諸事情により、ちょっとだけ修正しました。再アップまで大変お待たせしてしまってすみませんでした;;
「スザク…痛くないか?大丈夫か?」
俺は寝込んでるスザクの手をぎゅうっと握って、もう何度目かにわからない問いかけをしてしまう。
「大丈夫、昼間より痛くないからさ。ルルももう寝たほうが良いよ」
痛くないはずないのに、やっぱりスザクは同じように大丈夫だと優しく言葉を返す。
気にしないで良いと言うように、スザクの手が俺に伸びて、ぽんぽんって頭を撫でてくれる。
それに俺はふるふると首を横に振った。
「みんな今日は僕も寝ないで、スザクについてて良いって言ってくれてる。だから今日は起きてる」
「せめて、布団引いたほうが良いよ。それにやっぱり寝た方が良いと思うんだ」
「じゃあ、寝ても良いけど…いつも隣に布団引いて寝てるから、今日はもっと近くで寝る。スザクと一緒に寝るんだ」
布団に横たわれるスザクの横に、ころんと俺も横になって、スザクの腕に手を回して、もっと傍に寄る。
その隣で、スザクが唾を飲み込んだのがわかった。
「別々の布団で寝るのはいつも通りだから良いんだけど…こうやってくっつかれちゃうと…」
「くっつかれちゃうと何だよ?」
もぞもぞとスザクにもっと密着して、今度は首に腕を回した。
いつも二人でくっついたりしてるから、こういうのも今更だけど、夜にこうしてくっついたのは始めてかもしれない。
「このままだと昼間言ってた、続きをするから。だから嫌だったら離れた方が良いよ」
「続き?」
「そう」
スザクの空気が少し変わった気がした。
いつもの優しい感じじゃなくて…上手に言えないけど…男の子みたいって言うか…何て言うか…。
「だって、そんなのこと言わないでも、続きするって言ってじゃないか」
「あ、あの時はつい言ったけど、ルルが嫌なら本気でしないよ。でも、このままだと…」
「僕は、別に良いけど…」
スザクがそれで良いなら良いって思ったんだ。
この時、キスより先のことなんてまったくわからなかったけど、スザクがすることに怖いなんて思わない。
絶対に、そんなことないんだ。
「ルルーシュ…」
スザクの手が俺の顎に伸びてきて、顔が引き寄せられる。
そのまま、何度も何度も軽くキスを繰り返させられる。
頭がぼーとしてきて、何だかふわふわとしてくる。
心臓がすごいドキドキして、胸が痛い。
「ルル…すごいドキドキしてる」
スザクの手が、俺の胸に乗せられて、ドキドキしてるのが口に出して言われてしまう。
「そ、そんなこと言ったら嫌だ…」
「でも、すごいドキドキしてて…可愛いなって思う」
可愛い、と耳元で呟かれて、耳元にかかったスザクの息がすごい熱い。
もっと、もっとドキドキしてきて、パンクしてしまいそうだ。
またキスされて、その間に胸に置かれた手がやんわりと動き出して、なななな、何て言うか…も、揉まれてるって言うか…。
こ、こんなことまでするのかと思って、でも恥ずかしいけど、怖いなんてことはなくて。
頭がぐるぐるしている横で、スザクの手と口が離れて、ごめん!って声が上がった。
「え?」
「ルルは女の子だし…その、とにかくごめん!」
「ごめんって…よくわからないけどさ…スザクなら良いけど…」
「でも、俺がルルを大事にしたいんだ。だから、今日は我慢する。続きは大人になってから!」
スザクにぐいって引き寄せられて、ぎゅうっと抱き締められる。
やっぱり良くわからないけど、大事にしてくれてるって言うのはわかった。
スザクの言葉は、まっすぐで、俺が大好きって気持ちがたくさん伝わってきたから。
守るみたいに、ぎゅうっとスザクは俺を抱き締めてくれてる。
「大人になってからってことは、それまでスザクは僕と一緒にいてくれるってこと?」
「うん。当たり前だよ。ルルとずっと一緒にいる。大きくなったら結婚しよう。ルルは俺と結婚してくれる?」
「結婚する!」
俺は即答だった。
だって大好きなスザクに結婚しようって言われたら、そんなの当たり前じゃないか。
「じゃあ、約束の印」
ふんわりと唇に約束の証のキスをされて、何だか照れくさくて。
何だかすごく幸せな気持ちで、俺はぎゅっとスザクに腕を回して、目を閉じた。
それから一年くらい楽しい時を過ごしてまた夏を迎えて、父上が俺に会いに来た。
忙しいはずなのに、可愛い娘に会いたかったからだって。
仕事はどうした、仕事はどうしたんだって言ってやりたかったけど、それを言わないのはせめてもの娘心だった。
「随分と明るくなったものだ」
父上が俺を抱き上げて、何だかとても嬉しそうに笑い声を上げる。
珍しいくらいに嬉しいそうな声に、俺も不思議だった。
「ここは楽しいか?」
「はい!スザクもナナリーも遊んでくれるし、すごい楽しいです!」
「そうか、そうか。だからこんなにお前は幸せそうなのだな」
