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ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジョー・モレロ/コレクションズ

2025-07-24 18:38:04 | ジャズ(ウェストコースト)

ジャズファンの楽しみの一つにマイナーレーベルの名盤探しと言うものがあります。ブルーノート、プレスティッジ、リヴァーサイド、ヴァーヴ等に名盤が多いのはまごうことなき事実ですが、一方で聞いたことのないようなマイナーなレコード会社に意外な名盤が隠れていたりします。50年代のロサンゼルスに短期間存在したイントロ・レコードもその一つで、このレーベルはアート・ペッパーの「モダン・アート」によってのみ存在を知られているレーベルと言っても過言ではないでしょう。

この「モダン・アート」は後にブルーノートに版権が買い取られ、CD化もされたことから比較的一般のジャズファンにも入手しやすく、ペッパーの代表作として昔から親しまれています。一方でイントロ・レコードにもう1枚ペッパー絡みの作品があることはコアなジャズファンにしか知られていません。それが今日ご紹介する「コレクションズ」です。ただし、ペッパーのリーダー作ではなく、彼の参加は10曲中半分の5曲のみ。リーダーはデイヴ・ブルーベック・カルテットのドラマーとしてかの有名な”Take Five”にも参加したジョー・モレロです。

録音は1957年1月3日の1日で行われたようですが、2つのセッションに分かれており、1つはペッパー入りのクインテットで、ペッパー、レッド・ノーヴォ(ヴァイブ)、ジェラルド・ウィギンス(ピアノ)、ベン・タッカー(ベース)、モレロと言う布陣。残りのセッションがペッパーの代わりに白人ギタリストのハワード・ロバーツが入っています。レッド・ノーヴォは30年代のスイング時代から活躍する白人ヴァイブ奏者でベニー・グッドマン楽団にも在籍していた大ベテラン。ジェラルド・ウィギンスはジェリー・ウィギンスの別名でも知られ、黒人でありながらもっぱらウェストコーストのジャズシーンで活躍した名ピアニストです。

アルバムはペッパーの自作曲"Tenor Blooz"で始まります。タイトル通りペッパーがテナーで吹くブルースで、レッド・ノーヴォのヴァイブ→ペッパーのテナー→ウィギンスのソロと続きます。ペッパーのテナーソロはアルトを吹く時のような鋭さこそないものの、レスター・ヤング風のコクを感じさせるソロを吹きますね。後半にモレロのドラムとテナー、ヴァイブの掛け合いもあります。2曲目は歌モノスタンダードの"You're Drivin' Me Crazy"。ペッパーはこの曲以降はアルトを吹きますが、やはりテナーよりアルトの方がいいですね。曲は典型的なさわやかウェストコースト・ジャズで、ペッパー→ウィギンス→ノーヴォ→ペッパーとモレロの掛け合いと軽快なソロをリレーします。3曲目と4曲目はペッパー抜きのセッションでハワード・ロバーツのギターが入ります。スタンダードの”Sweet Georgia Brown”は急速調の演奏で、各人の短いソロとモレロのドラムが絡み合うような展開です。4曲目”Little Girl”はあまりよく知らない歌モノですがなかなか良い曲です。この曲はロバーツのギターにスポットライトが当たり、彼が主役のような感じですね。このロバーツも日本ではあまり人気がないですが、ヴァーヴやキャピトルに多くのリーダー作を残す実力者です。5曲目は再びペッパーが戻り、自作曲の"Pepper Steak"を演奏します。哀愁漂うマイナーキーの曲でペッパー→ウィギンス→タッカーと味のあるソロをリレーします。

続いて後半(B面)。"Have You Met Miss Jones"はペッパー抜きで、お馴染みのスタンダードをウィギンス→ロバーツ→ノーヴォ→モレロと各楽器のソロ交換とドライブ感溢れる演奏を展開します。7曲目はチャーリー・パーカーの"Yardbird Suite"。東のパーカーに西のペッパー、アルトの天才として並び称された者同士ですが、ここではペッパーが目の覚めるような素晴らしいソロでパーカーの代表曲を料理します。後に続くウィギンスのソロ→ペッパーとモレロのソロ交換も良いです。8曲目"I Don't Stand A Ghost Of A Chance"と9曲目"I've Got The World On A String"はどちらもスタンダード。ペッパーは参加していませんが、ノーヴォ、ウィギンス、ロバーツらが充実したソロを聴かせます。ラストはペッパーの"Straight Life"。ペッパーのテーマ曲のような曲で「サーフ・ライド」や「ミーツ・ザ・リズム・セクション」に収録されているだけでなく、彼の自叙伝のタイトルにもなっています。のっけからペッパーが閃きに満ちた圧巻のアルトソロでぐいぐい引っ張ります。後に続くウィギンスのソロ、モレロとペッパーの掛け合いも最高です!

