くろねこなてんし

コードギアス~反逆のルルーシュ~のスザルル小説を載せたブログ。

オレンジデイズ

2010-04-30 21:40:41 | スザゼロルルorゼロルル小説
 このお話は、ゼロルルです。
 マリアンヌとC.C.が姉妹で、ゼロ様がC.C.の息子、ルルがマリアンヌの息子で、ゼロルルはいとこ同士と言うお話です。



 「あーすまないな、ルルーシュ。今日もゼロを起こしに来てくれたのか」
 俺の叔母であるC.C.は、俺が彼女の家の廊下を通り、彼女のいる今の前を通り過ぎているとそんな風に声をかける。
 C.C.はテレビをつけっぱなしにしつつ、お気に入りのぬいぐるみのチーズくんを片手に座布団を半分に折ったものを頭の下に敷き、今の畳でごろごろ寝転んだまま視線だけ俺に向けている。
 しかも服装はパジャマのシャツを上に着ているだけ。
 一人息子がいるとは思えない様子で、彼女は俺がこうして家に来るまで起きていても寝ていてもごろごろしている。
 そしてこの家での俺の用件が済むと共に俺の家に朝ご飯を食べてに来て、俺が弁当を要してやっていなければ昼はピザの出前、夜はまた俺の家に夕飯を食べに来ると言う始末だ。
 なおかつ俺の家の食事は俺がすべて作っているために、C.C.が俺の家に来て食べる食事はすべて俺が用意したものになる。
 さらに俺が熱を出して寝込んでご飯が作れない日などは、食事は出前のピザにして、母親のくせに料理をせずに怠慢をする。
 俺がいなければこの家の食事事情はどうなっているのやら。
 さらに深いところまで突っ込んで話をさせてもらうと、食事以外のこの家の家事(自宅の家事も俺が担当しているが、それは家族なのだから別に構わない)もほぼ俺の担当だ。
 まあ、それは良い。
 C.C.の息子であり俺の愛するいとこであるゼロがちゃんとご飯を食べられて、健やかに過ごせていれば良いのだから。
 食事だって、俺はただゼロのおまけでC.C.の分も作ってやっているだけだ。
 「本当ならお前が母親なのだから、お前がゼロを起こしに行くべきだろう」
 「そんな面倒はお前がすれば良いだろう。それよりも早くゼロを起こして、私に朝ご飯を食べさせろ」
 「またお前は勝手なことばかりを言って!先に俺の家に行ってろ!お前の分はすでに出来ている!」
 煩い叔母に手をしっしっと振って顔を背けると、俺はまた廊下を歩いてゼロのいる二階へと足を進める。
 階段を上がる音が軽く響き、上がりきるとそこから数歩進んでゼロの部屋と向かう。
 今朝も俺はいつもの日課として、いとこであり幼馴染のゼロを起こしに行く。
 これは物心ついた頃からのことで、10年以上やっている。
 ある日、朝起きてこないゼロを起こしに行ってから。それがずっと俺の役目だった。
 あいつを起こしに行くのは、飽きないか、面倒にならないのかと家族にも言われたこともあるが、そんなことは考えたこともなかった。
 これは俺だけが許される特権であり、そしてそれはもう自分の中で当たり前のこととして染み付いているからだ。
 あいつは俺以外に起こされるようなことがあれば、絶対に自分から先に起きてきた。
 俺にしか起こされたことは絶対にない。
 こういう感じだと、ゼロもわざと寝たふりをしていることも考えられるが、俺もあえて気づかないふりをしている。
 それは俺に起こさせてくれるなら、その方が嬉しくもあり、幸せでもある。
 俺のだけ起こさせてくれるなら、それはゼロも俺に甘え、そして俺を頼りにしてくれていると言うことだ。
 ゼロは俺にだけ甘えてくれていれば良いのだから。
 「入るぞ、ゼロ。まだ寝ているのか」
 毎朝のことなのだから、わざわざノックをしないでも良いと思いながらも、我ながら律儀に部屋の前につくと声をかけながら扉をノックする。