感慨深そうな父上の声。
俺が楽しそうなのが本当に嬉しく思ってくれてるんだ。
この時、だったらもっと喜ばせてやっても良いかなって思ったんだ。
将来結婚したい人も出来たんだよって。
「父上、僕、父上に大事なお知らせがあるんです」
「ん?何だ?そんな嬉しそうな顔をして。何か良い事か?」
「はい!僕、結婚したい人が出来ました!結婚の約束もしたんですよ」
そうしたら、一気に父上の空気が凍ったような気がした。
良い知らせなんだから、気のせい??のはずだよな。
「だ、誰なんだ、そいつは」
勤めて声を荒げないようにしているのが、何となくわかる。
い、言ったらまずかったんだろうか…。
でも、この時は、相手がスザクだってわかってもらえたら、きっと喜んでもらえるはずなんだ、と思った。
相手は、枢木首相の息子なんだし。
あとから、それはとてもいけないことだったんだ、とわかったのだけど。
「枢木スザクです。枢木首相のご子息ですよ」
「何だとーーーー!!!私は、お前にそんなことをさせるためにここへ預けたのではない!!!」
抑えていた何かを解放するような大声で、父上が捲くし立てる。
その後は、大人たちの何か騒ぐ声と、父上の金きり声と、たくさん騒がしかった。
その後、両家で色々と話あったらしく、大げさなことに戦争間際までなったらしいけど、とりあえずそれは回避されたらしいからとても安心したのは今でも覚えている。
親馬鹿にもほどがあるって感じだ。
でもその話し合いの間、幸いブリタニアには連れて帰られなかったが、スザクにずっと会えなかった。
俺は枢木家の客室に閉じ込められる形で、部屋から出ようとしても、誰かに止められてスザクに会いにいけない。
スザクが今どうしているか話に聞いたら、何だか神社の座敷牢に閉じ込められてるって聞いた。
普通は俺の方がそこへいられるのが当然なのに、スザクが俺に手を出したとかそんな感じで、罰として閉じ込められてしまったらしい。
明日には、俺はブリタニアへ連れ戻される。
このままだとスザクに会えなくなる。
そう思ったら泣いてしまいそうだったけど、俺はぐっと堪えた。
泣くのなんて我慢しろ、閉じ込められているスザクの方が大変なんだから。
会えないなら会いに行けば良いんだ。
どうにかすればきっと会えるはずなんだ。
別れの挨拶も出来ないまま、別れることになるなんて、そんなの、絶対に、絶対に、絶対に、嫌だった。
ちゃんと挨拶したいし、俺はまたここに戻ってくることをスザクに絶対に伝えたかった。
時間がかかっても、絶対にスザクに会いに戻ってくるんだ。
だから、みんなが寝静まる頃を俺はじっと待った。
時間はわからなかったけど、大体感覚的にみんなが寝ているのかとかわかる。
そっと部屋から出ると、幸い見張りも寝てしまっているらしく、誰かいる気配もなかった。
こんな遅くに子供が起きてくるはずないと思ったんだろう。
俺は、ナナリーに聞いた座敷牢までの道を頭の中で思い出す。
きっと、行ける。
見えないとかそんなの関係ない。
スザクに会いたい気持ちがあったら、同じ敷地内にある場所くらいなんてことない。
そっと、俺は障子を開いて、足音を立てないように縁側まで歩く。
夜の外気に浴衣一枚の俺は少し寒くて、身震いをしてしまうけど、我慢我慢だ。
縁側まで来て、靴がないことに気が付く。
でも、そんなの気にしていられないから、俺は裸足のまま駆け出した。
下は砂利道で、途中で段々足の裏が痛くなって、熱を帯びてくる。
普段裸足で走ったりしないから、砂利道で足が切れたのかもしれない。
走っていても、歩いていても痛いけど…こんなのスザクに会えるなら我慢出来る。
そして、途端に何か躓いて足がもつれて顔から転んでしまう。
鼻の頭も頬も顔中が痛くて、膝がじくじくして痛くて、足の裏も痛い。
こんな時、スザクがいたらきっと背負ってくれてた。
でも、スザクは俺のせいで閉じ込められているんだ。
だから、俺から会いに行かないといけないって思ったんだ。
絶対に絶対に会いに行くって思った。
スザクに会いに行くって。
痛い足に叱咤して、俺は立ち上がって、また道を頭の中で思い出す。
確かこの砂利道を抜けたら…もうすぐなはずだ。
こんな時、うぬぼれじゃ無いけど、自分の頭がそれなりに出来る頭で良かったと思う。
目が見えなくても、地図を頭の中でシュミレートしてスザクにところへといけるのだから。
それから頭の中で地図を思い出しながら、走って、走って、走って。
何とか座敷牢へと行く事が出来た。
座敷牢らしいところに着くと、がんがんと何かを殴るような大きな音と、悔しそうな声を上げるスザクの声が耳に入ってきた。
やっぱりここにスザクがいるんだ、と俺は大好きな彼の名前を声を張り上げて呼んだ。 「スザク!」
「ルル!」
スザクから俺の名前を呼ぶ返事が返って来た!
