VolleIsm~バレイズム~

Volley+Ismの造語。日本国内、世界のバレーの魅力を発信します!(現在、書籍化計画の記事は非公開にしています)

%%あとがき

2011-07-30 | Love Volleyball

   ここまで読んでいただき、ありがとうございます。最後にあとがきとして想いをまとめてみましたので、是非ご一読ください。

   前回、ブログを書籍化してからおよそ2年。今回の文章を執筆し始めたのは、2010年7月でした。最初に草稿を作成してから半年間、多忙で空白が続いて、気づけば2011年に入ってしまったのです。2011年2月に「執筆再開しよう!」と再始動。その動機となったのは、やはり2010世界バレーの全日本女子の銅メダル獲得という快挙でした。どの試合においても全日本は高い完成度を見せ、世界に誇れるバレーを展開しました。特に3位決定戦のアメリカ戦は、あとで何度見返しても未だに号泣してしまいます(笑)。それだけ全日本女子がくれた感動が大きいということでしょうか。決して諦めない気持ちも、勝って嬉しかった気持ちも、負けて悔しかった気持ちも、全部彼女たちがくれました。バレーボールとの出会い、全日本女子から受け取った感動、それらは17年間生きてきた中での、かけがえのない宝物です。

   そういったことから、自分がバレーボールと繋がった瞬間の一つひとつを、何一つ漏らすことなく書き留めておきたい、という想いが募りました。「バレーボールを観よう」と思って、意識的に観戦し始めたわけではありません。でもバレーボールとの出会いは、きっと必然だったと、今ではそう思えるのです。バレーボールを通じて、たくさんの方ともお友達になることができたし、個人的なテーマである「『バレーボールの輪』を広げること」さえもできました。再三、言及する「バレーボールの輪」ですが、それを広げたいと思う理由は、やはりたくさんの感動をくれた全日本女子に、何か恩返しがしたいと思うからです。たくさんの人にバレーボールの楽しさや魅力を知ってもらうことで、バレー人気にさらに火が付き、全日本女子がさらなる飛躍を遂げてくれることにつながるよう願っています。実際、学校の図書館司書の先生に頼んで、バレーボール関連の本を何冊か蔵書に入れてもらったりもしました(笑)。

  「バレーボールの輪を広げる」というのはとても簡単なことのように聞こえるかもしれませんが、それを実行することは決して容易ではありません。JVA(日本バレー協会)の方々をはじめとする大会運営関係者、さらにはこうした個人ブログ運営者など、たくさんの人の力があって初めてできることだと思うのです。だから皆さんも、よろしければお手伝いをしてください。バレーボールをじっくりと観たことがない方も、テレビでバレーボールが放送されていたら、少しだけでも観てみてください。きっと、そこから何か得られる感動、喜びがあるはずです。全日本女子には、万人を魅了し没頭させるような力が、確実にあります。

   本文途中にも書きましたが、バレーボールという競技には、こうした人と人とが「つながり合う」強大な力が内在しています。その力は、どんな他競技のそれにも劣っていません。執筆途中に読み終えた眞鍋監督の著書「精密力」の終わりにも、「つながり」という言葉が出てきました。自分が執筆中にその言葉を使ったときにはまだ気付いていませんでしたが、眞鍋監督も同様にその言葉の重要性を捉え、その本質を探求しようとしていたことがわかります。チームを銅メダル獲得に導いた監督がそう言うのですから、とても意味深ですよね(笑)。ファンと選手のつながりだけでなく、さまざまな面でとても密接につながり合えるスポーツ、それがバレーボールです。この文章を書いている今も、「バレーボールの輪」は着実に広がっています。まだ全世界という規模ではないかもしれませんが、それが世界中の隅々まで浸透し、地球の中心にまで突き入るような日がくるのも、決して遠くはないと信じています。長々と書いてきましたが、ここに記したことから、何か皆さんに伝わったことがあるでしょうか。少しでも想いが伝わっていたならば、これ以上のことはありません。

   今後も全日本女子を応援し続け、選手の笑顔を追い続け、「バレーボールの輪」を広げ続けたいと思っています。拙い文章だったと思いますが、最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。

2011年7月30日(土)

最後に、会場ギャラリーをお楽しみください!会場で観戦したことの無い方は是非(笑)。


会場では毎回、バボちゃんがお出迎え(ただし、フジテレビが放送担当の大会に限ります)。海外の選手にも大人気!
下の写真ですが、ポーランドチームのメンバーです(WGP2010表彰式にて)。全員が引き上げていく中、そんなことはおかまいなしに一人だけずっとバボちゃんと記念撮影している選手も!どの国の選手も必ずバボちゃんを知っています。美人選手たちに囲まれて、バボちゃんもさぞかし喜んでいることでしょう(笑)。


(上の写真)試合観戦の格好は、もちろん全日本ユニフォーム。2007年以降は毎回、この格好です!
 
