goo blog サービス終了のお知らせ 

ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ザ・サクソフォンズ・オヴ・ソニー・スティット

2025-07-28 19:00:18 | ジャズ(ハードバップ)

本日はソニー・スティットが1958年4月にルースト・レコードに残した「ザ・サクソフォンズ・オヴ・ソニー・スティット」です。ジャケットには2本のサックス(左がテナーサックス、右がアルトサックス)が描かれていますが、2人のプレイヤーがいるわけではなく、ソニー・スティットが両方のサックスを演奏しています。スティットはもともとアルト奏者でしたが、途中からテナーも吹くようになり、一時期はテナーばかり吹いていたこともあるようです。その理由としてはスティットが”チャーリー・パーカーのそっくりさん”と呼ばれることを嫌ってテナーに持ち替えたというのが定説ですが、そもそもスティットとパーカーってそんなに似てますかね?個人的には全然違うと思うのですが・・・

この時期のスティットはヴァーヴ、ルースト、アーゴ等に年4~5枚のペースでリーダー作を量産しており、そのほとんどがワンホーン・カルテットです。本作もスティットのワンホーンで、リズムセクションはピアノがジミー・ジョーンズ、ドラムがチャーリー・パーシップですが、ベースは不明です。不明って一体どういうことやねん!と思いますが、そもそもオリジナルLPにはメンバーの記載がないようなのです。ジョーンズとパーシップの名前はおそらく後に判明したのでしょうが、ベースは誰かわからないまま。ビバップ期に活躍したベーシストのジョン・シモンズ説が有力ですが、確証はないようです。随分いい加減ですね。

おそらくスティット本人もレコード会社も「どうせサックスがメインだからリズムセクションなんて誰でもええやん」的なスタンスだったのでしょう。確かに演奏を聴けば時折ジミー・ジョーンズのピアノソロが挟まれる以外は、最初から最後までスティットが吹きまくるという内容です。スタイルもいつもながら音数の多いスティット節。他のサックス奏者なら一息間を空けるようなタイミングでも隙間を埋めるようにフレーズを詰め込んできます。こう言った奏法はパーカーにも他のアルト奏者にもないもので、まさにワン&オンリーの独特のスティット・ワールドですね。

全11曲。うち歌モノスタンダードが8曲、スティットのオリジナルが3曲。曲も短いものは2分、長くても4分程度で平均して3分前後の演奏が続きます。この頃のスティット作品はほぼどの作品も同じような構成で、はっきり言ってマンネリかつワンパターンです。でも、内容が良くないかと言われるとそんなことはなく、泉のように湧き出てくるアドリブの洪水と、ジミー・ジョーンズ・トリオの奇をてらわない端正なサポートはやはり一聴の価値アリです。

スタンダードのうち"Am I Blue?""I'll Be Seeing You""When You're Smiling"”Them There Eyes”は他のジャズマンにもよく取り上げられるお馴染みの曲で、スティットがいつもながら快調にソロを取ります。なお、4曲中"I'll  Be Seeing You"のみアルトで他はテナーによる演奏です。

ただ、個人的には普段あまり耳にしないマイナーな曲の方に魅力を感じます。5曲目”In A Little Spanish Town"は1920年代のヒット曲で、ビング・クロスビーらが歌ったそうです。スペインののどかな風景が浮かぶような魅力的なメロディをスティットがアルトで歌い上げます。7曲目"Back In Your Own Backyard"は同じく20年代の曲で、顔を黒塗りしたパフォーマンスで知られるアル・ジョルソンの作曲。ゆったりしたミディアムテンポの演奏でスティットはテナーでじっくりソロを吹きます。10曲目”Shadow Waltz”はハリー・ウォーレン作曲でこの曲もビング・クロスビーらが歌った曲。ラテンリズムの軽快な演奏でスティットがテナーでメロディアスに歌い上げます。9曲目"Sometimes I Feel Like A Motherless Child"は歌モノではなく、物悲しい黒人霊歌で1曲だけ毛色が異なっています。

スティットのオリジナルの3曲もどれも良いです。オープニングトラックの”Happy Faces”は明るい曲調の軽快なバップナンバーで、スティットがテナーで朗々と歌い上げます。8曲目"Foot Tapper"は急速調のバップで、アルトでファナティックに吹きまくるスティットが絶好調です。ラストトラックの"Wind-Up"はミディアムテンポのブルースでスティットがアルトで例の畳み掛けるようなアドリブを披露します。3曲ともジミー・ジョーンズが短いながらもキラリと光るピアノソロで盛り上げます。以上、ワンパターンで何が悪い!と開き直るようなスティットのサックスが堪能できる1枚です。


コメント    この記事についてブログを書く
« ダブル・オア・ナッシン | トップ | セルダン・パウエル・セクス... »

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。