駆け出して、また顔から転んでしまったけど、嬉しさから顔を綻ばせながら俺は立ち上がった。
痛みより、スザクに会えた嬉しさの方がもっともっと大きかったから。
「ルル、大丈夫か!?」
「大丈夫だよ、ちょっと転んだだけ」
本当はここまで来た足の裏も顔も膝も全部痛かったけど、そんなのはスザクに会えて全部吹き飛んでしまった。
スザクの声のする方へと転ばないように、今度はゆっくり歩いていくと、手に木の囲いみたいな物が当たる。
座敷牢だけあって、外に逃げられないようにされている囲いだ。
でも、隙間はやっぱりあるから、その中へと手を伸ばして、俺はスザクを探した。
そうすると、スザクの手が俺の手へと伸びてきて、ぎゅうっと握ってくれたんだ。
スザクがいる。
そう思ったら、ずっと我慢していた涙がぽろぽろと零れてきた。
明日になったらスザクと別れ別れになってしまう。
だから、またここに戻ってくるからって伝えようと思っていたのに、後から後から口から零れるのは泣き声だけだった。
ちゃんと言葉にしないといけないのに。
どうして言葉は出てきてくれないんだろう。
そうすると、手を引かれて、スザクの手が俺の頭に伸びてきて、宥めるように何度も何度も撫でてくれる。
「ちょっと待って」
「う、ん…?」
布を裂くような音がして、怪我を膝や足の裏に何かを巻かれていく。
自分の服を裂いて、どうやらスザクは応急処置してくれたみたいだった。
「ごめんな、こんな応急処置しか出来なくて…今ここに何もないからさ。この傷も俺のせいだ。ルルは女の子なのに…」
「そ、そんなの…良い…!スザクに、会え、会えたから…」
しゃくり上げながら、俺は上手に出ない言葉を紡ぐ。
痛かったけど、スザクに会えた事で、そんなのはどうでも良いと思ったんだ。
「こんなにたくさん怪我するまで、浴衣がすごい汚れるまで頑張って、会いに来てくれたんだ」
スザクがいつも着ている着物の袖でも使ってくれているんだろうか、じくじく痛む怪我した頬の血を拭ってくれる。
俺はこくんこくんと止まらない涙で濡れた顔で、何度も何度も頷いた。
スザクに絶対に絶対に会いたかったんだ。
「ここまで来るのに大変だったよな。有難う、ルル」
「大、変、なんかじゃない」
ふるふると首を横に振りながら、しゃくり上げながら、答える。
スザクに会えるなら大変だなんて絶対に思わない。
「本当に有難う、ルル。あのさ、もっと顔を見せて。ここ、少しだけ月明かりが入るから暗くても見えるんだ。だから見せて」
こくこくと頷いて、頬に添えられた手に誘われるまま、俺は顔を寄せる。
ふわりとキスされて、また泣いてしまいそうだった。
こうしてスザクと一緒にいられるようになるのも、後ちょっとだけなんだ。
それなのに、それなのに、どうして俺は今も目が見えないんだろう。
お別れを言うだけじゃ、また会いに来るって言うだけじゃ、嫌なんだ。
最後に、せめて、最後にスザクの顔が見たいんだ。
どうして、俺の目は見えないだろう。
どうして、世界を怖がって、光が戻らないだろう。
俺の、いくじなしのいらない嫌な目は、どうして大好きなスザクの顔さえ映してくれないだろう。
「スザク…僕、スザクの顔が見たい」
「ルル…」
「どうして、どうして、こんな時もスザクの顔が見えないんだろう。こんな時くらい見たいのに」
俺の声は泣き声を零すけど、瞳は涙を零すけど、見える事がない。
何ていらない目だろう。
「こ、こんな時も見えない目なんていらない…」
「そんなこと言わないで。俺は、ルルの紫色の綺麗な目が好きだよ。それに…昔、怖い事があったから見えなくなったって教えてくれたじゃないか…だから無理することないんだ」
「スザク…」
スザクは優しいけど、優しすぎるけど、気遣ってくれるけど、でも絶対に今スザクの顔を見たいんだ。
神様、今ならきっと世界に色がついても怖くない。
これから何かを見て、怖いって思っても、あの頃みたいに逃げ出したりしないから。
だから、お願いだから、見せて。
スザクの顔を見せてほしいんだ。
大好きな人の顔を見たいんだ。
「スザクの顔が見たいんだ」
ぎゅうっと目を閉じた俺の唇にまたスザクが唇を合わせる。
無理しなくて良いんだよって慰めるみたいに、そっと優しく。
でも、絶対に絶対に嫌だ、嫌だ、嫌だ!
スザクの顔が見たいんだ!