(下の写真)WGP2010にて。一緒に観戦に行った友達に国旗をまとわせました!冷房が少し寒かったようで、国旗が毛布代わり。なんと豪華な毛布なんでしょうか(笑)。2008年からは試合前の国歌斉唱、試合中、試合後、いずれも国旗を振っています。テレビにも映ったことがあるので(隅にですが)、目を凝らして探してみてください(笑)。

   バレーボールの生観戦、きっと誰にでも楽しめるはずです。皆さん、是非会場へ足を運びましょう!!


「バレーボール」の存在

2011-07-29 | Love Volleyball

   先日、テノール歌手の新垣勉さんの講演を聴く機会がありました。実は中学校時代に英語の教科書で新垣さんについて読んだことがあり、新垣さんについて多少は知っていたのです。その講演の後半で、「新垣さんにとって音楽とはどのようなものであるか」という問いに対しての「自分も感動していないと、人を感動させることはできない」という信条を聴きました。そのときふと脳裏をよぎったのは、世界バレー2010での全日本女子の銅メダル。あの瞬間、当然のことながら選手たち自身も感動していた。―だから、自分たちファンも感動したのでしょうか。

   さらに、新垣さんの言葉から、自分にとってバレーボールとは何かということを改めて考えさせられました。それを考えてはみましたが、これといった答えには到達できません。一つだけ言えるのは、ここまで長々とお話ししてきたように、バレーボールが大好きだということ。もちろん、バレーボールなしでは、絶対に生きていけません(笑)。「日々がバレーボールの勉強」だからです。自分がバレーボールをするにしても、全日本女子の試合を観戦するにしても。これからの人生でも、頭の中をバレーボールが占める割合がどれほどになるのか、自分自身とても楽しみです(笑)。


7月末に発売されたDVDです。2010年の世界バレーで銅メダルを獲得するまでのさまざまなシーンを収録。これは皆さん、絶対に見るしかないでしょう!(笑)

   あっ、このあとの「あとがき」も、忘れずに読んでくださいね!(笑)


ケニアのバレーに学ぶ

2011-07-29 | Love Volleyball

●菅原貞敬氏と松平康隆氏の対談より
   月刊バレーボール(バレーボール専門誌)で菅原貞敬氏と松平康隆氏の対談記事を読み、いろいろと考えさせられることがありました。

   菅原氏は、1995年に初めてケニア女子代表監督に就任。その後日本国内の実業団チームの監督を経て、2000年に再びケニアの監督に就任し、同年のシドニーオリンピックではアフリカ勢で初のオリンピック出場を果たしました。その後2001~2005年はケニアチームから離れましたが、2006年の世界バレーでは三度目のケニア女子代表監督を務めた、国内外で監督を歴任するという国際経験を持つ人物です。

   松平氏は、かつて菅原氏と師弟関係にありました。1972年のミュンヘン五輪では、監督として全日本を率いて金メダルを獲得。また、1998年には日本人として初めてバレーボール殿堂入りを果たすなど、日本バレー界に多大な影響を与えた人物で、現在は日本バレーボール協会の名誉会長です。

   2003年にバレーボールの世界に首を突っ込んだ自分は、この中で知っていたのは当然2003年以降のことだけ。ケニア女子の監督をしていたのも2006年だけかと思い調べてみると、ずいぶんと昔からケニア女子代表とつながりがあったということを知って驚きました。ケニアでの指導中、選手とは英語の単語でコミュニケーションをとったのだそうです。この対談で菅原氏は、「ケニアの選手たちは、純粋で、素直、そして明るいです。貧乏だけど、今の日本にはない、素晴らしいものをたくさん持っている。わたし、よく怒るんですけれど、それでも素直に聞いてくれます。かわいいですよ。ですから、この子たちのために、一生懸命やらないといけないと思ってやっているわけです」と、ケニアの選手たちへの愛情を滲ませています。「言葉は通じないんですけれど、わたしの目と顔と、じっと見て、理解しようとしてくれるんですね」(月刊バレーボールより一部引用・抜粋)

