でも、その時には私たち、全然、気にもかけなかったわ。私たちね、遠くに教会の十字架を見つけて、そこを目指して歩いたわ。私ね、そのうちに、足をくじいちゃって、その弾みで、ネックレスが切れてしまったの。その時も、彼は、ネックレスを拾って、優しく私の手のひらに乗せて、私の目の前で“おんぶ”の格好をしてくれた。私、ちょっと照れくさかったけど、でも、ドキドキしながらも彼の背中に甘えちゃったわ。
やがて、教会に着くと、彼は私をゆっくりと降ろして、私の方に振り向いたかと思うと、私が何も言わないうちに、『中に入って休もう』って言ったわ。まるで、・・・そうしなければならないと台本にでも書いてあるかのようにね。一瞬、戸惑ったけど、彼に腕を引っ張られて、一緒に扉をゆっくりと押したの。
私ね、その時、もしかしたらこの扉を開けちゃいけないんじゃないか、って思ったような気がするわ。でも、そんな不安はすぐに消えちゃったわ。だって、そんなこと、疑う理由が無いもの。それに、耳元で、『ねぇ、今ここで、2人だけの式を挙げようよ』って言う彼の囁き声が聞こえて来たんですもの。私はまるで、ウェディングドレスを着ているような錯覚に囚われて、なんとなく厳粛な足取りになったわ。彼と腕を組んで、ゆっくりと正面に歩いて行ったの。
正面には、真っ白なマリア様の像があったわ。その像ってね、・・・怖いっていうか、なんか、悲しそうなのよ。私がジッと見ていると、彼が、呟くようにこう言ったわ。
(つづく)
やがて、教会に着くと、彼は私をゆっくりと降ろして、私の方に振り向いたかと思うと、私が何も言わないうちに、『中に入って休もう』って言ったわ。まるで、・・・そうしなければならないと台本にでも書いてあるかのようにね。一瞬、戸惑ったけど、彼に腕を引っ張られて、一緒に扉をゆっくりと押したの。
私ね、その時、もしかしたらこの扉を開けちゃいけないんじゃないか、って思ったような気がするわ。でも、そんな不安はすぐに消えちゃったわ。だって、そんなこと、疑う理由が無いもの。それに、耳元で、『ねぇ、今ここで、2人だけの式を挙げようよ』って言う彼の囁き声が聞こえて来たんですもの。私はまるで、ウェディングドレスを着ているような錯覚に囚われて、なんとなく厳粛な足取りになったわ。彼と腕を組んで、ゆっくりと正面に歩いて行ったの。
正面には、真っ白なマリア様の像があったわ。その像ってね、・・・怖いっていうか、なんか、悲しそうなのよ。私がジッと見ていると、彼が、呟くようにこう言ったわ。
(つづく)
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