唇が離れて、そっと瞳を開くと、そこはやっぱり暗かったけど…。
少しだけ光が入ってきてるのがわかった。
それはスザクが言っていた月明りで。
目の前には、俺をまっすぐに見えてくれる優しい瞳を持った俺と同じくらいの歳の男の子が立っていた。
ふわふわのくせっ毛に、深い深い緑の瞳…手を伸ばして顔に触れてみると、触れた感覚はスザクと一緒だった。
嬉しくて、幸せで、胸が弾んで、俺の顔がぱっと笑顔で満開になっていくのが自分でもわかった。
「目が…見える…」
「え…」
「スザク!僕、目が見えるよ!スザクの顔を見たいって思ったら見えた!」
「本当に!?」
「うん!」
スザクの手をぎゅっと握って、俺は飛び跳ねた。
お別れをする前に大好きな顔を見れるなんて、とてもとても嬉しかった。
「あ…スザクの手…怪我してる…」
握ったスザクの手は、とても擦り切れていて、血が滲み、腫れ上がっていた。
見ているだけでも、痛々しい怪我だった。
「あーさっき、ここから出ないかなって思って…何度も叩いてたからさ…明日になる前にルルに会いたかったから…」
スザクは、気まずそうに苦笑して、頬をかいた。
久しぶりに怪我と言うものを見たけど、気持ち悪いなんて思わなかった。
真っ赤な世界が怖くて怖くて、目が見えなくなってしまった俺だったけれど、スザクが俺のために怪我をしたのだと思うと、怖いなんて感じなくて。
愛しいって、思った。
こんな風に自分の身を返りみずに、懸命に会おうとしてくれた彼が大好きだと思った。
まだ子供の俺たちだったけど、俺たちは俺たちなりに必死に懸命にお互いを思っていたんだ。
俺もスザクもお互いに会いたいって思って、怪我をするまで頑張っていた。
それは、とても大事で、お互いがお互いに想っていると言う証。
「有難う、スザク。スザクが…そうしてくれて、僕も嬉しい。スザクが怪我したの…胸が痛いけど…気持ちがすごく嬉しい…。だから、こうしてお別れする前に、最後にスザクの顔が見えて良かった…」
「馬鹿、最後じゃないよ。今は別れ別れになるけど、俺はルルに会えるように時間がかかっても頑張るから。どんなに時間がかかっても俺は頑張るから。ブリタニアに会いに行くよ。最後なんてこと絶対にない」
「うん、ごめん…そうだった…僕もそれが言いたくてここに来たんだ。ても、絶対にスザクに会いに戻ってくるって言いたくて」
「同じ事、考えてくれてたんだ」
スザクが嬉しそうに、とても嬉しそうに微笑む。
スザクの笑顔ってこういう顔だったんだ。
胸の奥が暖かくなる、幸せにしてくれる魔法のような笑顔。
ぽかぽかと幸せにしてくれる笑顔は、まるでお日様のようだった。
初めて笑顔を見れて、良かったって、本当に良かったって、嬉しくてまた涙が零れた。
「そうだよ、僕だってスザクが大好きなんだ。だから、絶対に会いに戻って来るから」
「俺もルルに絶対に会いにブリタニアに行くから。じゃあ、どっちが早くお互いに会いに行けるか競争だ」
「うん、競争だよ」
小指を絡めて、指きり。
「「指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます。指切った」」
絶対に絶対に約束だ。
いつかまた会える日まで。
遠い遠い日の約束。
その後、うっかりそこで寝入ってしまった俺たちは、大人たちに連れ戻される。
スザクも大人たちに連れて行かれて、別れ別れになる。
「スザク、行くな!行かないで!」
「馬鹿、お前ら離せ!ルルーー!」
お互いに離れないようにぎゅうっとしがみつくけれど、大人たちの力に勝てるわけがなかった。
どんどんスザクと引き離される。
俺はぼろぼろ涙を流すけど、大人たちは容赦がない。
大人の手を俺は噛んで、一瞬その人がひるんだ隙にスザクの方へと駆け出す。
スザクも抱えられていた大人の鳩尾に肘鉄をして、その人がひるんだ隙に俺へと駆け出した。
お互いに駆け寄って、ぎゅうっとしがみつく。
別れたくなんかない、別れるのは絶対に嫌だ。
別れるってわかっていても、たとえそれを理解して、お互いにまた会おうって約束してても、別れることを素直に受け入れられるほど、やっぱり俺たちは大人になんかなれなかった。
スザクにしがみついて、ぎゅうっと強く強く爪をたてた。
スザクも強く強く抱き締めてくれる。
絶対に離さないと言うように。
でも、世界は優しくなくて、子供の俺たちにはまだ力が無くて、また無理やり引き離される。
昨日の夜にお別れは出来たけど、こうして改めて別れさせられて、悲しいわけがない。
「ルルー、約束!俺は、約束を絶対に忘れないから!だから、ルルも忘れないでくれ!」
「忘れないから!絶対に忘れない!」
お互いに声が枯れるまで叫んで、泣き叫んで。
俺とスザクと別れ別れにさせられた。
そして、いつかまた再会出来る日まで。
ずっとずっと頑張った。