以上、10曲中5曲の参加ながらやはりアート・ペッパーの存在感は圧倒的で、その輝きに満ちたプレイは50年代の彼の全作品の中でも指折りの出来だと思います。もちろんリーダーのモレロも随所でソロを披露して存在感を見せますし、過小評価されたジェラルド・ウィギンスのピアノも見事です。ずばりウェストコースト・ジャズ屈指の隠れ名盤です。

 

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アート・ペッパー/スマック・アップ

2025-07-10 21:42:59 | ジャズ(ウェストコースト)

50年代のアート・ペッパーについては本ブログでもたびたび取り上げてきましたが、本日はその中でも変わり種である「スマック・アップ」を取り上げたいと思います。1960年10月にコンテンポラリー・レコードに吹き込まれたもので、時系列的には「ゲッティン・トゥゲザー」「インテンシティ」の間、ペッパーが麻薬で長期休養する直前の作品です。

さて、本作が他のペッパー作品と違う点は、収録曲が1曲を除いて他のジャズマンのオリジナルで占められていること。それもパーカーやモンク、パウエル等のメジャーなジャズマンの曲ではなく、マイナーな曲ばかり。選曲はペッパー自身が行ったようですが、あえて王道を外したようなチョイスですね。メンバーはジャック・シェルドン(トランペット)、ピート・ジョリー(ピアノ)、ジミー・ボンド(ベース)、フランク・バトラー(ドラム)です。

1曲目はタイトルトラックでもある"Smack Up"。西海岸を代表する黒人テナー、ハロルド・ランドの曲で、代表作「ハロルド・イン・ザ・ランド・オヴ・ジャズ」に収録されていました。曲は痛快ハードバップで、ペッパー→シェルドン→ジョリーと軽快にソロをリレーし、後半にバトラーのドラムとペッパーの掛け合いもあります。2曲目"Las Cuevas De Mario"は唯一のペッパーの自作曲。これがまた5/4拍子と言う変わったリズムの曲で、ぶっちゃけ良くわからん曲です。3曲目"A Bit Of Basie"は西海岸で活躍した黒人マルチリード奏者バディ・コレットの曲。カウント・ベイシーにちなんだタイトルでしょうが、曲は全然ベイシーっぽくなく、いかにもウェストコースト・ジャズと言った感じの明るく躍動感たっぷりの演奏です。

後半(B面)最初はベニー・カーターの"How Can You Lose"。彼の名盤「ジャズ・ジャイアント」に収録されていたようですが、その中でも地味な曲で正直そんな曲あったかなあ?と言う感じです。やや哀調を帯びたスローミディアムの曲ですが、ペッパーの手にかかってもやっぱり地味です・・・5曲目"Maybe Next Year"はデュエイン・タトロなる人物の曲。正直、彼に関する情報は全く持ち合わせていないのですが、主にテレビドラマの作曲を手がけていたようですね。曲はバラードですが、メロディにややひねりが効いています。この曲はペッパーのワンホーンです。ラストの"Tears Inside"は何と前衛ジャズの旗手オーネット・コールマンの曲。ペッパーとコールマンの組み合わせは意外ですが、実は初期のコールマンは西海岸を拠点にコンテンポラリー・レコードで活動しており、同じレーベルのペッパーとも接点があったのでしょう。この曲も前年のコンテンポラリー盤「トゥモロー・イズ・ザ・クエスチョン」収録曲です。私はジャズ初心者の20代の頃に名盤紹介本に薦められるまま「ゴールデン・サークル」を購入し激しく後悔したクチなので、これまでコールマン作品は聴いてこなかったのですが、あらためてyoutubeで"Tears Inside"の原曲を聴くと、少なくともこの時期のコールマンは意外と普通に聴けますね。だからと言って特に良いとも思いませんが・・・本作のペッパーの演奏も前衛っぽさは全く感じませんが、かと言って特に素晴らしいというわけでありません。以上、わざわざ取り上げておきながらそこまで強くおススめする内容ではありませんが、ペッパー好きの人ならそれなりに楽しめるかもしれません。