   ケニアチームは、バレーボールができる喜びを体全体を使って表現をします。常に笑顔で、得点を決めれば飛び上がったり、逆立ちをしてみたり。―あくまでも主観ですが、これは日本にこそかすかに見られるものの、世界ランクが上のチームにはあまり見られることではありません。国柄ということも関係しているのかもしれませんが、それにしても素晴らしい精神です。ケニアの選手は全員が常に楽しそうにバレーをしていて、見ているほうも楽しくなるのです。似通った特徴を持つチームとして、タイが挙げられます。逆立ちすることはありませんが、常に笑顔で楽しそうにプレーしていて、このあたりが「微笑みの国」と言われる所以なのでしょうか。このような国を見ていると、観戦している人としてはとても嬉しくなるものなのです。

   2006年の世界バレーでケニア女子チームの中心選手だったのは、ナコミチャ・ダサバという選手。当時36歳でした。日本にも同じくらいの年齢の選手はいましたが、36歳でも現役を続けているのには畏敬の念を覚えました。翌2007年のワールドカップにも出場したケニアチームでも、もちろん中心選手はナコミチャ。やっぱりまだ現役を続けているんだ、と嬉しい気持ちになりました。また別の記事では、菅原氏からナコミチャについて「彼女には40歳まで現役を続けろといってあります」との言葉が。「菅原監督は私やケニアのバレー選手にとっては父のような存在。これだけ長くプレーできたのも彼のおかげ」とナコミチャが話していたように、どの選手からも慕われていたようです。

   世界バレー2010ではナコミチャの姿は見られませんでしたが、本当に40歳まで現役を続けてくれたのでしょうか。今それを知るよしはありませんが、ナコミチャがケニア女子を、菅原氏とともに引っ張ったことに変わりはありません。できることならいつか、再びこの目でナコミチャの豪快なプレーが見てみたいと思います。そして、ケニアチームがまた日本で大会に出場することがあれば、絶対に会場に行き、まるで自国のことにように大声で応援したいと思います。できれば日本戦ではない試合を(笑)。


●ケニアのバレーボールと世界のバレーボールの差異・問題点
   ケニアの選手のことが大好きで、現場が大好きな菅原氏。松平氏との対談の話題は、ケニアのバレーボールの現状、世界のバレーボールの現状に移っていきます。

   菅原氏によると、日本やロシア、中国などの世界トップクラスのチームは、体育館を自由に利用して練習することができます。しかしケニアチームはそれが満足にできるような状態ではありません。後に調べてわかったことですが、選手たちは貧しさゆえにシューズを持っておらず、外で、しかも「はだし」で練習することも多いそうです。そんな条件下にもかかわらず、選手たちは涙を流しながら練習についてきたそうです。それだけ懸命にバレーボールを追いかける彼女たちですが、しかし、ケニアのバレーを悩ませてきたのは設備の問題だけではなく、そのほかにも煩わしい難問が山積しています。

   例えば、選手たちの収入。ケニアでは実業団チームが4つあり、仮にその全てに所属できれば日当が450円、チームによっては300円ほど出ます。月20日ほど練習をするため、選手たちの月収はおよそ9000円。結婚して子供を持つ選手もとても多いので、生活のためにバレーをするという選手もいますが、それだけでは家族を養っていくことはとても困難です。対照的にケニアのサッカー選手は、日当だけで7000円ほど出ることがあり、2日間練習をすればバレーボール選手の月収を軽く超えてしまうのです。月収に換算するとバレーボール選手との差はさらに歴然。このような格差も、バレーボールがマイナーであるからだ、と松平氏は言います。


