すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

フィクションです。

2006年06月10日 | ちょっとしたこと
昨日の夜は、なかなか寝付けなかった。

ふとんに入って30分以上も眠れず、目が冴えていたところに、携帯が鳴った。

A子からだ。

私は1週間前、A子と、A子の友人のB子の3人で食事をした。私はB子と初めて会った。A子は私と同年代だが、B子は、まだ今年高校を卒業したばかりで、A子とは幼い頃から姉妹のように一緒に過ごした仲らしい。B子は、初対面で年上の私に動じることはなく、自分のことを私にアピールするように、話し続けた。私は普段も、聞き役のことが多く、彼女のように、話が止まらないタイプの相手をするのは、苦ではなかった。彼女が、今の職場でどれほど先輩にいじめられているか、先輩がどれほど意地悪な人間かを訴え続け、私は、彼女が水を飲んで話が止まる時を縫うように、相づちを打ち続けた。そして、私は、彼女が私に、「B子ちゃん、そんなにひどい目に遭って、かわいそうだね。」という同情の言葉を言ってもらいたがっているということに気づき、その言葉だけは言ってはいけない、と感じた。その店に入ってから2時間が過ぎた頃、まだ話し足りないB子を、A子が制してくれ、その場はお開きとなった。私は別れ際、B子と携帯番号とメールアドレスを交換し、駐車場に止めていた自分の車で自宅に戻った。B子は、最後まで笑顔で私に手を振り続け、私の車の隣に止まっていたA子の車の助手席に乗り込んだ。
 自宅に戻ってシャワーを浴び、居間のテレビをつけようとしたとき、テーブルの上に置いていた携帯が、メールの着信を知らせた。B子からだった。今日はありがとう、楽しかった、また一緒にご飯を食べましょう、というありがちな社交辞令に、私も、また誘ってね、とありがちな言葉で返した。が、私は何かひっかかるところがあり、A子に電話をかけた。私は、A子が帰宅したことを確認すると、B子ちゃんのことなんだけど、とA子の言葉を待った。A子は、私の意図を理解したのか、ごめんね、と言った。

「彼女、ちょっと鬱病で通院しててね、今日は私も久しぶりに会って、気分転換に食事に連れ出したんだけど。久々だったのと、あなたが辛抱強く彼女の話を聞いてくれてたので、彼女、かなりハイテンションだったみたい。・・・職場の話?あぁ、あれね。大筋はだいたいあんな感じなんだけど、一方的にいじめられてるんじゃなくて、彼女もよく仕事を無断欠勤するし、何度も「仕事辞める」って職場の人を心配させて気を引こうとするから、職場の人も大変みたい。私もひどい時は、1日に何十回も電話やメールが来るけど、返事できないときはできない、って伝えるし、叱るときは叱るようにしてるんだ。」

私は、A子と話したことで、大部分の不安が解消されたような気がしていた。が、ずっと聞き役だったのに自分がとても疲れている気がして、私はその電話のあと、すぐにふとんに入った。

次の日、いつもの癖で、私は起きてすぐに携帯を確認した。・・・信じられない。電話の着信が5件、メールの受信が11件。その全てがB子からだった。無言のまま切れる留守電が5件、メールの内容は、「電話かけていいですか?」「仕事がんばろうと思ったけどやっぱりダメみたい。」「何もやる気がしない。」「どうしたら良い?」「ねぇ、電話しちゃダメ?」・・・こんな感じだった。

それから、毎日、時間を問わず、B子からの電話とメールは続いたが、私は一度も電話には出なかった。数回、来たメールに対して、今仕事中だからメールできない、と釘を刺しただけで、仕事のあとに自分から連絡を取ることもしなかった。B子の「目新しいもの」に対する興味を冷ますためには、無視するのが一番と思ったし、正直に言うと、面倒なことに関わりたくなかったのだ。このまま関わらなければ、そのうちフェードアウトするだろう、いやそうしてほしいと願っていた。それから1週間、B子のメールと電話は毎日続き、途切れることは無かった。残業で疲れているのに、寝る前に、数十件のB子からの着信履歴と受信メールを1件1件消していく、それだけで疲労が倍増した。

そして私はとうとうこの日、この状態をA子に愚痴ろうと電話したが、A子は電話に出ず、留守電に、B子のことで話したい、とだけ入れて電話を切った。唯一の吐け口だったA子と繋がれなかったことで私はもうなにもする気が無くなり、寝ることにした。しかし、傾れ込むようにふとんに入ったにも関わらず、目が冴え、なぜかB子と初めて会った時のことを思い返していた。・・・あの時会ってさえいなかったらこんな嫌な目に遭わなかったのに。そう思いながら、ようやく意識が遠のくかという時に、電話がなった。着信音でA子とわかったが、起き上がることができず、腕を思い切り伸ばして携帯をわしづかみにし、携帯に出た。どうしたの、大丈夫?と私の言葉を待つA子に、私はB子のしつこい電話とメールで困っている、とこの1週間B子が送ってきたメールの文章を伝えながら、最後には、どうしたら収まるのか、A子に答えを求めた。A子は沈黙したが、そんなこと言われても私だってわからないよ、という言葉を飲み込んでいるのは明らかだった。そしてその代わりに、今から家に行こうか、とA子はつぶやいた。A子にだって、そのくらいしかできることは無い、というのはわかっていたし、そんなふうにA子を私までが困らせても何の意味も無い。ごめん、そんなふうに困らせるつもりは無いんだけど・・・と言って携帯を左手に持ち替えようとした瞬間、私は突然体が動かなくなった。金縛りだ。意識ははっきりしているのに、体が動かず、声が出ない。A子は、私がそんなことになっているのも知らず、一方的に話していたが、私からの返事が無いのに気づき、不審に感じ始めていた。

誰かいる。

ベッドの右の壁側を向いて電話をしていた私の背後に、誰かの気配を感じた。その気配は、少しずつ近づき、ベッドに上がってきて、一瞬動きが止まったと思ったら、突然、すごい力で私の首を絞めた。その力は、私が屈するほどの力だったが、首を絞めている手は、驚くほど華奢だった。

腕が動かず、首にかかっている何者かの腕を振り払うことができない私は、視線だけを肩越しに思いっきり後ろに向けた。だめだ、まだ顔は見えない。首にかかる力が強くなった。だめだ、だめだ。こんなことがあっていいのか。私が何をした?自分の電話やメールが私に無視されたから殺しに来たのか?信じられない。そんなことで死ぬなんて。信じられない。そんな奴に・・・殺されるなんて・・・あってたまるかっ!私は最後の力を振り絞って、後ろを振り向いた・・・!











・・・というところで目が覚めました。
あ~~~~、恐かった~~~


コメント (2)
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