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ハービー・ハーパー・セクステット

2025-05-20 21:46:14 | ジャズ(ウェストコースト)

最近はジャズ・メッセンジャーズ、キャノンボール、ミンガス、マイルスとメジャーどころが続きましたが、今日はマイナーどころでハービー・ハーパーを取り上げたいと思います。主にウェストコーストで活躍した白人トロンボーン奏者で、ベニー・グッドマン楽団をはじめビッグバンドを渡り歩き、ソロとしてもベツレヘムやタンパ等にリーダー作を残しています。本作「ハービー・ハーパー・セクステット」は1957年6月にモード・レコードに吹き込んだものです。同レーベルについては過去に何度か取り上げていますが(「エディ・コスタ・クインテット」「ペッパー・アダムス・クインテット」)、ジャケットデザインが独特で、エヴァ・ダイアナと言う女性画家による水彩画のポートレートが印象的です。本作のハービー・ハーパーは眼鏡をかけてネクタイを締めた姿で、ジャズマンと言うよりまるで大学教授のような風貌ですね。

メンバーはハーパー、ジェイ・コーレ(テナー)、ハワード・ロバーツ(ギター)、マーティ・ペイチ(ピアノ)、レッド・ミッチェル(ベース)、フランク・キャップまたはメル・ルイス(ドラム)です。リーダーのハーパーもお世辞にもメジャーとは言えませんが、それ以上にジェイ・コーレが誰?と言いたくなるぐらい超マイナーですよね。ニュージャージー出身の白人テナーで主にビッグバンドで活躍したそうで、確かにバディ・リッチの「ビッグ・スウィング・フェイス」に名前を見つけることができますが、他では見たことはありません。それ以外のメンバーはウェストコースト・ジャズ好きにはお馴染みの顔ぶれです。

全7曲。オリジナルが2曲、歌モノが5曲と言う構成です。オープニングトラックはジェイ・コーレ作の"Jay's Tune"で、のっけから彼が目の覚めるようなテナーソロを披露してくれます。スタイル的にはレスター・ヤング派で、トーンも力強く、アドリブも流れるようなスムーズさです。ジャズファンとしてはこう言う隠れた名手を見つけると嬉しくなりますよね。その後のロバーツ→ハーパー→ペイチ→ミッチェルのソロも快調でずばり本作のベストトラックと思います。2曲目"Little Orphan Annie"と3曲目"Chloe"はあまり聞いたことがない歌モノですが、どちらも軽やかな演奏。個人的には後者がドライブ感があってなかなかの好演奏だと思います。フランク・キャップのドラムが良い仕事をしています。

後半(B面)もいかにもウェストコーストらしい軽快な演奏が続きます。4曲目"Let's Fall In Love"は軽快なミディアムスインガー、5曲目"Skylark"はバラードでこの曲はハーパーのトロンボーンソロにスポットライトが当たっています。”Long Ago And Far Away”はアート・ペッパーやチェット・ベイカー等の演奏でも知られていますが、ここでもコーレ→ペイチ→ハーパー→ロバーツ→ミッチェルと快調にソロをリレーします。最後の"That's For Sure"はフランク・キャップ作曲のブルース。ただ、彼がドラムを叩いているのはA面で、この曲含めたB面はメル・ルイスがドラマーを務めています。肝心のリーダーのハーパーのトロンボーンですが、正直聴く者を驚かせるような超絶技巧はありませんが、いかにもウェストコースターらしいマイルドで歌心のあるソロを全編で聴かせてくれます。知られざるジェイ・コーレのテナーも素晴らしいですね。

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ビル・パーキンス&リッチー・カミューカ/テナーズ・ヘッドオン

2025-05-01 17:44:50 | ジャズ(ウェストコースト)

レスター・ヤング派と言う言葉があります。文字通りスイング期に活躍した名テナー奏者、レスター・ヤングのスタイルを踏襲するジャズマン達のことで、40~50年代に活躍したテナーマンの主流派だったと言えるでしょう。まろやかな音色とメロディアスなアドリブが最大の特徴で、同じテナー奏者でも激しいブロウを持ち味とするいわゆる”ホンカー”と呼ばれる人達とは一線を画しています。そのためかレスター自体は黒人にも関わらず、どちらかと言うと白人ジャズマンにレスター派が多い印象です。黒人だと例えばジョン・コルトレーンやデクスター・ゴードンも若い頃はレスターに影響を受けたそうですが、長じてからの演奏は全く別物ですし、ソニー・ロリンズはどちらかと言えばコールマン・ホーキンス派です。あえて言うならハンク・モブレーがレスター派に近いですかね。

