VolleIsm~バレイズム~

Volley+Ismの造語。日本国内、世界のバレーの魅力を発信します!(現在、書籍化計画の記事は非公開にしています)

2014/15 Vリーグ開幕記者会見 5

2014-11-05 | Vリーグ/国内大会

上尾メディックス 吉田 敏明 監督

今シーズン、初めてプレミアリーグに参戦する上尾メディックス。チャレンジマッチでJTを破り、プレミア昇格を決めたことは記憶に新しい。上尾メディックスのバレーを見ているうちに、吉田敏明監督がどのような指導をしているのか、目指すバレーボールはどのようなものなのか興味を抱いた。そんなとき、ブロガー記者としてVリーグ開幕記者会見に参加できることになったのだ。

記者会見後の囲み取材で吉田監督に近づき、「ブロガー記者の者です」と名乗ると、吉田監督は首を傾げた。V機構から募集があったことと、インターネットを利用してVリーグの魅力を発信するという趣旨を説明する。吉田監督はそういったものには疎いようで、「すいません」と苦笑い。

場が和んだところで、僕は「上尾メディックスは他のチームとは少し違ったバレーをしているような印象があって...」と話を切り出した。悪い意味ではなく、良い意味で。吉田監督は怪訝な顔をする。すぐにそれを弁明すると、吉田監督は少し穏やかな表情になった。

吉田監督に聞いてみたかったのは、上尾メディックスが目指すバレーボール、とりわけ、攻撃のコンセプトだ。

日本のバレーボール界では、セッターが中心となって速いトスを上げ、アタッカーがトスに合わせるという風潮が蔓延しているように思われる。例えばトスの軌道が低く、アタッカーが好きなように打てないトス。主導権を握っているのはアタッカーではなく、セッターであるという認識が幅を利かせている。

これについて、吉田監督に尋ねた。

吉田監督は頷き、「『速さ』と対になるのが『高さ』という言葉だと考える。(高さのある相手に対抗するために)トスを速く持っていけば、軌道が低くなることがある。そういったことを考慮し、アタッカーの能力を最大限に引き出すためにはどのようなトスがいいのか、考えながら調整している。アタッカーがセッターのトスに合わせるのではなく、セッターがアタッカーの入り具合などをしっかりと見て、打ちやすいトスを供給することが大切」と話した。

「今年の上尾は結構『はやい』攻撃をする。けれども、その『はやさ』は、各々のアタッカーに合ったものでなければならない。攻撃においては、あくまでアタッカーが中心。セッターが中心となって、闇雲にブンブン振り回すようなトスを上げろとは私は言わない。打ちやすいトスを上げるのは当たり前のことだが、『選手を活かす』ことが一番大切なことだと私は思う」

「アタッカー中心」というコンセプト。それはセッター近隣のスロット1やスロットA(※1)であろうと、セッターから離れたスロット5であろうと同じである。主導権を握っているのは、セッターではなくアタッカーであり、チーム全体にファースト・テンポのコンセプト(※2)が染み付いている。これが上尾バレーの攻撃におけるコンセプトなのだ。


またとない機会。この日の取材では、当たって砕けろと思い切った質問をした。ブロガー記者として会見に出席したが、全くの素人であることに変わりはない。吉田監督は「いやぁ~かなり専門的な質問だなぁと思いましたよ」と笑う。「いつ上尾のバレーに興味を持ったのか」といったことを逆質問され、僕は、今年4月のチャレンジマッチと答えた。

悲願のプレミア昇格を遂げ、歓喜に沸いたチャレンジマッチ。吉田監督は「あの時は本当によかった。チャレンジマッチはすごく大波小波で、ダメなセットは本当にダメだった。でも、しっかりゲームプランを練って練習してきたことが出せた」と振り返る。

今シーズン、上尾メディックス初となるプレミア挑戦が迫ってきた。開幕に向けては、「レフトの皆本明日香が膝の手術をして、開幕までには間に合うと思っていたが、ちょっと厳しそうで...これは誤算」と表情を曇らせた。

また、昨シーズン、上尾でプレーしたアメリカ人選手のナンシー・メトカフは現役を引退。今シーズンはメトカフと同じ、アメリカ人サウスポーのケリー・マーフィーが加入する。マーフィーは10月の世界選手権に出場し、アメリカ女子代表では三大大会初となる金メダルを獲得した。 

188cmの大型オポジットということで、マーフィーにトスが集まることが予想される。マーフィーがマークされ止められたとき、どのような対策を講じるのか、また出産を経て復帰した荒木絵里香選手が上尾のバレーにどのように溶けこんでいくのか、注目すべき点は多い。

最後に、アタッカーが中心とはいえ、そういった攻撃を繰り出す起点はセッターであることを忘れてはならない。キャプテンの土田望未選手は、どんな場面でも冷静に、アタッカーを活かそうと意識したトスを上げている。セッターの土田選手がいてこその上尾。プレミアリーグでも、その活躍に期待したい。


キャプテン、土田望未選手。丁寧なセットアップが持ち味


5分というあまりに短い時間だったが、非常に中身の濃い話を聞くことができた。いつか、攻撃面だけでなく守備面についても、吉田監督に話を聞いてみたい。

取材の終わりに、「上尾のバレーこそがVリーグ、全日本女子のバレーをさらに高いレベルへと引き上げてくれると思っています」と言うと、吉田監督は喜びを隠せない様子だった。お世辞ではなく、本心だ。今後のV・プレミアリーグ、全日本女子を引っ張っていくのは、上尾メディックスかもしれない。

 

※1 スロット
※2 ファースト・テンポ



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