 ノックをしても返事が返ってこないことから、やはり毎度のごとく眠っているのだろう。
 部屋に入ると、部屋の主がベッドの枕の上に漆黒の髪を散らして横になる姿が真っ先に視界に入ってくる。
 部屋の中にあるものすべての中で、真っ先に眠っている人に視線が向かってしまうのも、それが好きな相手だからこそ。
 ゼロがどこにいても一番に瞳に自然と映るんだ。
 きっと世界中のどこにいても、真っ先に見つけられる自信がある。
 「ほら、ぜろそろそろ起きろ」
 寝顔を見ただけで少しずつ早まり出す胸の動きを落ち着かせるように、そこに手を当てて俺はゼロを起こしにベッドまで足を進める。
 何年たっても傍にいて胸が苦しく動くなんて、その年月の間ずっと好きで、降り積もるようにその思いが胸だけに留めておけず、どんどんと溢れて深くなるからだ。
 長い間、この苦しさと付き合ってきた。
 俺の想いは、物心がついた頃からだった。
 「ゼロ、いい加減に起きろ」
 俺はベッドの傍らに立つと、掛布団の上からゼロを軽く揺り動かす。
 ベッドの上でサラサラの髪がパラパラ散って、長い睫毛が僅かに揺れ動く。
 瞼の下には俺と色違いの瞳の色だ。
 だが、その瞳の色以外はゼロと俺はすべて同じ。
 いとこなのに双子で通じてしまうくらいに同じだ。
 身長も髪の色も容姿もすべて似通っている。
 だた運動関係はゼロの方が出来るために体つきは彼の方が少々しっかりしているが、ゼロは着やせするタイプなのか、服を着てしまえば結局それもわからなくなってしまう。
 俺の両目の紫と、ゼロのオッドアイの紫と赤の瞳以外はすべて同じだった。
 そして母親が違えど、なぜか誕生日までが一緒。
 そこまで同じだと相手を気持ち悪く思うか、気になるかのどちらか。
 俺は気になるよりさらに上の、このいとこにいつも間にかとても惹かれ、恋心を胸の奥に密やかに募らせてしまっていた。
 相手と姿形が同じでも、中身が違えば別の人間なのだから、恋焦がれてしまうのは普通のことだ。
 性別はともかく、相手はいとこなのだから問題はないだろう。
 長い長い時を過ぎて、胸の中で圧迫されてそれでもこの想いをゼロに伝えれないのは、伝える伝えない以前に恥じらいが先に出てしまうためだ。
 恥ずかしすぎてどうしようもなくなり、普段のことには動き出してくれる頭脳が恋にはどうしたら良いのかまったくわからなくなり、懸命に考えようとしても思考はショートしてしまうパターンが多い。
 「朝ご飯が冷めるだろう」
 相変わらず横になったままのゼロの上掛けを剥がすためにそれに手をかけようとして、その手の動きが止まった。
 布団から伸ばされた手に俺の手が軽い力で握られていて。
 けれど力を入れられていないにも関わらず、俺のては動かせないのは力の差ゆえから。
 「ほわぁぁっ」
 握られた手首はそのまま引っ張られて、俺の体は容易くゼロのベッドに招き入れられる。
 ゼロを毎朝起こしにくれば、彼は俺にキスを要求したり、反対にキスをしたりして、たちが悪い。
 今日は俺をベッドに引きずり込んで、以前のようにまた体中を擽るつもりなのか?
 「人をベッドの中に引っ張って何をするんだ!」
 引っ張る手を払いのけようともがくが、俺はベッドマットに簡単に縫い付けられ、ゼロが引っ張ったために頭まで覆われた掛布団の暗くなった視界の中で、もぞもぞと動く気配を感じて。
 布団の隙間から入る光のおかげで、うっすらと見えたゼロは俺の真上で楽しそうににやりと笑っていた。
 「お前な、朝から悪戯は…ほわっ」
 俺を押さえつけていた片方のゼロの手は離れたと思うと、俺の着ていた制服のシャツをたくし上げて、裾の合間を縫って入る。
 これはお決まりの典型的擽りのパターンだ。
 あれをされると色んな意味で不味くなる!
