ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ハチャトゥリアン/ガイーヌ、仮面舞踏会、スパルタクス

2012-04-30 22:58:42 | クラシック(管弦楽作品)
本日はアラム・ハチャトゥリアンの管弦楽作品を取り上げたいと思います。ハチャトゥリアンと言えば旧ソ連を代表する作曲家ですが、ロシア人であるショスタコーヴィチやプロコフィエフと違い、出身地であるカフカス地方の民族音楽を取り入れたややオリエンタルな作風が特徴的です。

今日ご紹介する作品もまさに強烈な異国情緒に満ちた作品です。まず、「ガイーヌ」は同名のバレエの附随音楽ですが、今ではその中の一曲である「剣の舞」だけが突出して有名になってしまいました。運動会でも定番のあのメロディですね。あらゆるクラシック音楽の中でも最も知られた曲の一つですが、ハチャトゥリアン自身はこの曲だけで作品のイメージが決定づけられることを快く思っていなかったとか。確かに民族色豊かな「アイシャの目覚めと踊り」や愛らしい「バラの乙女の踊り」など他の曲も魅力的です。

続く「仮面舞踏会」は全5曲あるのですが、その中でも「ワルツ」が浅田真央ちゃんのスケートに使用されたため日本では圧倒的に有名になりました。タイトル通り舞踏用の音楽なんですが、中間部のオリエンタルな旋律が何とも言えず魅力的です。コンサートのアンコールピースにもよく使われますし、個人的にも大好きな曲です。

「スパルタクス」は古代ローマの剣闘士を題材にしたバレエのための音楽で、上記2作品に比べればマイナーな作品です。ただ、内容は捨てがたい。特に組曲第2番第1曲の「スパルタクスとフリーギアのアダージョ」の美しいメロディは絶品。後半のトランペットソロがムードたっぷりです。その他の曲はいかにもハチャトゥリアンらしいオリエンタル情緒あふれる内容で古代ローマには正直そぐわない気もしますが、細かいこと言わずメロディを楽しむ分にはOKです。



CDはアレクサンデル・ラザレフ指揮ボリショイ管弦楽団のものを買いました。上記の代表作3つからの抜粋版で、「ガイーヌ」から4曲、「仮面舞踏会」から2曲、「スパルタクス」から7曲と美味しいところだけを上手く集めた感じです。ジャケットの絵がアルメニアじゃなくてトルコ風なのがツッコミ所ですが、西欧から見たら似たようなもんなんでしょうか?
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ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲、海、夜想曲

2012-04-26 19:34:29 | クラシック(管弦楽作品)
本日はクロード・ドビュッシーを取り上げます。ドビュッシーは音楽史において極めて重要な人物で、19世紀に主流だったロマン派音楽から脱却し、新たに印象主義と呼ばれるスタイルを確立したということが世界史の教科書にも載っています。ただ、そういう歴史的位置付けとは別に、実際のクラシック愛好者レベルでドビュッシーがどれだけ人気があるかというと正直微妙な所があるのではないでしょうか?何だかんだ言ってチャイコフスキーやマーラーの方がポピュラーなのは動かしがたい事実でしょう。

かく言う私もドビュッシーの作品はこれまでスルーしておりました。何となく小難しそうなイメージがあったんですよね。ただ、いつまでもそれではいかんだろうということで、今回彼の代表作と呼ばれる「牧神の午後への前奏曲」、交響詩「海」、「夜想曲」の3作品を聴いてみました。結論から言うとどれも良い曲でした。発表された当初は、調性にこだわらない現代的な旋律に賛否両論が巻き起こったそうですが、今の感覚で聴けばどれもごく普通のオーケストラ作品として楽しめる内容です。

「牧神の午後への前奏曲」は10分強の小品ですが、これぞ印象派といった感じの名曲です。気だる~いフルートで始まり、前半はぼんやりとした曲調なんですが、徐々に楽器が加わっていき、中盤でドラマチックな盛り上がりを見せます。

「海」は文字通り海の情景を音楽で表した交響詩で、「海の夜明けより真昼まで」、「波の戯れ」「風と海の対話」の3パートからなります。全体的には古典的な調性や和声の観念から脱却した斬新なメロディですが、管弦楽法を駆使した華麗なオーケストラが曲に上手くアクセントを付けています。特に1曲目と3曲目のフィナーレの盛り上がりが圧巻です。