そうして、約束は果たせたんだ。
『どっちが早くお互いに会いに行けるか競争だ』
『うん、競争だよ』
いつかまた会えるその日まで。
「スザク…痛くないか?大丈夫か?」
俺は寝込んでるスザクの手をぎゅうっと握って、もう何度目かにわからない問いかけをしてしまう。
「大丈夫、昼間より痛くないからさ。ルルももう寝たほうが良いよ」
痛くないはずないのに、やっぱりスザクは同じように大丈夫だと優しく言葉を返す。
気にしないで良いと言うように、スザクの手が俺に伸びて、ぽんぽんって頭を撫でてくれる。
それに俺はふるふると首を横に振った。
「みんな今日は僕も寝ないで、スザクについてて良いって言ってくれてる。だから今日は起きてる」
「せめて、布団引いたほうが良いよ。それにやっぱり寝た方が良いと思うんだ」
「じゃあ、寝ても良いけど…いつも隣に布団引いて寝てるから、今日はもっと近くで寝る。スザクと一緒に寝るんだ」
布団に横たわれるスザクの横に、ころんと俺も横になって、スザクの腕に手を回して、もっと傍に寄る。
その隣で、スザクが唾を飲み込んだのがわかった。
「別々の布団で寝るのはいつも通りだから良いんだけど…こうやってくっつかれちゃうと…」
「くっつかれちゃうと何だよ?」
もぞもぞとスザクにもっと密着して、今度は首に腕を回した。
いつも二人でくっついたりしてるから、こういうのも今更だけど、夜にこうしてくっついたのは始めてかもしれない。
「このままだと昼間言ってた、続きをするから。だから嫌だったら離れた方が良いよ」
「続き?」
「そう」
スザクの空気が少し変わった気がした。
いつもの優しい感じじゃなくて…上手に言えないけど…男の子みたいって言うか…何て言うか…。
「だって、そんなのこと言わないでも、続きするって言ってじゃないか」
「あ、あの時はつい言ったけど、ルルが嫌なら本気でしないよ。でも、このままだと…」
「僕は、別に良いけど…」
スザクがそれで良いなら良いって思ったんだ。
この時、キスより先のことなんてまったくわからなかったけど、スザクがすることに怖いなんて思わない。
絶対に、そんなことないんだ。
「ルルーシュ…」
スザクの手が俺の顎に伸びてきて、顔が引き寄せられる。
そのまま、何度も何度も軽くキスを繰り返させられる。
頭がぼーとしてきて、何だかふわふわとしてくる。
心臓がすごいドキドキして、胸が痛い。
「ルル…すごいドキドキしてる」
スザクの手が、俺の胸に乗せられて、ドキドキしてるのが口に出して言われてしまう。
「そ、そんなこと言ったら嫌だ…」
「でも、すごいドキドキしてて…可愛いなって思う」
可愛い、と耳元で呟かれて、耳元にかかったスザクの息がすごい熱い。
もっと、もっとドキドキしてきて、パンクしてしまいそうだ。
またキスされて、その間に胸に置かれた手がやんわりと動き出して、なななな、何て言うか…も、揉まれてるって言うか…。
こ、こんなことまでするのかと思って、でも恥ずかしいけど、怖いなんてことはなくて。
頭がぐるぐるしている横で、スザクの手と口が離れて、ごめん!って声が上がった。
「え?」
「ルルは女の子だし…その、とにかくごめん!」
「ごめんって…よくわからないけどさ…スザクなら良いけど…」
「でも、俺がルルを大事にしたいんだ。だから、今日は我慢する。続きは大人になってから!」
スザクにぐいって引き寄せられて、ぎゅうっと抱き締められる。
やっぱり良くわからないけど、大事にしてくれてるって言うのはわかった。
スザクの言葉は、まっすぐで、俺が大好きって気持ちがたくさん伝わってきたから。
守るみたいに、ぎゅうっとスザクは俺を抱き締めてくれてる。
「大人になってからってことは、それまでスザクは僕と一緒にいてくれるってこと?」
「うん。当たり前だよ。ルルとずっと一緒にいる。大きくなったら結婚しよう。ルルは俺と結婚してくれる?」
「結婚する!」
俺は即答だった。
だって大好きなスザクに結婚しようって言われたら、そんなの当たり前じゃないか。
「じゃあ、約束の印」
ふんわりと唇に約束の証のキスをされて、何だか照れくさくて。
何だかすごく幸せな気持ちで、俺はぎゅっとスザクに腕を回して、目を閉じた。
それから一年くらい楽しい時を過ごしてまた夏を迎えて、父上が俺に会いに来た。
忙しいはずなのに、可愛い娘に会いたかったからだって。
仕事はどうした、仕事はどうしたんだって言ってやりたかったけど、それを言わないのはせめてもの娘心だった。
「随分と明るくなったものだ」
父上が俺を抱き上げて、何だかとても嬉しそうに笑い声を上げる。
珍しいくらいに嬉しいそうな声に、俺も不思議だった。
「ここは楽しいか?」
「はい!スザクもナナリーも遊んでくれるし、すごい楽しいです!」
「そうか、そうか。だからこんなにお前は幸せそうなのだな」