 「ゼロ、止めろ…」
 「いつものことなんだから気にしなくても良いだろう?」
 ゼロの手はちゃくちゃくと俺の肌の上をするすると遊ぶように滑りながら動く。
 唇は俺の耳に元に寄せられ、わざと低くした声で囁いてくる。
 起きたばかりの少し掠れた声は、俺の好きな声。
 俺と同じようでいて、少し違う声。
 俺のすべてが反応を始めてしまう声。
 「悪戯は止めろ…」
 こういう子供じみた悪戯だって、可愛く思えるゼロの一部だ。
 けれど朝の挨拶もせずに、起きたてからこんな悪戯なんて、駄目なんだからな。
 惚気のような恨み言を脳内で少し思いながらも、俺はゼロを睨みつけるだけで終わってしまった。
 なぜなら、力が抜けて抵抗しようにも出来なくなってしまったんだ。
 それは耳元にふうっと息を軽くかけられたから。
 耳元で息を吹きかけられたり囁かれると体は驚くのか、なぜかそのたびに力が抜けて動けなくなる。
 今回も毎度お決まりのパターンだ。
 お決まりのパターンに乗っかってくるゼロもずるいし、そのパターンに引っかかる俺も馬鹿だ。
 「んっ…やだ…」
 シャツの裾から入り込んだ肌の上をなぞる指は、擽るようにゆっくりと少しずつ上がっていく。
 擽ったいようなむず痒いような…でも擽ったくないような。
 以前にもあった不思議な感覚にまた震える。
 体に少しずつ熱が灯ってきて、擽ったいはずなのに、俺に触れている指先を求めるようにまた触れてほしいと願ってしまう。
 流されたらいけないと思いながらも、擽るように自分から少しずつ甘えるようになってきてしまうんだ。
 「ゼ…ロ…」
 名前を呼ぶ声も途切れ途切れになって、言葉という機能を果たしていない。
 上擦って段々とおかしくなる声が不思議で、そんな声と一緒に熱くなった吐息が零れた。
 俺らしくない甘えが込められているような声を零し、震える体でゼロに指を伸ばそうとすると、腕を押さえつけられていたもう片方の手が離されて、ゼロの手が俺の手に重ねられた。
 「ゼロ…」
 「わかってる」
 うっすらと暗い視界にもわかる、ゼロのくすくす笑う悪戯な笑みに余裕を感じられて、少し悔しい。
 でも、俺と同じ顔でも、俺がしないような表情を見せるこの顔が何だかおかしくも、可愛くて愛しくて堪らなかった。
 重ねられた手に少し力がこもり、少しずつ焦らすように唇が下りてくる。
 これが、俺が願っていること。
 ゼロも俺のその甘えを察して、唇を寄せてくれる。
 早く、キスをしてくれたら良いのに。
 俺が願うことを理解しても、焦らすなんて意地が悪い。
 ゼロの吐息が唇にかかって、あと僅かで唇が触れ合う。
 「ルルーシュ…」
 「ゼロ…」
 「ルルーシュ~そろそろ帰ってらっしゃい。ご飯にしましょう」
 あと数ミリと言ったところで、絶妙なタイミングを見計らったように、はつらつとした声が俺たちの間に入るように邪魔に入る。
 ゼロは苦虫でも噛んだような複雑そうな表情を浮かべると、俺からゆっくりと手を離して体を起こした。
 名残惜しそうにゆっくりと離れていく手に寂しさを感じ、掛布団がはがれて明るくなった視界の中で、俺は体を起しながらその手を追うように、自分の手をそっと重ねた。
 声の聞こえた方に視線をやるとそこには俺の母さんが楽しそうに手を振っていた。
 「マリアンヌおばさん!何で邪魔するんですか!」
 「ごめんなさいね、ゼロ。でも邪魔はしたくないけど、お腹がすいたんだもの。早くみんなでご飯にしましょう」
 ゼロの部屋のお向かいにある俺の部屋の窓から顔を覗かせた母さんは、悪びれる様子もなく、けらけらと笑いながら答える。
 俺の母のマリアンヌはゼロと向かい合わせにある俺の部屋の窓を通じて、俺たちのこうした様子を覗くことがある。
 まさか、今日も覗かれているなんて…俺の気持ちは母さんに筒抜けなようだけれど、恥ずかしいにも程がある。
 俺たちは布団をかぶっていたけれど、勘の良い母さんだから何をしていたか察しているような気もする。
 「母さんに見られていたなんて…」
 俺は恥ずかしすぎて頬やら体やらが一気に加熱する。
 とても熱くなっていき、思考がついていけなくなり。
 そのままショートするように、意識が飛んでぱたりと倒れ込んだ。
 「お、おい、ルルーシュ!」