「夜想曲」も「雲」「祭」「シレーヌ」の3部からなる組曲。「雲」はタイトルどおり空に浮かぶ雲のようなふんわりとしたつかみ所のない曲。「祭」で一旦賑やかな盛り上がりを見せた後に、最後の「シレーヌ」へと続きます。シレーヌとはギリシャ神話に出てくる海の妖精で、彼女らの歌声を模した幻想的な女声コーラスでラストを締めくくります。



CDはダニエル・バレンボイム指揮パリ管弦楽団のものを買いました。ドビュッシーの代表曲3曲ともなると、古今東西の名指揮者達が録音を残していますが、やはりフランスのオケであることと、グラモフォンの廉価版シリーズで1000円という価格が魅力です。
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ヴィエニャフスキ/ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番

2012-04-25 20:52:40 | クラシック(協奏曲)
本日はポーランドの作曲家ヘンリク・ヴィエニャフスキを取り上げたいと思います。ヴィエニャフスキは19世紀に活躍した音楽家で、在世中は当代随一のヴァイオリニストとしてむしろ演奏家として高い評価を受けていたようです。同じような存在としてパガニーニやヴュータンがいますが、彼ら同様ヴィエニャフスキも作曲家として多くのヴァイオリン作品を世に残しています。

まずは第1番から。これは彼がまだ18歳の時に作曲されたらしいです。そのためオーケストレーションが稚拙であるとして、録音される機会はあまりありません。ただ、聴いてみたところ、特にそのような欠点は見つけられませんでした。確かに際だった個性はないですが、普通に良くまとまったロマン派の名曲だと思うのですが。特に第1楽章、木管がメランコリックな旋律を奏でた後にオーケストラの導入部が続くあたりは絶品です。夢見るようなロマンチックな第2楽章、超絶技巧が要求されるロンド形式の第3楽章も水準以上の出来です。

続いて第2番。こちらはより演奏機会も多く有名な作品です。私もサン=サーンスのコンチェルトと一緒になったパールマン盤を所有しております。第1楽章はやや重苦しい第1主題と、幻想的で美しい第2主題が好対照をなす名曲です。第2楽章は美しさの中にも厳しさを含んだロマンツェ。第3楽章はジプシー風の激しいバイオリンソロが続いた後、最後に明るく華やかなフィナーレを迎えます。確かに相対的に聴いてみると1番よりも2番の方がバリエーションが豊かで完成度も高いかもしれません。でも、私としてはどちらもお薦めです。



CDはギル・シャハムのヴァイオリン、ローレンス・フォスター指揮ロンドン交響楽団のものを買いました。このCDには他にもヴィエニャフスキの代表的作品である「伝説曲」も入っており、ヴィエニャフスキ入門としては最適の1枚と言えるでしょう。「伝説曲」は7分ほどの小品ですが、やや不安げで重苦しい旋律が3分ほど続いた後、一転して現れる美しい中間部が聴きモノです。

さらにもう1曲収録されているのが、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。こちらはスペイン人ですが、ヴィエニャフスキとは同じロマン派のヴァイオリニストという括りで一緒にされたのでしょうか?曲自体はクラシック初心者でも知っている超有名曲。特に悲劇的かつドラマチックな序奏と終盤の激しい舞曲風の部分はCMでもよく使われています。ヴァイオリンの技巧をこれでもかと詰め込みながらも、メロディの親しみやすさも兼ね備えた逸品と言えるでしょう。
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ブラームス/交響曲第2番

2012-04-14 12:04:23 | クラシック(交響曲)
本日はブラームスの交響曲第2番です。ブラームスの交響曲と言えば何と言っても第1番、次いで第4番が有名で私も既に持っていましたが、この2番も内容的にはそれらに劣らぬ出来です。ブラームス版“田園交響曲”と呼ばれていることからわかるように、全体的に明るく朗らかな印象なので、悲壮感漂う4番よりむしろ聴きやすいのでは?

