岩手の野づら

『みちのくの山野草』から引っ越し

『法華経』の構成

2018-05-11 09:00:00 | 賢治と法華経
《『100分de名著『法華経』』(植木雅俊著、NHK出版)の表紙》

 さて、ではそもそも、『法華経』とはどんな中身から成り立っているのだろうか。
 同テキストで植木氏は次のように紹介していた。
 『法華経』は釈尊滅後五百年頃編纂されたものですが、釈尊が弟子に教えを説いて聞かせるという体裁をとっています。…(投稿者略)…釈尊が教えを説いた場所は、はじめは霊鷲山という山です。これは実際にインドにある低い山です。第十一章から空中(虚空)に移り、最後にまた霊鷲山に戻ってきます。
             〈『100分de名著『法華経』』(植木雅俊著、NHK出版)22p~〉
そうか、お釈迦さんは空中でも教えを説いていたのか。すごいもんだ。ではその実際の項目だが、サンスクリット原典(ケルン・南条本)によればその構成は以下の通りだという。
 
  法華経の構成
説所 霊鷲山
 第一章 序(序品第一、以下、括弧内は漢訳の場合の呼び方である)
 第二章 巧みなる方便(方便品第二)
 第三章 譬喩(比喩品第三)
 第四章 信頼の志(信解品第四)
 第五章 薬草(薬草喩品第五)
 第六章 予言(授記品第六)
 第七章 過去との結びつき(化城喩品第七)
 第八章 五百人の男性出家者たちへの予言(五百弟子受記品大八)
 第九章 アーナンダとラーフス、そのほか二千人の男性出家者への予言(授学無学人記品第九)
 第十章 説法者(法師品第十)
 
説所 虚空
 第十一章 ストゥーパの出現(見宝塔品第十一)
  〃   ストゥーパの出現=続き(提婆達多品第十二)
 第十二章 果敢なる努力(勧持品第十三)
 第十三章 安楽の住所(安楽行品第十四)
 第十四章 大地の裂け目からの菩薩の出現(従地涌出品第十五)
 第十五章 如来の寿命の長さ(如来寿量品第十六)
 第十六章 福徳の分別(分別功徳品第十七)
 第十七章 喜んで受け容れることの福徳の表明(随喜功徳品第十八)
 第十八章 説法者に対する賛嘆(法師功徳品第十九)
 第十九章 常に軽んじない菩薩(常不軽菩薩品二十)
 第二十章 如来の神力の顕現(如来神力品第二十一)
 第二十一章 ダーラニー(陀羅尼品第二十六)
 第二十二章 〝薬の王〟の過去との結びつき(薬王菩薩本事品第二十三)
 第二十三章 明瞭で流暢に話す声を持つもの(妙音菩薩品第二十四)
 第二十四章 あらゆる方向に顔を向けた〝自在に観るもの〟の神変についての教説(観世音菩薩普門品第二十五)
 第二十五章 〝美しく荘厳された王〟の過去との結びつき(妙荘厳王本事品第二十七)
 第二十六章 〝普く祝福されている人〟による鼓舞(普賢菩薩勧発品第二十八)


説所 霊鷲山
 第二十七章 付属(嘱累品第二十二)
             〈『100分de名著『法華経』』(植木雅俊著、NHK出版)23p〉
 つまり、サンスクリット原典では27章の構成になっているのだそうだ。また、橙色文字の部分は「後世に付け足された章であり、追加された後半の六つの章は、『法華経』本来の内容とは異質のもので、庶民受けを狙って、現世利益や神がかり的な救済が説かれている」とのことである。
 よく賢治絡みで「不軽菩薩」という菩薩が登場するが、これはこの「第十九章 常に軽んじない菩薩(常不軽菩薩品二十)」のことのようだ。

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