すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

小説「マリアの微笑み」②

2005年04月04日 | 小説「マリアの微笑み」
 「私たちが、以前ここに来たのはいつだったかしら。もうかれこれ半年は経つわね。・・・あの頃は幸せだったわ。彼、元々無口な方なのに加えて、照れて何にもしゃべんなくて。私ばっかり、2人分しっかりしゃべりまくってたっけ。うふふっ。でもね、あの後、帰り道で彼ったら、嬉しそうに、『君の親友に反対されなくて良かった。』って。それはもう上機嫌だったのよ。私ね、その時すかさず、どっか旅行に行きたい、っておねだりしたの。そしたら、『海外に行こうか。』って。私が、ハワイがいいっ!って言ったら、いきなり肩を抱いて、結婚しよう、って。息が止まるくらい長く、私たち、キスしてたわ―――。

 1週間のハワイ旅行が、あんなにも短く、あんなにも豪華に、そしてあんなにも夢見心地になるなんて思ってもみなかった。浜辺で肌を焼いたり、ドライブしたり、ショッピングに、パーティ。・・・どこに居ても、どんなに多くの人が周りに居ても、私たちはいつも2人きりだった。
 
 私たちね、ある時、郊外の小さな村に行ったの。別に最初から行こうって決めてた訳じゃなかったわ。車であちこち流しているうちに、なんとなく惹きつけられるようにたどり着いたの。とても静かな所でね。今考えると不思議だけど、人が居ないのよ。行けども行けども人に会わない。・・・誰にもよ。誰にも。

(つづく)

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