VolleIsm~バレイズム~

Volley+Ismの造語。日本国内、世界のバレーの魅力を発信します!(現在、書籍化計画の記事は非公開にしています)

2014/15 Vリーグ開幕記者会見 4

2014-11-05 | Vリーグ/国内大会

Vリーグは、国内のチームが日本一をかけて戦う大会であると同時に、全日本代表が世界に立ち向かっていくための前段階でもある、と僕は考えている。現に、Vリーグの理念の一つとして「世界に挑戦」という項目がある。全日本代表とVリーグは切り離せない関係にあるのだ。

特に男子は、世界のバレーを取り入れようとするチームが多く出てきた。JTサンダーズはヴコヴィッチ・ヴェセリン監督、豊田合成トレフェルサはクリスティアンソン・アンディッシュ監督、サントリーサンバーズはジルソン・ベルナルド監督を招聘。
Vリーグで戦うチームの選手・監督が世界のバレーボールに対してどのような意識を抱いており、どのように今シーズンを戦っていくのか。10月27日に行われた記者会見後の囲み取材で質問した。

取材時間が限られており全員とはいかなかったが、JTサンダーズのヴコヴィッチ監督、サントリーサンバーズのジルソン監督、パナソニックパンサーズの川村慎二監督、堺ブレイザーズの出耒田敬選手に取材することができた。特に堺ブレイザーズの出耒田敬選手からは、日本男子バレーを変える可能性を大いに秘めた心強い言葉が聞けた。

女子は、Vリーグ三連覇を狙う久光製薬スプリングスの中田久美監督、今シーズンから
プレミアリーグに参戦する上尾メディックスの吉田敏明監督に取材した。なお、取材時間と文章量の関係で、吉田敏明監督の取材については次の記事(その5)で取り上げる。


久光製薬スプリングス 中田 久美 監督

「無駄のない点数の取り方。確実に点数を取らなければいけないところで取る。当たり前のことを当たり前にやる。結局バレーボールはリズムの崩し合いなので、いかに相手のリズムを崩すか。それを常に考えながらやっている」

中田監督らしい簡潔な回答だった。もう少し具体的なことを質問してみたかったが、中田監督には常に記者が張り付いている状態で、全く時間がとれなかった。それほど久光製薬への期待と注目が大きいということなのだろう。

戦力が揃っており、今シーズンも優勝候補の最右翼である久光製薬スプリングス。「世界と戦える選手を育てたい」という中田監督は当然、Vリーグ三連覇も狙っているはずだ。久光製薬が三連覇という偉業を成し遂げるのか、はたまたこの常勝軍団を破るチームがついに現れるのか、注目。

 

JTサンダーズ ヴコヴィッチ・ヴェセリン 監督

「昨シーズンよりJTサンダーズの監督に就任し、抜本的な改革を行った。それはバレーボールに対する取り組み方であったり、どのようにプレーするかであったり、言い始めるときりがない。そういった改革が、昨年度の2位という良い結果となって表れた。私のバレーボールに対する方法論を選手がよく理解してくれているため、昨シーズンよりも非常にやりやすい。逆に私は、選手が試合の序盤・中盤・終盤といった様々な局面で、どういった活躍ができる(見込みがある)のかを理解した上で、チームに落としこんでいきたい」

昨年7月の就任記者会見で、good communicationが大切だと話していたヴコヴィッチ・ヴェセリン監督。とにかく選手のことをよく見ているのだろうな、と話を聞いていて思った。選手が持つ潜在的な能力を見極め、それをチーム全体としての可能性へ繋げていこうとしている。good communicationで、チームの雰囲気も上々。今シーズンのJTサンダーズは、昨シーズンとは一味違ったチームになりそうだ。
 

サントリーサンバーズ ジルソン・ベルナルド 監督

ジルソン・ベルナルド監督はブラジル出身で、1998年から2004年までサントリーサンバーズに所属していた。5年連続で得点王に輝き、当時付けていた背番号の16は永久欠番とされるなど、日本国内で大きな功績を残した人物である。ブラジル人監督ということで、ブラジルと日本のバレーについて、その違いを聞いた。

「ブラジルは力、パワーのバレーボール。日本はどちらかと言うと戦術、スキルを重視している。でも僕は、日本の選手はフィジカル、パワーをもっと重視すべきだと思う。日本バレーの戦術は非常に豊かで素晴らしいものがある。だからこそパワーを重視していくべき。僕がサントリーでプレーしていたときにはすでに、フィジカル・メンタルが強くならなければならないという考え方はサントリーにあった。僕が監督に就任して、その仕上げをしている段階。加えて、選手がどういった目標を達成したいのかということを意識することが大切だと思う。常に目標を持ってやることでさらに強くなれる」

ジルソン監督はJTのヴコヴィッチ監督と同様、まずは選手の意識を変えることに着手しているようだ。日本バレーでは「力で押していく」というようなことはあまり聞かない。どちらかというと個人の技術、スキルでカバーし合って勝利を目指す、といった認識ではないだろうか。ジルソン監督がブラジルから持ち込んだ、力・パワーのバレーボールが日本バレーに浸透していくのが楽しみだ。まずは今シーズンのVリーグ、ジルソン監督の手腕に注目。

 

パナソニックパンサーズ 川村 慎二 監督

福澤達哉選手、清水邦広選手、永野健選手、深津英臣選手と、全日本男子の主力が所属するパナソニック・パンサーズ。今シーズンは川村慎二監督が就任し、Vリーグ連覇を狙う。世界と戦い、経験を積んだ選手をまとめあげる川村監督は、当然のように世界を意識していた。

「パナソニックのメンバー全員が全日本代表に入ることが目標。そのために、選手には今のプレーのままでいいのかということを常に考えながらやれと言っている。また、海外の選手の高さやパワーがどのようなものなのかを選手に体感してほしいので、海外遠征なども考えながらやっている」

大胆な発言だ。「パナソニックのメンバー全員が全日本に入ることが目標」とは、普通の監督ならば言えないだろう。この一言に川村監督の決意が伺える。選手としていぶし銀のような活躍を見せた川村氏が、監督としてはどのようにパナソニックを支えていくのだろうか。



堺ブレイザーズ 出耒田 敬 選手

10月、アジア大会で銀メダルを獲得した出耒田敬選手。決勝のイラン戦のあと、「イランのような高いクイックを目指す」と公言していたのが印象的だった。出耒田選手が目指すクイックについて聞いた。

「印象に残ったイランのクイックは、高さを重視していて、コミット(※1)しても止められないようなクイック。そういうのを目指したい。世界トップレベルのチームはどこからでも高さのある攻撃をしてくる。日本は速さを求めすぎて、高さを軽視しているようなところがあるけれど、そういった『速さ』の風潮に流されずにやっていきたい」

世界のバレーボールが日本に入ってきていると感じた瞬間だった。世界トップクラスのチームは、速さを求めすぎて高さを失うようなことはしない。日本バレーにおいては、速さを求めるあまり、アタッカーの持ち味が消えてしまうことが多々あるように見える。

出耒田選手は、「ファースト・テンポ(※2)のスパイクを打ち込みたい。こ
うした概念につ
いては理解しているつもりだし、印東監督も分かっている」と付け加えた。印東監督が就任し、堺ブレイザーズのバレーボールはどのように変わっていくのか。出耒田選手の目指す「高いクイック」が、堺を、そして全日本男子バレーのレベルをぐっと引き上げてくれると信じている。

※1 コミット
※2 ファースト・テンポ

その5に続く。



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