●日本国内に限ったバレーボールの現状
   ここからは日本のことに話が移りますが、バレーボールの世界ランキングは比較的高く、極端な言い方をすれば日本のナンバーワンスポーツと言っても過言ではありません。それにもかかわらず日本のメディアは、バレーボールのことなど、勝っても負けてもいい加減に取り上げます。「スポーツ番組」と題した番組でさえ、サッカーや野球に目をとられて、バレーボールへ向く目はごく僅か。根本から誤った報道の仕方をするメディアによってバレーボールが後退していく、という危険性が浮き彫りになってきています。このように、マジョリティにとっては有利に働き、その逆は後退の道をたどることになる―まさに現在のメディアの惨状を表しています。そのような状況では当然、子供たちの目はメジャーなスポーツであるサッカーや野球などを向き、「バレーボールをやってみたい」と思うことも少なくなっていくのではないか、と松平氏は危惧します。現在のメディアのやり方は、うわべでは「バレーボールを応援しよう!」と都合の良いことを言っておきながら、バレーボールの強化・発展を妨げるいちばんの要因となっているのです。 

   「バレーボールの国内リーグは『企業スポーツ』である」と思われているのが現状です。だから、「そのために出資をする価値があるのか」ということを懐疑的に捉えている企業がとても多いのです。そういったレッテルを剥がすために必要なのが「プロ化」。出資元となる企業に、リーグに参加するメリットがほとんどないので、近年の廃部率は加速度的に上昇しているのです。バレーボールという競技の奥ゆかしさを知らない、もしくはバレーボールの存在価値を見出せない人たちの考え方を、極端な言い方をすればメタフィジカルな観点から変えていかなければいけません。 バレーボールが、人々の心に感動をもたらすことができるような、計り知れない価値のあるスポーツだということを、人々の心の底に植え付けることが必要なのではないでしょうか。「バレーボールの『国内』発展」ということに限って言えば、これがもっとも手っ取り早い方法です。

   この大掛かりなプロジェクトを具現化する方法としては、最低でも日本チームの「メダル級の飛躍」が不可欠です。単純化して考えてみましょう。例えば、ある大会で日本が予選落ちする、もしくは、2010年世界バレーで銅メダルを獲得したように、どんな色でもいいからメダルを獲得する。もちろん後者のほうが、増加する「新規ファン」の数は多いはずです(ここで注意していただきたいのは、これはあくまでも単純化された一般的理論なのであって、確実性があるわけではありません)。しかし、現に自分がファンになった2003年も、メダル獲得ではないにしても、前年までの低迷から一気に返り咲いたときでした。

   2010年、全日本女子は32年ぶりの銅メダル獲得という大偉業を成し遂げました。この大会を観てファンになった方も、相当数おられるはずです。言うまでもないことですが、このように、ある国のスポーツの強さとその人気は、密接に関連しています。だから、全日本女子が大会で好成績を収めれば収めるほどファンは多くなり(=人気の上昇)、若年層でもバレーボールに手を出す人が増えていきます。それによって選手たちのポジション争奪戦が白熱していきます。選手たちは切磋琢磨し、各々の技術的、体力的な「質」が向上。さらに、そのことが総合的な実力の向上を手助けすることになります。ブラジルやドミニカ共和国がその先駆け。現在の世代の活躍が、次世代の選手の育成へと大回りで関連しているというわけです。


眞鍋政義監督のビジョン

2011-07-16 | Love Volleyball

●「大型化」と眞鍋政義監督の方向性
   日本チームは他国に対して身長が非常に低いのですが、中でもロシアと比較すると、平均身長の差は特に顕著に現れます。2009年のワールドグランプリでは、ロシアチームの平均身長が188センチ、日本が175センチ。13センチの差は、バレーボールに限らずどんなスポーツにおいても大きいですね。現在、日本のファンの中では、日本チームが高さのある相手に負けたとき、「高さにやられた」と言うのは、タブーとされていることがあるようです。なぜなら、日本は相手の高さに負けないようなスピード(速攻性)やレシーブ力(敏捷性)を持っているから。技術的にも海外勢には劣っておらず、むしろ日本の方が高いと言えます。でも自分の場合は、あえてその言葉を使うようにしています。ただし、その言葉の意味を総括的に肯定しているわけではなく、恣意的解釈で断片的に、です。冷静になって考えてみると、理論的にも物理的にも、その言葉の合理性がわかってくるはずです。