 遠くでゼロに呼ばれた気がするけれど、恥ずかしさから逃げたい俺は意識を手放すしかなかった。



 その後、俺は気絶しながらも何とか遅刻せずに学校には登校し、席につくことも出来た。
 だが、ゼロはともかく、同じ学校に通っている弟のロロと妹のナナリーには随分迷惑をかけてしまったから、夕飯は二人の好きなものにしてお詫びをしよう。
 「ルルーシュ、一時間目の授業が始まったぞ」
 「ああ、わかった」
 同じクラスであり、隣の席のゼロに言われて、一時間めの授業が始まっていたことに気づく。
 そう言えば、先生が挨拶をして教室に入ってきていたな。
 でも、適当にしていても大丈夫だろう。
 問題は夕飯だ。
 ロロとナナリーの好きなもの以外は、今日は金曜日だから、チェックしていた金曜のタイムセールのものと兼ね合いにして作って…。
 でも夕飯の前に軽くC.C.用のおやつも作ってやらないといけないか。
 したジュビンはすでに終わっているが、家に帰ってすぐに作らないとC.C.がごねるからな。
 あいつの腹の中はどうなっているんだ…いつもおやつを食べてもまだ夕飯がちゃんと入るのだから。
 「ルルーシュ・ランペルージ、問3を答えてみろ」
 先生に声をかけられ、立ち上がって黒板の問題をちらりと見ながらも、思考は夕飯のことばかりだ。
 あれくらい簡単な問題は黒板をちゃんと見なくても出来る。
 「はい、問3はAになります」
 「宜しい。ランペルージはちゃんと予習をしてきているんだな。みんなも見習うように」
 先生の褒め言葉やみんなの羨望の眼差し、賞賛の言葉が俺に向けられるが、それが何だか不思議だった。
 それよりも日々迷惑をかけてくるどうしようもない叔母に苦労をかけられている方を褒めてもらえた方が慰めにもなるものだ。
 先生の言葉に頭を軽く下げて席につくと、隣のゼロが俺の制服の上着の裾を軽く引いてくる。
 それに数回瞬きをし、不思議にも思いながらも、視線をゼロに向けた。
 「何だ、ゼロ。俺は今日の夕飯のことで頭がいっぱいなんだ。邪魔をしないでくれ」
 「お前の頭の中はやっぱりそれでいっぱいなのか…」
 「それがどうかしたのか?」
 「しきりに何か考えているみたいだから気になっただけだ。それならそれで良いんだ。今日の夕飯も期待しているからな」
 頬杖をついてにっこり微笑む隣の主に、ぐっと息が詰まる。
 表情の柔らかさや楽しみにしているオーラがゼロから溢れていて、何だか見られているのが恥ずかしい。
 そんなに見られたらドギマギして、このまま椅子に座っているのも落ち着かなくなる。
 俺はまた夕食のことを考える振りをして、視線を逸らした。
 けれど、胸のドキドキがおさまるまでは夕食のことなんて考える余裕さえなかったんだ。



 「すまない、ゼロが部屋に来る頃なんだ。だからそろそろ電話を切るぞ。ああ、また明日な」
 ベッドの上でお気に入りのロロお手製ウサギクッションに寄りかかりながらの、遠方の学校に通っている寮住まいの幼馴染のスザクとの楽しい電話も終了。
 スザクは毎日俺に電話をかけてきて、あれをやった、これをやったと楽しそうに報告してくれて、俺に何をしていたかなどの質問も忘れない。
 ありきたりの内容も多いが、嬉しそうに語ってくれる明るい声を聞いていると俺も楽しくなるし、俺の方もスザクともっと話したくてついつい話を長引かせてしまうこともある。
 ああ、そう言えば、俺のことだけでなく、ゼロのこともスザクは常に聞いてくるな。
 ただ、スザクからゼロに電話してもゼロが電話を面倒だと言って出ないから、朱雀が俺に泣きついてゼロの近状を聞いてくるため、そえに俺が答えているようなものだが。
 ゼロも毎日の電話は確かに面倒だろうが、幼馴染のちょっとしたお願いくらいは叶えてやっても良いものを。
 幼い頃からスザクが俺やゼロにべったりなのは、いつまでも変わらない当たり前の行為なのだから。
 スザクにあのふわふわの茶色の髪で胸に擦りつかれたら、大型犬に甘えられているようで可愛いし楽しいのにな。
 あんな風に犬のように慕ってくれるなら素直に甘えさせてやっても良いじゃないか。
 犬が甘える要領でスザクに擦りつかれると、胸を舐めようとしてくるから、それが嫌なのか?
