本日はフランク・ウェスです。彼については以前にプレスティッジ盤「サザン・コンフォート」をご紹介しました。そこでも書いているようにウェスは50~60年代のカウント・ベイシー楽団の重要メンバーであり、同じファーストネームのフランク・フォスター、トランペットのサド・ジョーンズ&ジョー・ニューマンらとともに黄金期のベイシー・サウンドを支えました。ベイシー楽団ではサックスとフルートを兼任していますが、どちらかと言えばフルート奏者としてのイメージが強く、特にソロ作品ではフルートをメインにしています。
今日ご紹介する「オパス・イン・スウィング」でもウェスはサックスは吹かずフルートに専念しています。ジャケットにはフルートと2本のギターがドーンと描かれていますが、この絶望的なセンスのジャケットデザインはサヴォイ・レコードならではですね。ちなみに2本のギターはケニー・バレル(ギター)とフレディ・グリーン(リズムギター)で、その他にエディ・ジョーンズ(ベース)、ケニー・クラーク(ドラム)が脇を固めています。メンバーのうちウェス、グリーン、ジョーンズの3人がベイシー楽団のメンバーで、基本はスイング風のジャズですが、そこにバリバリのハードバッパーのバレルが絡むと言う面白い構図です。なお、ウェスは前年にミルト・ジャクソンの歴史的名盤「オパス・デ・ジャズ」にフルート奏者として参加しており、本作のタイトルはそれを意識したものと思われます。
全5曲。うちスタンダードは1曲のみで後はメンバーのオリジナルです。オープニングトラックはウェスの自作曲”Kansas City Side”。文字通りベイシー楽団の原点であるカンザス・スタイルのジャズで、フレディ・グリーンのリズムギターをバックにバレルとフルートが交互にソロを取って行きます。同じギターの名手でもひたすらズンズンとリズムを刻むだけのグリーンと、次々とメロディアスなアドリブを繰り広げるバレルが好対照で面白いですね。曲自体もスインギーな名曲で、本作のベストトラックと思います。続く”Southern Exposure”はバレル作のブルースですが、こちらはまあまあかな。
3曲目は唯一のスタンダードで「オズの魔法使い」の”Over The Rainbow”。お馴染みの旋律をまずバレルが無伴奏で奏で、その後はウェスとバレルが交互にソロを取ります。4曲目”Wess Side”とラストの”East Wind”はどちらもウェスのオリジナル。前者はおそらくwest sideと掛けていで、westとeastで対になっているのでしょうか?曲自体は特筆すべきものはなく、前者はミディアムスイング、後者はスローブルースです。以上、1曲目は素晴らしいですが、他は可もなく不可もなくと言った感じですかね。個人的にはウェスのフルートよりもケニー・バレルとフレディ・グリーンと言う全くスタイルの異なる2人のギタリストの妙技を楽しむアルバムだと思います。