感慨深そうな父上の声。
俺が楽しそうなのが本当に嬉しく思ってくれてるんだ。
この時、だったらもっと喜ばせてやっても良いかなって思ったんだ。
将来結婚したい人も出来たんだよって。
「父上、僕、父上に大事なお知らせがあるんです」
「ん?何だ?そんな嬉しそうな顔をして。何か良い事か?」
「はい!僕、結婚したい人が出来ました!結婚の約束もしたんですよ」
そうしたら、一気に父上の空気が凍ったような気がした。
良い知らせなんだから、気のせい??のはずだよな。
「だ、誰なんだ、そいつは」
勤めて声を荒げないようにしているのが、何となくわかる。
い、言ったらまずかったんだろうか…。
でも、この時は、相手がスザクだってわかってもらえたら、きっと喜んでもらえるはずなんだ、と思った。
相手は、枢木首相の息子なんだし。
あとから、それはとてもいけないことだったんだ、とわかったのだけど。
「枢木スザクです。枢木首相のご子息ですよ」
「何だとーーーー!!!私は、お前にそんなことをさせるためにここへ預けたのではない!!!」
抑えていた何かを解放するような大声で、父上が捲くし立てる。
その後は、大人たちの何か騒ぐ声と、父上の金きり声と、たくさん騒がしかった。
その後、両家で色々と話あったらしく、大げさなことに戦争間際までなったらしいけど、とりあえずそれは回避されたらしいからとても安心したのは今でも覚えている。
親馬鹿にもほどがあるって感じだ。
でもその話し合いの間、幸いブリタニアには連れて帰られなかったが、スザクにずっと会えなかった。
俺は枢木家の客室に閉じ込められる形で、部屋から出ようとしても、誰かに止められてスザクに会いにいけない。
スザクが今どうしているか話に聞いたら、何だか神社の座敷牢に閉じ込められてるって聞いた。
普通は俺の方がそこへいられるのが当然なのに、スザクが俺に手を出したとかそんな感じで、罰として閉じ込められてしまったらしい。
明日には、俺はブリタニアへ連れ戻される。
このままだとスザクに会えなくなる。
そう思ったら泣いてしまいそうだったけど、俺はぐっと堪えた。
泣くのなんて我慢しろ、閉じ込められているスザクの方が大変なんだから。
会えないなら会いに行けば良いんだ。
どうにかすればきっと会えるはずなんだ。
別れの挨拶も出来ないまま、別れることになるなんて、そんなの、絶対に、絶対に、絶対に、嫌だった。
ちゃんと挨拶したいし、俺はまたここに戻ってくることをスザクに絶対に伝えたかった。
時間がかかっても、絶対にスザクに会いに戻ってくるんだ。
だから、みんなが寝静まる頃を俺はじっと待った。
時間はわからなかったけど、大体感覚的にみんなが寝ているのかとかわかる。
そっと部屋から出ると、幸い見張りも寝てしまっているらしく、誰かいる気配もなかった。
こんな遅くに子供が起きてくるはずないと思ったんだろう。
俺は、ナナリーに聞いた座敷牢までの道を頭の中で思い出す。
きっと、行ける。
見えないとかそんなの関係ない。
スザクに会いたい気持ちがあったら、同じ敷地内にある場所くらいなんてことない。
そっと、俺は障子を開いて、足音を立てないように縁側まで歩く。
夜の外気に浴衣一枚の俺は少し寒くて、身震いをしてしまうけど、我慢我慢だ。
縁側まで来て、靴がないことに気が付く。
でも、そんなの気にしていられないから、俺は裸足のまま駆け出した。
下は砂利道で、途中で段々足の裏が痛くなって、熱を帯びてくる。
普段裸足で走ったりしないから、砂利道で足が切れたのかもしれない。
走っていても、歩いていても痛いけど…こんなのスザクに会えるなら我慢出来る。
そして、途端に何か躓いて足がもつれて顔から転んでしまう。
鼻の頭も頬も顔中が痛くて、膝がじくじくして痛くて、足の裏も痛い。
こんな時、スザクがいたらきっと背負ってくれてた。
でも、スザクは俺のせいで閉じ込められているんだ。
だから、俺から会いに行かないといけないって思ったんだ。
絶対に絶対に会いに行くって思った。
スザクに会いに行くって。
痛い足に叱咤して、俺は立ち上がって、また道を頭の中で思い出す。
確かこの砂利道を抜けたら…もうすぐなはずだ。
こんな時、うぬぼれじゃ無いけど、自分の頭がそれなりに出来る頭で良かったと思う。
目が見えなくても、地図を頭の中でシュミレートしてスザクにところへといけるのだから。
それから頭の中で地図を思い出しながら、走って、走って、走って。
何とか座敷牢へと行く事が出来た。
座敷牢らしいところに着くと、がんがんと何かを殴るような大きな音と、悔しそうな声を上げるスザクの声が耳に入ってきた。
やっぱりここにスザクがいるんだ、と俺は大好きな彼の名前を声を張り上げて呼んだ。 「スザク!」
「ルル!」
スザクから俺の名前を呼ぶ返事が返って来た!
