・スコープ」で演奏されたシルヴァーの代表曲、後者はキャノンボール・アダレイのテーマ曲と言ってもいいような曲で「プレゼンティング・キャノンボール」「ポートレイト・オヴ・キャノンボール」で演奏されています。オルガンジャズと言えば必ずと言ってよいほどギターが加わり、オルガンとギターによる粘っこい絡みが付きものだったりしますが、本作にはギターはおらず、ヴァージル・ジョーンズのトランペットとヒューストン・パーソンのテナーを大きくフィーチャーしたハードバップ色の強い演奏です。ヴァージル・ジョーンズはあまり他では聞かない名前ですがけれんみのないブリリアントなトランペットを響かせています。ヒューストン・パーソンの方はプレスティッジのソウルジャズ系セッションではお馴染みですが、ブリブリと吹く力強いテナーが持ち味ですね。

リーダーのジョニー・ハモンド・スミスはもちろん全曲でしっかりオルガンソロを取るものの、ジミー・スミスのような圧倒的な存在感はなく、どちらかと言うと作曲者として貢献しています。"Bennie's Diggin'"は"Nica's Dream"に似た感じのオリジナルで、プレスティッジ盤「トーク・ザット・トーク」でも演奏された曲。"Brake Through"はグルーブ感満点のファンキーチューンで、特にヒューストン・パーソンのノリノリのテナーが最高です。"Eloise"は一転してロマンチックなバラードでスミスの意外なメロディメーカーぶりが発揮された曲。"Twixt The Sheets"は本作でも一番ソウルジャズ色の強い曲でスミスとヒューストン・パーソンがドファンキーな掛け合いを見せます。以上、リーダーのスミスのハモンドオルガンの響きより、むしろヴァージル・ジョーンズとヒューストン・パーソンの2管のプレイが印象に残る1枚です。

コメント

ルー・ドナルドソン/ヒア・ティス

2025-06-26 18:00:09 | ジャズ(ソウルジャズ)

本日はルー・ドナルドソンです。ドナルドソンについては当ブログでもたびたび取り上げていますが、50年代はチャーリー・パーカー直系のアルト奏者としてブルーノートを中心に多くのハードバップ名盤を残しています。特に「ウィリング・ウィズ・ルー」「スイング・アンド・ソウル」あたりが最高ですね。ただ、60年代に入ってハードバップが下火になると、新たな路線への転換を余儀なくされます。この頃のジャズシーンはマイルス、コルトレーン、ジャズ・メッセンジャーズらがモードジャズ路線で次々と意欲的な作品を発表していましたが、ドナルドソンはモードジャズが根本的に合わなかったか、そちらの路線には見向きもせず、より黒人らしいソウルフルなジャズを追求していくようになります。

今日ご紹介する1961年1月23日録音の「ヒア・ティス」はそんなドナルドソンの”ソウルジャズ宣言”とでも呼ぶべき作品です。それまでのドナルドソンは盲目のピアニストとして知られるハーマン・フォスターと組むことが多かったですが、本作で初めてオルガン奏者をサイドマンに起用。以降はギターとドラムを加えたオルガン・トリオをバックに従えた作品を次々と発表して行きます。メンバーはベビーフェイス・ウィレット(オルガン)、グラント・グリーン(ギター)、デイヴ・ベイリー(ドラム)。ベビーフェイス・ウィレットについては以前のブログでも紹介しましたが、シカゴでプレイしていたオルガン奏者でこれが録音デビュー。後にブルーノートの看板スターとなるグラント・グリーンもジミー・フォレストのデルマーク盤「オール・ザ・ジン・イズ・ゴーン」で既にデビューは果たしていますが、ブルーノートではこれが初録音です。なお、この5日後の1月28日にグリーンは初リーダー作「グランツ・ファースト・スタンド」を、さらにその2日後の1月30日にはベビーフェイス・ウィレットも「フェイス・トゥ・フェイス」を吹き込んでいます(ちなみにグリーンの作品にはウィレット、ウィレットの作品にはグリーンがそれぞれサイドマンとして参加)。ちなみにジャケットでドナルドソン(右側)がお札(?)のようなものを渡しているのは、グリーンでもウィレットでもベイリーでもありません。このおっちゃん一体誰なんでしょうか?

全5曲。スタンダードが1曲、パーカーの曲が1曲、残りはドナルドソンのオリジナルです。普段はオリジナル曲の方を好む私ですが、本作に関してはカバー曲の方が断然良いですね。特に素晴らしいのがオープニングトラックの"A Foggy Day"。ガーシュウィン作曲の定番スタンダードで、ヴォーカルorインストゥルメンタルを問わず多くの名唱・名演が残されていますが、ソウルジャズで料理された本作のバージョンも歴代でも上位にランクされる出来だと思います。まず、オルガンとアルトでメロディを吹いた後、ソロ1番手で飛び出すのがグラント・グリーン。この後彼のトレードマークとなるホーンライクなギターソロを聴かせます。続くベビーフェイス・ウィレットもゴスペルやR&Bで鍛えたソウルフルなオルガンを響かせ、満を持してドナルドソンが歌心たっぷりのアルトで歌い上げます。3曲目チャーリー・パーカーの”Cool Blues”では、かつてパーカーの後継者と目されたドナルドソンが面目躍如と言ったソロを披露しますが、続くグラント・グリーン→ベビーフェイス・ウィレットのソロはソウルジャズそのものです。

