恋はマスクから

今年の冬になって、毎朝学校に行く時に同じ車両で見かけるようになったマスクの君。
マスクで顔を隠されていてどんな顔をしているかわからないけど、キラキラと紫水晶のように光る知的な色を宿す瞳がとても魅力的で、人をひきつけると言う事も知っている。
僕が電車に乗って彼の方が電車から降りるまでの一時間、電車に乗るたびに見た彼はとても優しい人だということもわかった。
自分が座席に座って本を読んでいても、自分よりも小さな子やお年寄り、体調の悪そうな人がいれば席をすぐにかわってあげる。
そして、マナーの悪い乗客がいたら注意をするしっかりしたところもある。
綺麗な瞳に、優しい心、そして品行方正なところ。
話したことはないけれど、マスクで顔が見れない人だけれど、僕は気になって仕方がなかった。
そして何より、顔が見えないけど、マスクの一部から見える理知的な瞳とか、表情が読めない中にある禁欲的な雰囲気。
何を考えているかわからないこそ、その表情の読めなさが禁欲的に感じてしまったんだ。
僕はマスクの君（名前がわからないからそう呼んでいる）にすっかり恋をしてしまったようだ。
でも、マスクをしているあの人はマスクがとても似合っているから、僕は彼がマスクをしたままでも愛している。
むしろマスクは必需品かもしれない。
マスク…それは彼の魅力を引き立たせるアイテムなのかもしれない…。