岩手の野づら

『みちのくの山野草』から引っ越し

当時の仏教界の様子を描く

2018-05-15 09:00:00 | 賢治と法華経
《『100分de名著『法華経』』(植木雅俊著、NHK出版)の表紙》

 さて、前回、『法華経』の構成は大体分かったのだが、その中身は実際にはどうなっているのだろうか。そのことを、テキストの著者植木氏は次に説明してゆくのだが、その最初の項が〝当時の仏教界の様子を描く〟であり、次のように書き起こしている。

 まず第一章「序品(じょぼん)」について、
 序品は次のような言葉で始まります。

 このように私は聞いた。ある時、世尊は、千二百人の男性出家者の大集団(比丘僧伽)とともに、王舎城の霊鷲山で過ごしておられた。

 仏教のあらゆる経典は、「このように私は聞いた(如是我聞)」で始まります。これは、釈尊が亡くなったあとの弟子たちが教えを確認しあう仏典結集行った際、釈尊に常に随行していた多聞第一の阿難が、まず「私はこのように聞きました」と切り出して、自分が覚えている釈尊の教えを語ったことから定着した形式です。
           〈『100分de名著『法華経』』(植木雅俊著、NHK出版)25p〉
という。そういえばどこかで「如是我聞」という四文字に出くわした記憶があるが、それはこんな意味だったのか。

 続いて同氏は、あらまし次のようなことを解説してくれる。
 この序品においては、続けて主な弟子たちの名前が、具体的には舎利佛、阿難などを始めとした沢山の参列者の名前が列挙されているという。
 さらに、それに続いて、六つの瑞相が出てくるのだそうだ。その最初が説法瑞であり、釈尊が『法華経』を説いたのだが、いきなりそのエッセンスを説いたものだから、参列者は理解できなかったようで釈尊は瞑想に入ってしまったという。これが入定瑞だという。
 そして次に雨華瑞(曼荼羅華などの花が天から降ってくる)、地動瑞(大地が振動する)、衆喜瑞(全ての人々が大いなる歓喜を得る)が起こり、最後に放光瑞(釈尊の眉間の巻き毛の塊から光が放たれ、当方の一万八千のブッダの国土を照らす)が起こったのだという。
           〈『100分de名著『法華経』』(植木雅俊著、NHK出版)26p~〉

 そして同氏は、この「序品」については
    『法華経』が編纂された当時の仏教界の現状を要約したものであると解釈すればよいでしょう。
と自身の見解を述べていた。

 続けて植木氏は先の「六つの瑞相」に関連して、〝『法華経』を聞く心構えができる〟という項を設けて解説しているのだが、要はこの六つの瑞相に驚くことにより、逆に、『法華経』の教えを聞く心構えが参列者の間にでき上がったのだそうだ。

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