一方、オリジナル曲の方は2曲目のタイトルトラック”Here 'Tis”がまずまずの出来。曲はコテコテのブルースで、特にウィレットの糸を引くような粘っこいオルガンソロが印象的です。4曲目”Watusi Jump”はワトゥーシとか言うダンス(映画「ブルース・ブラザーズ」でも踊っていた)にインスパイアされたノリノリの曲。ラストの”Walk Wid Me”は再びコテコテのブルースで、このあたりは正直可も不可もなくと言ったところです。以上、全体的にはまあまあの出来ですが、1曲目"A Foggy Day"を聴くだけでも価値のあるアルバムだと思います。

コメント

パット・マルティーノ/エル・オンブレ

2025-06-16 18:47:06 | ジャズ(ソウルジャズ)

本日は白人ジャズ・ギタリストのパット・マルティーノをご紹介します。1944年生まれで1960年代前半にプロデビュー。その後80年代に脳の病気による記憶障害で一時引退状態となりますが、80年代後半に演奏を再開し、2010年代まで多くの作品を残しました(2021年に77歳で他界)。活動時期的にはジム・ホールやジョー・パスらとかぶっていますが、彼らとはややスタイルを異にしており、少なくともデビュー当初はかなりソウル色の強い演奏です(70年代以降のジャズは基本聴かないのでその後のスタイルの変遷はよく知りません)。

マルティーノはフィラデルフィア生まれのイタリア系白人ですが、彼の才能を最初に見出したのがプレスティッジのR&B系テナーの重鎮だったウィリス・ジャクソン。1963年のリーダー作「グリース&グレイヴィー」に当時まだ18歳だったマルティーノを抜擢します。その後もジャクソンのレギュラーコンボの一員として次々と録音をこなし、並行して同じプレスティッジ・レーベルのドン・パターソン、ジャック・マクダフらオルガン奏者にも重用されるようになります。この時点でのマルティーノは完全に”ソウルジャズ界隈の人”ですよね。

今日ご紹介するマルティーノの初リーダー作、1967年5月1日録音の「エル・オンブレ」もまさにその路線を継続したもので、オルガンやラテンパーカッションを加えたソウルジャズを全編で聴かせてくれます。メンバーはトゥルーディ・ピッツ(オルガン)、ダニー・ターナー(フルート)、ミッチ・ファイン(ドラム)、ヴァンス・アンダーソン(ボンゴ)、アブドゥ・ジョンソン(コンガ)。正直誰やねん?と言うメンバーばかりですが、トゥルーディ・ピッツはシャーリー・スコットに次ぐ女流オルガン奏者として当時プレスティッジが売り出そうとしていた存在です。実はこのセッションの前月には「イントロデューシング・ザ・ファビュラス・トゥルーディ・ピッツ」を録音しており、そこには逆にマルティーノがサイドマンとして参加しています。

全7曲、うち5曲がマルティーノのオリジナルと言う構成。オープニングトラックは"Waltz For Geri"。タイトルはビル・エヴァンスの”Waltz For Debby”に似ていますが、曲調は全く違い、オルガンとパーカッションをバックにマルティーノがウェス・モンゴメリーを彷彿とさせる迫力あるギターソロを聴かせてくれます。2曲目”Once I Loved”はブラジルの名作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノバ曲でややリラックスした感じの演奏。ただ、バックではオルガンが鳴り響いているため、ボサノバ特有の南国リゾート感みたいなものはありません。3曲目はアルバムタイトルにもなっている”El Homnbre”。タイトルは英語のthe manをスペイン語にしたものですが、そんなにラテンっぽさはなく、力強いドラム&パーカッションに乗せてのっけからマルティーノがパワフルなギターソロを聴かせます。ダニー・ターナーのフルートソロもアクセントを加えています。4曲目”Cisco”も似たような感じの曲でギターとフルートがユニゾンでテーマを奏で、マルティーノが縦横無尽のソロを披露します。

ここまではほぼソロはマルティーノだけでしたが、後半(B面)最初の”One For Rose”はまずターナーのフルートソロで始まり、マルティーノが驚異の速弾きで続きます。6曲目”Blues For Mickey-O"はマルティーノのブルージーなギターソロに続き、トゥルーディ・ピッツも初めてファンキーなオルガンソロを披露します。7曲目”Just Friends”は本作で唯一の歌モノスタンダードですが、これがまた素晴らしい出来。この曲はジャズマンに大人気の曲で、他にもパーカー、コルトレーン、ロリンズ、ポール・チェンバース、ルー・ドナルドソンらが名演を残していますが、マルティーノのバージョンはそれらに負けないぐらいの代表的名演と言って良いと思います。グルービーなテンポに乗ってまずマルティーノがスピーディーかつメロディアスなアドリブを弾き、次いでトゥルーディ・ピッツがパワフルかつゴージャスなオルガンを響かせます。バックのドラム&パーカッションもアグレッシブでまさに全員が一体となった名演です。LPはこれで全部ですがCDには"Song For My Mother"と言う曲が収録されています。曲名はホレス・シルヴァーの”Song For My Father”に似ていますが、コルトレーンの"Naima"に似たメロディのバラードです。あまりインパクトのある曲ではないのでボツのままで良かったかも。以上、白人ギタリストのリーダー作とは思えないソウルジャズ全開の力作です!

コメント