駆け出して、また顔から転んでしまったけど、嬉しさから顔を綻ばせながら俺は立ち上がった。
痛みより、スザクに会えた嬉しさの方がもっともっと大きかったから。
「ルル、大丈夫か!?」
「大丈夫だよ、ちょっと転んだだけ」
本当はここまで来た足の裏も顔も膝も全部痛かったけど、そんなのはスザクに会えて全部吹き飛んでしまった。
スザクの声のする方へと転ばないように、今度はゆっくり歩いていくと、手に木の囲いみたいな物が当たる。
座敷牢だけあって、外に逃げられないようにされている囲いだ。
でも、隙間はやっぱりあるから、その中へと手を伸ばして、俺はスザクを探した。
そうすると、スザクの手が俺の手へと伸びてきて、ぎゅうっと握ってくれたんだ。
スザクがいる。
そう思ったら、ずっと我慢していた涙がぽろぽろと零れてきた。
明日になったらスザクと別れ別れになってしまう。
だから、またここに戻ってくるからって伝えようと思っていたのに、後から後から口から零れるのは泣き声だけだった。
ちゃんと言葉にしないといけないのに。
どうして言葉は出てきてくれないんだろう。
そうすると、手を引かれて、スザクの手が俺の頭に伸びてきて、宥めるように何度も何度も撫でてくれる。
「ちょっと待って」
「う、ん…?」
布を裂くような音がして、怪我を膝や足の裏に何かを巻かれていく。
自分の服を裂いて、どうやらスザクは応急処置してくれたみたいだった。
「ごめんな、こんな応急処置しか出来なくて…今ここに何もないからさ。この傷も俺のせいだ。ルルは女の子なのに…」
「そ、そんなの…良い…!スザクに、会え、会えたから…」
しゃくり上げながら、俺は上手に出ない言葉を紡ぐ。
痛かったけど、スザクに会えた事で、そんなのはどうでも良いと思ったんだ。
「こんなにたくさん怪我するまで、浴衣がすごい汚れるまで頑張って、会いに来てくれたんだ」
スザクがいつも着ている着物の袖でも使ってくれているんだろうか、じくじく痛む怪我した頬の血を拭ってくれる。
俺はこくんこくんと止まらない涙で濡れた顔で、何度も何度も頷いた。
スザクに絶対に絶対に会いたかったんだ。
「ここまで来るのに大変だったよな。有難う、ルル」
「大、変、なんかじゃない」
ふるふると首を横に振りながら、しゃくり上げながら、答える。
スザクに会えるなら大変だなんて絶対に思わない。
「本当に有難う、ルル。あのさ、もっと顔を見せて。ここ、少しだけ月明かりが入るから暗くても見えるんだ。だから見せて」
こくこくと頷いて、頬に添えられた手に誘われるまま、俺は顔を寄せる。
ふわりとキスされて、また泣いてしまいそうだった。
こうしてスザクと一緒にいられるようになるのも、後ちょっとだけなんだ。
それなのに、それなのに、どうして俺は今も目が見えないんだろう。
お別れを言うだけじゃ、また会いに来るって言うだけじゃ、嫌なんだ。
最後に、せめて、最後にスザクの顔が見たいんだ。
どうして、俺の目は見えないだろう。
どうして、世界を怖がって、光が戻らないだろう。
俺の、いくじなしのいらない嫌な目は、どうして大好きなスザクの顔さえ映してくれないだろう。
「スザク…僕、スザクの顔が見たい」
「ルル…」
「どうして、どうして、こんな時もスザクの顔が見えないんだろう。こんな時くらい見たいのに」
俺の声は泣き声を零すけど、瞳は涙を零すけど、見える事がない。
何ていらない目だろう。
「こ、こんな時も見えない目なんていらない…」
「そんなこと言わないで。俺は、ルルの紫色の綺麗な目が好きだよ。それに…昔、怖い事があったから見えなくなったって教えてくれたじゃないか…だから無理することないんだ」
「スザク…」
スザクは優しいけど、優しすぎるけど、気遣ってくれるけど、でも絶対に今スザクの顔を見たいんだ。
神様、今ならきっと世界に色がついても怖くない。
これから何かを見て、怖いって思っても、あの頃みたいに逃げ出したりしないから。
だから、お願いだから、見せて。
スザクの顔を見せてほしいんだ。
大好きな人の顔を見たいんだ。
「スザクの顔が見たいんだ」
ぎゅうっと目を閉じた俺の唇にまたスザクが唇を合わせる。
無理しなくて良いんだよって慰めるみたいに、そっと優しく。
でも、絶対に絶対に嫌だ、嫌だ、嫌だ!
スザクの顔が見たいんだ!