 流石に俺もあれは擽ったくて困ったが、嫌がるほどでもないだろう。
 通話相手だったスザクのことを考えながら、通話ボタンを切って携帯の時計を見ると、夜の12時は過ぎている。
 いつも通りならゼロも風呂や歯磨きなんかを終わらせて、俺の部屋に来る頃だろう。
 明日は寮に入っているスザクもこちらに帰ってくるから、幼馴染のメンバーで遊べるのが楽しみだ。
 大っぴらには恥ずかしくて喜べないが、一週間に一度しかないことだから、やっぱり嬉しいために口元が緩んでしまう。
 明日は夕食も一緒になるあkら、みんなに何を作ってやろうか。
 「何を笑っているんだ?」
 開けていた部屋の窓からゼロが慣れた様子で、窓に手をかけて入ってくると、俺のベッドの上に降りる。
 ゼロの部屋と向かい合った俺の部屋の窓のちょうど真下にはベッドがあるために、ゼロがベッドに乗ると俺たちはちょうど隣り合わせで座ることになった。
 近くにある手を自然と重ねられて、突然触れられるとビクンと驚いて体が奮え、そして固くなると同時に胸がトクンと跳ね上がる。
 それが恥ずかしくて、ロロお手製のクッションを空いている方の手でぎゅっと反射的に抱き締め、顔は自然と下に向いてしまった。
 顔を、見ていられない。
 さっきまで平常心でいたのに、胸の高鳴りと一緒に体中に熱が灯ってくる。
 「ゼロ…また泊まりにきたのか¥
 唇から零れる声も情けないことに動揺して段々と少しずつ震えていく。
 「毎週のことだろう。だからルルーシュも窓を開けていたくせに」
 「…そうだが…」
 幼馴染の気安さもあり、ゼロは毎週金曜、土曜は俺の部屋に侵入しては泊まっていく。 毎回お互いの向き合った部屋の窓からゼロはやってきてくれるんだ。
 俺は運動神経の問題もあり、俺からゼロの部屋に窓から行くことは皆無だが。
 ゼロが泊まっていくことに異論はないし、二人で夜通し語り合えるのは楽しいため、毎週の幸せの一つだった。
 「…話を戻すが、ルルーシュ、さっき楽しそうにしていたのって、またスザクから電話があった…とかか?」
 何も言わなくてもゼロは俺がご機嫌になる理由はお見通しのようだ。
 俺がご機嫌になるのは、可愛いナナリーとロロ、大事な幼馴染のゼロとスザクのことが多いからか。
 「ああ」
 「やっぱりか。どうせ明日には帰ってくるんだし、あいつの電話は毎日来るんだから出るな」
 「そうもいかないだろう。あいつは大事な友達で幼馴染だ。ゼロこそスザクからの電話に出てやれ」
 「嫌だ」
 ゼロは眉を上げるだけ上げて、口はへの字口で答える。
 ぐっと唇を噛み締めて、瞳は怒りの色を宿している。
 あからさまで隠す様子もなく、不機嫌オーラが前回だ。
 まるで駄々をこねた小さな子供みたいで聞き分けがない。
 ゼロも、幼い頃はあんなにスザクと仲が良かったのに、どうしてこんなにスザクには頑なになってしまったのやら。
 「私だって、スザクからの電話は三回に一回は出ているんだから良いだろ」
 いや、ゼロもなんだかんだ言って、面倒だと言いつつも、結構な割合で電話には出てやっているらしい。
 仲が悪くなったわけじゃなくて、素直になれないだけか。
 そう考えたら、何だか可愛いとしか思えない。
 ゼロがおかしくて、でもどうしようもなく可愛くて。
 恥ずかしくて俯いていた俺がようやく顔を上げて笑っていると、ゼロの機嫌がまた悪くなることをわかっていながらも、笑みを隠すことが出来なかった。