レスター派の代表格と言えば何と言ってもスタン・ゲッツとズート・シムズが両巨頭ですね。他では東海岸だとアル・コーンやアレン・イーガー、西海岸だとボブ・クーパーに今日ご紹介するリッチー・カミューカとビル・パーキンスあたりがそうですね。マイナーなところだとブリュー・ムーア、チェット・ベイカーの盟友フィル・アーソ、デイヴ・ペル、ボブ・ハーダウェイ等もレスター派に分類されます。

今日ご紹介する「テナーズ・ヘッド・オン」はそんな西海岸のレスター派2人による共演盤です。ジャケット左側がカミューカ、右側がパーキンスですね。カミューカについては本ブログでも先日の「ジャズ・エロティカ」をはじめサイドマンとしてもたびたび取り上げています。ビル・パーキンスはマーティ・ペイチ楽団絡みで何度か言及していますが、きちんと紹介するのは今回が初めてですね。録音年月日は1956年7月。西海岸のリバティ・レコードへの吹き込みです。リーダー2人以外のメンバーはピート・ジョリー(ピアノ)、レッド・ミッチェル(ベース)、スタン・リーヴィ(ドラム)。いずれも西海岸を代表する名手ぞろいです。

全8曲。スタンダード6曲、オリジナル2曲と言う構成です。オープニングトラックはデューク・エリントンの”Cotton Tail”。急速調のテンポでこの曲はテナーバトルと言う感じですね。ソロ1番手はピート・ジョリーで、その後カミューカ→パーキンスの順でソロをリレーし、後半にはテナーチェイスも繰り広げます。2人のテナーの違いですが、ジャケット美女のように目をつぶって聴いてもなかなか違いを見つけるのが難しいかもしれません。あえて言うならカミューカの方がややコクがあり歯切れが良く、パーキンスの方はよりソフトな感じでしょうか?もっとも、CD解説書に全曲のソロオーダーが書いてあるので間違えようがないのですが・・・

2曲目以降はあまりテナーバトル系の熱い演奏はなく、バラードまたはミディアム中心です。優しいバラードの2曲目"I Want A Little Girl"、ミディアムテンポで歌心たっぷりに歌い上げる4曲目”Indian Summer"、シナトラのヒット曲6曲目"Oh! Look At Me Now"と言った歌モノスタンダードを2人がほのぼのと演奏して行きます。こう言ったタイプの演奏を「上品でステキ」と思うか「パンチが足りない!」と思うかは聴く人の好みによりますが、私は若干後者寄りですかね・・・ただ、"Indian Summer"はなかなかの好演と思います。

その他、スタンダード曲の中ではベニー・グッドマン楽団の5曲目"Don't Be That Way"が意外と聴きごたえがあります。ソロはパーキンス→カミューカの順ですが、その間にピート・ジョリーのピアノソロが挟まれ、意外とパーカッシブで力強いタッチです。後半のテナーチェイスもスリリング。7曲目”Spain”は後年のチック・コリアの名曲とはもちろん別曲で、スイング時代のアイシャム・ジョーンズ楽団の曲です。オリジナルの2曲はレッド・ミッチェルが書いたブルースナンバーの3曲目”Blues For Two”、同じレスター派のテナー奏者アル・コーンのカバー8曲目"Pick A Dilly"ですが、演奏的にはどちらも特筆すべきものではないです。以上、ブログにアップしておきながら、そこまで強く薦めるというわけではないですが、”Cotton Tail""Indian Summer""Don't Be That Way"あたりは一聴の価値があると思います。

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リッチー・カミューカ/ジャズ・エロティカ

2025-03-25 20:56:22 | ジャズ(ウェストコースト)

