すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

小説「マリアの微笑み」⑤

2005年04月11日 | 小説「マリアの微笑み」
 元はと言えば、私が悪いのよ。私があの時、ハワイに行きたいなんて言わなければ、私たちがあの像に出会うことはなかったのよ。・・・いいえ、ハワイに足を踏み入れることさえ無かったはずよ。でも、もうあの時には、それも手遅れだったのよ。
 
 その日の夜、恐ろしいことが起こったわ。私たち、その日は早めに床に就いたの。彼は、かなり疲れたみたいで、すぐに寝息を立て始めたわ。私も、彼のその子供みたいな寝顔を見つめながら、いつしか眠ってしまったの。そして、しばらくして目が覚めたわ。寝苦しくて、暑くもないのに汗をかいてた。そして、金縛りに遭ったの。金縛り自体は初めてじゃなかったけど、この日の一連の不安が、瞬間的に脳裏をかすめて、すごく怖かったの。でも、私の手と30cmと離れてない所にいる彼を、揺すって起こすことさえできないのよ。
 私は必死で祈ったわ。この金縛りが、ただの金縛りだけで終わってくれるのをね。でもね、・・・ダメだった。何か、体の上に圧し掛かってきたような感じがして、息ができなくなったの。それでも必死で、動かない腕で彼の腕をつかもうとしてた。私が感じている恐怖と苦しみを、彼だって、感じてないわけはなかった。でも彼は、眠ったまま、一度も目を開かなかったわ。寝返りさえ打つことは無かったのよ。
 
 私は、足元から寒気を感じたわ。足元から、どんどん冷たい空気が頭の方に昇って来て。・・・同時に、上に圧し掛かっているものが、どんどん重くなってきて。霊気のようなものが体全体を包み込んだ時、・・・私、見たのよ。彼の体の上に、女の人が乗っかっているのを。


(つづく)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東京の桜 | トップ | 寝不足です »

コメントを投稿