唇が離れて、そっと瞳を開くと、そこはやっぱり暗かったけど…。
少しだけ光が入ってきてるのがわかった。
それはスザクが言っていた月明りで。
目の前には、俺をまっすぐに見えてくれる優しい瞳を持った俺と同じくらいの歳の男の子が立っていた。
ふわふわのくせっ毛に、深い深い緑の瞳…手を伸ばして顔に触れてみると、触れた感覚はスザクと一緒だった。
嬉しくて、幸せで、胸が弾んで、俺の顔がぱっと笑顔で満開になっていくのが自分でもわかった。
「目が…見える…」
「え…」
「スザク!僕、目が見えるよ!スザクの顔を見たいって思ったら見えた!」
「本当に!?」
「うん!」
スザクの手をぎゅっと握って、俺は飛び跳ねた。
お別れをする前に大好きな顔を見れるなんて、とてもとても嬉しかった。
「あ…スザクの手…怪我してる…」
握ったスザクの手は、とても擦り切れていて、血が滲み、腫れ上がっていた。
見ているだけでも、痛々しい怪我だった。
「あーさっき、ここから出ないかなって思って…何度も叩いてたからさ…明日になる前にルルに会いたかったから…」
スザクは、気まずそうに苦笑して、頬をかいた。
久しぶりに怪我と言うものを見たけど、気持ち悪いなんて思わなかった。
真っ赤な世界が怖くて怖くて、目が見えなくなってしまった俺だったけれど、スザクが俺のために怪我をしたのだと思うと、怖いなんて感じなくて。
愛しいって、思った。
こんな風に自分の身を返りみずに、懸命に会おうとしてくれた彼が大好きだと思った。
まだ子供の俺たちだったけど、俺たちは俺たちなりに必死に懸命にお互いを思っていたんだ。
俺もスザクもお互いに会いたいって思って、怪我をするまで頑張っていた。
それは、とても大事で、お互いがお互いに想っていると言う証。
「有難う、スザク。スザクが…そうしてくれて、僕も嬉しい。スザクが怪我したの…胸が痛いけど…気持ちがすごく嬉しい…。だから、こうしてお別れする前に、最後にスザクの顔が見えて良かった…」
「馬鹿、最後じゃないよ。今は別れ別れになるけど、俺はルルに会えるように時間がかかっても頑張るから。どんなに時間がかかっても俺は頑張るから。ブリタニアに会いに行くよ。最後なんてこと絶対にない」
「うん、ごめん…そうだった…僕もそれが言いたくてここに来たんだ。ても、絶対にスザクに会いに戻ってくるって言いたくて」
「同じ事、考えてくれてたんだ」
スザクが嬉しそうに、とても嬉しそうに微笑む。
スザクの笑顔ってこういう顔だったんだ。
胸の奥が暖かくなる、幸せにしてくれる魔法のような笑顔。
ぽかぽかと幸せにしてくれる笑顔は、まるでお日様のようだった。
初めて笑顔を見れて、良かったって、本当に良かったって、嬉しくてまた涙が零れた。
「そうだよ、僕だってスザクが大好きなんだ。だから、絶対に会いに戻って来るから」
「俺もルルに絶対に会いにブリタニアに行くから。じゃあ、どっちが早くお互いに会いに行けるか競争だ」
「うん、競争だよ」
小指を絡めて、指きり。
「「指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます。指切った」」
絶対に絶対に約束だ。
いつかまた会える日まで。
遠い遠い日の約束。
その後、うっかりそこで寝入ってしまった俺たちは、大人たちに連れ戻される。
スザクも大人たちに連れて行かれて、別れ別れになる。
「スザク、行くな!行かないで!」
「馬鹿、お前ら離せ!ルルーー!」
お互いに離れないようにぎゅうっとしがみつくけれど、大人たちの力に勝てるわけがなかった。
どんどんスザクと引き離される。
俺はぼろぼろ涙を流すけど、大人たちは容赦がない。
大人の手を俺は噛んで、一瞬その人がひるんだ隙にスザクの方へと駆け出す。
スザクも抱えられていた大人の鳩尾に肘鉄をして、その人がひるんだ隙に俺へと駆け出した。
お互いに駆け寄って、ぎゅうっとしがみつく。
別れたくなんかない、別れるのは絶対に嫌だ。
別れるってわかっていても、たとえそれを理解して、お互いにまた会おうって約束してても、別れることを素直に受け入れられるほど、やっぱり俺たちは大人になんかなれなかった。
スザクにしがみついて、ぎゅうっと強く強く爪をたてた。
スザクも強く強く抱き締めてくれる。
絶対に離さないと言うように。
でも、世界は優しくなくて、子供の俺たちにはまだ力が無くて、また無理やり引き離される。
昨日の夜にお別れは出来たけど、こうして改めて別れさせられて、悲しいわけがない。
「ルルー、約束!俺は、約束を絶対に忘れないから!だから、ルルも忘れないでくれ!」
「忘れないから!絶対に忘れない!」
お互いに声が枯れるまで叫んで、泣き叫んで。
俺とスザクと別れ別れにさせられた。
そして、いつかまた再会出来る日まで。
ずっとずっと頑張った。
そうして、約束は果たせたんだ。
『どっちが早くお互いに会いに行けるか競争だ』
『うん、競争だよ』
いつかまた会えるその日まで。
ほわわわわ、拙い小説ですのに、感想をたびたび有難うございます><
後編は自分でも自分なりに頑張って書いたお話だったので、感動していただけて、頑張って書いて良かったと思いました^^
本編もまだ続きを書こうと思っているので、また宜しければ遊びに来ていただけると幸いですv
凄い、もうルルーシュの目が見えたときなんか、ほろりときましたもん。
忙しくてチェックが出来ていなかったもので…。
感想有難うございます!
個人的にルルの目が見えるところは自分でも気にいっているので、そう言っていただけてとても嬉しいです!