本日はリッチー・カミューカの「ジャズ・エロティカ」です。随分意味深なタイトルが付いていて、一体どんな音楽が展開されるのかと思いますが、中身はいたって正統派のウェストコーストジャズです。確かにジャケットにはおっぱい丸出しの全裸の女性が描かれていますが、そもそも写真ではなくてイラストですしポーズも「あ~ぐっすり寝ちゃったわ」的な感じでそんなにエロいと言う感じはないですね。(とは言えレジに持って行く時は若干恥ずかしかったですが・・・)

リッチー・カミューカはウェストコーストを代表する白人テナー奏者としてジャズファンの間ではそれなりに人気があります。他には例のモード・レコードにカルテット作品を残していますし、ビル・パーキンスとのツインテナー「テナーズ・ヘッド・オン」等もあります。本ブログでは過去に紹介したシェリー・マンの「アット・ザ・ブラックホーク」やスタン・リーヴィ「グランド・スタン」、デンプシー・ライト「ザ・ライト・アプローチ」にサイドマンとして参加していました。スタイル的にはバリバリのレスター・ヤング派で、ズート・シムズから少しアーシーさを抜いた感じと言えばしっくり来るでしょうか?まろやかで歌心溢れるテナーは紛れもなく一級品です。

本作は全10曲の構成で、うち6曲がビル・ホルマンがアレンジを手掛けた8人編成の小型ビッグバンド、残りの4曲がワンホーンカルテットとなっています。基本となるメンバーはカミュ―カにヴィンス・グワラルディ(ピアノ)、モンティ・バドウィグ(ベース)、スタン・リーヴィ(ドラム)の4人で、さらにそこにコンテ・カンドリ&エド・レディ(トランペット)、フランク・ロソリーノ(トロンボーン)、アレンジャーと兼任のホルマン(バリトン)と言うラインナップです。ウェストコーストらしく全員が白人ですが、名手揃いなので演奏のクオリティに全く問題はありません。発売元はハイファイ・レコードと言う全く聞いたことのないレコード会社です。

曲の紹介ですが、楽器構成毎が分かりやすいので今回もその方式でやります。まずは8人編成から。1曲目”Way Down Under"はビル・ホルマンのオリジナル曲。このホルマンと言う人は自身もサックス奏者としてそこそこ活躍しましたが、作曲や編曲も手掛けるマルチタレントだったようですね。この曲もスイング感に溢れた素晴らしい曲で、本作の中でもベストトラックと言って良いぐらいの出来です。快調なホーンアンサンブルをバックに絶好調のテナーソロを取るカミューカが最高ですね。

残りの5曲は全て歌モノスタンダード。それも”Angel Eyes"”Star Eyes"”I Hadn't Anyone Till You""The Things We Did Last Summer""Indiana"とどれも良く知られた曲ばかりです。これらの曲ではカミューカだけではなくコンテ・カンドリやフランク・ロソリーノ、ホルマンもソロを取り、彼ら西海岸を代表する名手達のプレイにも注目です。ただ、惜しむらくはビル・ホルマンのアレンジがちょっと凝りすぎてやや鼻に突くきらいはありますね。有名スタンダード揃いなだけに自分の色を出そうと思ったのでしょうが、ちょっとアレンジ過多の気がします。唯一ラストの"Indiana"はシンプルなアレンジで、疾走感溢れるホーンアレンジに乗ってロソリーノ→ホルマン→カンドリ→カミューカ→グワラルディと切れ味鋭いソロをリレーします。

一方、ワンホーンカルテットの方ですが、こちらも2曲目”Blue Jazz"を除いて有名スタンダード中心。”Blue Jazz”はカミューカの自作曲でおそらく彼流のブルースでしょうが、ウェストコーストらしくあまり泥臭さはありません。4曲目”Stella By Starlight"はアップテンポな演奏で、カミューカ→グワラルディに続きスタン・リーヴィのドラムソロも聴けます。7曲目”Linger Awhile"はあまり他では聞いたことのない曲ですが、サラ・ヴォーンらも歌った曲で、ここではドライブ感たっぷりの演奏に仕上げられています。ヴィンス・グワラルディのピアノソロも素晴らしいです。9曲目はなぜか"If You Were No One"と言うタイトルでビル・ホルマンの自作曲となっていますが、誰がどう聴いてもジュール・スタインの名曲”It's You Or No One"です。なぜ見え透いたウソをつく?演奏自体はアップテンポの申し分ない好演奏です。以上、ジャケットとタイトルはともかく、中身はウェストコーストジャズが好きな人なら気に入ること間違いなしの好盤です。

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