とは言えベートーヴェンの「田園」のような古典的明快さはなく、緻密に練り上げられた分厚いオーケストラサウンドは新古典主義の大家ブラームスならではという感じがします。第1楽章はゆったりしたメロディの中にも重厚さを感じさせる内容で、ホルンの奏でる冒頭の主題、弦楽楽器による第2主題が特に印象的。第2楽章もその流れを組む穏やかなアダージョで、やや哀愁を帯びた弦楽アンサンブルが基調となっています。第3楽章は明るいロンド形式で、何となくバロックっぽい響き。第4楽章はフィナーレを飾るにふさわしいドラマチックな盛り上がりを見せます。



CDはルドルフ・ケンペ指揮バンベルク交響楽団のものを買いました。1963年の録音とやや古いですが、音質的にも良好ですし、演奏もドイツの名門オケだけあって素晴らしいものがあります。一番の魅力はクレストシリーズで1000円という価格ですが・・・

このCDには他にブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」とウェーバーの「オイリアンテ序曲」が収録されています。前者は文字通りハイドンの「聖アントニーのコラル」と呼ばれる作品の1主題を変奏曲に仕立て上げたもの。実際はこの主題はハイドンの作曲ではないというのが今では定説らしいですが、いかにもハイドンの時代らしい古典的な作風です。ただ、曲調は18世紀っぽくても、随所に聴かれる分厚いオーケストラはまるっきりブラームスです。

続く「オイリアンテ序曲」は同名のオペラの序曲として作曲されたようです。ウェーバーと言えば、ドイツ・オペラの草分け的存在という知識しかなく、実際に曲を聴いたのは初めてですが、ベートーヴェンの「英雄」を彷彿とさせる勇壮な曲調ですね。
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グリーグ/ホルベアの時代より

2012-04-12 19:56:51 | クラシック(室内楽)
本日はノルウェーを代表する作曲家、エドヴァール・グリーグを取り上げたいと思います。グリーグと言えば何と言ってもピアノ協奏曲が圧倒的な人気を誇り(私も大好きです!)、次いでペール・ギュント組曲が続くと言った感じでしょうか?ただ、今日取り上げる「ホルベアの時代より」もそれらに負けず劣らず魅力的な作品です。

ドイツ語風に発音して「ホルベルク組曲」とも呼ばれるこの作品はもともとはピアノ曲として作られたそうですが、今ではグリーグ自身が編曲した弦楽合奏版の方が有名になっています。ホルベアというのは18世紀前半に活躍したノルウェーの文学者のことで、彼の生きた時代、つまりバロック音楽の様式で作曲されています。

曲はどれも3~5分程度の短さですが、それぞれバラエティに富んだ曲調となっています。まず、第1曲「前奏曲」は躍動感あふれる弦楽アンサンブルが魅力。続く「サラバンド」ははやや哀調を帯びた穏やかで美しいメロディ。「ガボットとミュゼット」はバロックの宮廷で演奏されていたかのような舞踏曲。「アリア」は唯一短調の曲で、やや暗めの導入部に続いて、中間部に現れる美しい旋律が印象的。最後を飾る「リゴドン」は南仏風の舞曲で、軽快な弦の響きと哀調あふれる旋律のコントラストが見事。以上、全部合わせても22分弱の小品ですが、最初から最後まで魅力的な旋律に彩られた至上の名曲と言っていいでしょう。



CDは新イタリア合奏団のものを買いました。主にバロック音楽をレパートリーとするソリスト集団で、本作では計11人の一流弦楽奏者達が見事なハーモニーを聴かせてくれます。普段はイタリア音楽を中心らしいですが、北欧音楽の解釈も実に見事です。

このCDには他にグリーグの弦楽合奏作品が2曲収められています。一つは「弦楽四重奏曲」で、もう一つは「2つのノルウェーの旋律」です。前者は文字通り、弦楽四重奏のための楽曲ですがここでは11人による弦楽合奏で演奏されています。北欧の自然を思わせる峻厳な響きを持つ第1楽章、一転して優しさに満ちあふれたロマンツェ、荒々しい主題の後に民族舞踊風のメロディが続く第4楽章となかなか盛りだくさんな内容です。ほとんど取り上げられることのない作品ですが、意外と拾いモノでした。

「2つのノルウェーの旋律」は、ノルウェーの民謡にインスピレーションを得て書かれた作品。第1曲はかなり哀愁漂う暗めの旋律ですが、続く「牛飼いの歌」「農夫の踊り」の牧歌的で優しさに溢れたメロディにグリーグの作曲家としての類い希なセンスを感じます。
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