 「ゼロは素直になれないだけなんだな」
 「ルルーシュ、私のよくわからないことでにやけるな」
 「三回に一回は電話に出ているってことは、ゼロは愚痴を言っていてもちゃんとスザクが好きなんだって思ったんだ」
 「…一応幼馴染なんだから、あいつが馬鹿なことをしない時は嫌いじゃないさ」
 ゼロの嫌いじゃないと言う言葉は、素直になれないゼロの好きって言葉だと言う事をずっと傍にいた俺が良く知っている。
 俺は素直になれないゼロの好意の表し方が微笑ましく、胸の奥がほっこりと暖かくなる。
 こういう可愛いところも含めて俺はこの幼馴染が大好きで仕方ないんだ。
 抱いていたクッションを腕から離し、俺はゼロの髪に手をやる。
 指で擽ってもすぐに零れてしまうくらいのサラサラの髪を指でかき混ぜ、頭を撫でた。
 「ゼロは可愛いな」
 「それを言うならルルーシュの方が可愛い」
 「そうか?」
 「そうだ。世界で一番可愛いことを自覚するんだ」
 「…俺たちは同じ容姿だから、ある意味自画自賛って言わないか?」
 「同じ容姿でもルルーシュの方が可愛いに決まっているだろう。自画自賛じゃない」
 ゼロは握っていた俺の手を引いて自分の方へを引き寄せると、腕の中に抱き込む。
 清潔な石鹸の香りがするゼロの身に付けているパジャマを通して、風呂上りの甘いシャンプーの香りが鼻先を擽ってくる。
 ゼロとお揃いで買った苺のシャンプーの香りだ。
 先日、二人でこの甘い香りが気に入って、お揃いで使おうと決めたんだ。
 「ルルーシュから私と同じ香りがするな」
 「お前と同じシャンプーを使っているからな」
 抱き締められた腕の中で、頭上からくすりと笑う雰囲気を感じる。
 それはどこかとても嬉しそうに感じられた。
 本当に俺たちは好きなものから嫌いなものまで同じだし、容姿もほぼ同じ。
 身長も同じだし、使っているものも同じものが多い。
 好きな相手と同じものが多いと嬉しく感じられるものだろう。
 ゼロが俺を大事ないとこであり、幼馴染であり、親友だと思ってくれている。
 それは俺に対しての対応や笑顔や、他にも色々なところから伝わってくる。
 俺からゼロへの気持ちとゼロから俺への気持ちは違うものだと思うけれど、好きな相手と同じだと思えるのがあるのは、とても嬉しいものだよな。
 「今は苺だけど、今度は二人で迷ってて買わなかった桃の香りのシャンプーでも買うか」
 「そうだな。あれも良い香りだったから」
 顔を上げる俺にふっと影がかかる。
 そっと落ちてくる唇に俺は静かに瞳を閉じて、それを受け入れた。
 ふんわりと触れるくらいの優しい口付けに、俺は幸せを感じずにはいられなかった。
 ゼロの愛情表現は少し行き過ぎたところもあるけれど、キスは俺にしかしないから、とても嬉しいんだ。
 離れていく唇を追うように、俺からもゼロの頬に手を当てて、唇を引き寄せるのだった。



 「どうして、ルルーシュはここまで人の恋愛感情に鈍いんだか…私の気持ちも考えろ」
 「え?」
 「…何でもない」



以前出した無配のゼロルル本の再録です。
これよりも前にスザゼロルルは書いたのですが、ゼロルルだけで書いたことはなかったので、試行錯誤の製作過程ながらもすごく楽しく書いていた記憶があります。
でもゼロルル本業書きさんの方には土下座して土の味の作品です…すみません><