   自分たちのブロックよりもはるかに高いところからスパイクが飛んでくるわけです。ロシアのガモワは身長が202センチあるので、まともに勝負すればまず手が届きません。加えて外国人選手とのパワーの差を考慮すると、ダブルで劣っているのです。これだけの差があれば、「高さにやられた」というのも、物理的に見て仕方のないことのように思えます。もちろん、相手のスパイクを日本のブロックでシャットアウトしたりレシーブで上げたりできればそれが理想的ですが、そう簡単に言い切ってしまえるものではありません。だから、日本はずっと外国勢の高さに苦しんできたのです。身長の相対論については、さまざまな議論がなされていますが、眞鍋監督は日本チームの大型化には乗り気ではないようです。眞鍋監督は、著書「精密力」の中で、日本チームの大型化についてこのように言っています。

   『そもそも私がメダル獲得を目標に掲げているロンドン五輪に間に合うプランではありません。もし、高さを追求するなら10年、20年がかりの長期的視点で計画しなければなりませんし、遺伝学や優生学の範疇になる倫理的な問題もありそうで、果たして高さの面で世界と互角の水準になれるかというと、疑問に思えます。』(一部抜粋・引用)

   まさにこれが、日本チームが大型化しない理由です。眞鍋監督はこの後、身長の面であれこれ模索するのではなく、それ以外の日本の利点を活かせばよいのだ、とも言っています。すなわち、国民性や文化的な特徴をバレーボールに取り入れ、それを活かす。―韓国や中国などアジアのチームが大型化を推進していく風潮に逆行しつつも、技術やマネジメントの面で確実に世界の上を歩んでいるのです。眞鍋監督の就任以降、以前からあるこのような他国との歴然たる差異を埋めるために戦略を練り、構想し、高さあるチームに少しずつ対処できるようになってきました。その改革の途上でもある今、これを「タブー」などとして片付けるのは時期尚早。日本が目指すバレーシステムが確立されたとき、はじめて「高さにやられた」という言葉を「タブー」と呼べることになるのではないでしょうか。

   眞鍋監督の言う「日本人の特異性を活かす」こと。―もはや現代のバレーボール界では、技術の巧さやマネジメント力だけでは勝てないのかもしれません。いかに自国の特質を根本から理解し、活かしていくか。「肉体的」、「精神的」なトレーニングだけでなく「アイデンティティ」、すなわち素性、特性に、より磨きをかけていくことが求められているような気がします。



●「科学的戦略」の導入と未来の展望
   ご存じのように、眞鍋政義監督率いる全日本女子が目指すのは、「ロンドンオリンピックでのメダル獲得」です。これだけの目標の達成には困難がつきもの。戦略的なこと、精神的なこと、マネジメントと、執拗なまでにさまざまな問題がつきまといます。もちろん柳本監督時代もそうでしたが、眞鍋監督に代わってからは、既存の問題や新たに生じたあらゆる問題に、より建設的に対策を講じるようになってきています。戦略だけでは勝てないことを見越し、科学的な根拠を駆使して戦力に変えていたことも、眞鍋監督の著書から明らかになりました。監督が目指すことを端的に言い表すと、「俯瞰的な視野を身につける」ということかもしれません。アイデンティティを重視すると書いたとおり、技術だけでは勝てない現代のバレーボールで、世界に勝つためには何が必要か見極め、足りない部分をあの手この手で補おうとする―今、眞鍋監督を筆頭とする全日本女子が具現化しようとしているのは、単なる戦力の向上だけではありません。科学の力を借りて個々の能力を最大限まで引き出し、あらゆる面から戦力になりそうなものを引っ張り出す―さらにはそれらの正当性を立証して完全に戦力の一つとする、というたいへんな作業です。しかしそれが確立されれば、オリンピックでのメダルがほぼ手中に収まることになるはずです。

   今年2011年の秋、まずはそのオリンピック出場権をかけたワールドカップが日本で開催されます。皆さん、是非会場に足を運んで全日本女子を応援してください。皆さんの応援が、確実に全日本女子の力になります!

 




(上の写真)選手への指示は、熱意を込めて、的確に。
(下の写真)勝った試合後のインタビューでは、選手を褒めることを絶対に忘れません。このことからもマネジメントの巧さが伝わってきますね。ちなみにインタビュアーは、全日本女子の試合に感動して何度も号泣した、フジテレビの森昭一郎アナ。試合に感動して泣くところもそうですが、なんと誕生日も自分と同じなのです(笑)。