くろねこなてんし

コードギアス~反逆のルルーシュ~のスザルル小説を載せたブログ。

夢見るたい焼き

2011-12-28 10:51:18 | スザルル小説
 あるところに、ピザが一番の主食である、たい焼き作りの腕前が素晴らしいたい焼き職人がいました。
 そのたい焼き職人の作るたい焼きは頬っぺたが落ちると言う表現があっているほどのとても美味しいものでした。
 味はあんこ一徹でしたが、そのあんこもたい焼きの生地もすべてにおいて素晴らしく、甘いものが駄目な人もこのたい焼きだったら食べられる!と口コミで広がるほどでした。
 そのため、たい焼き職人の屋台には買い手が全国各地からわざわざ買いに来るほどです。
 そんなある時、たい焼き職人は腕が良すぎたのか、たい焼き作りに気合いを入れたら、気合いを入れすぎて焼いたたい焼きは黒く焼け焦げてしまいました。
 けれど、その気合のおかげもあるのか、たい焼きに命が宿ってしまったのです。
 そしてたい焼きは、命が宿ってしまったためか、普通のたい焼きなら駄目になる日にちも乗りきり、焦げた以外は常に新鮮でほかほかな状態でした。
 そのため、たい焼き職人も命があるたい焼きを売り物にするのも忍びなく、命あるたい焼きをお店に飾る看板娘ならぬ看板たい焼きにすることにしました。
 流石にお客さんたちは飾ってある黒いたい焼きに、命があるとは知りません。
 けれど、命あるたい焼きは、真っ黒焦げなために食べるのは不味そうだけどどこか愛嬌があるとお客さんたちに親しまれ、「黒いたい焼きちゃん」と言われていました。



 「すみません、たい焼きをください」
 公園の片隅で屋台を広げるたい焼き職人の元に、今日もたい焼きの美味さを口コミで聞いたお客さんが来ました。
 お客さんはチョコレートのような色のふわふわの髪に、まだどこか幼い雰囲気を持つ黒い学生服に身を包んだ少年です。
 少年はポケットに手を入れると、今では珍しいだろう唐草模様のがま口財布を取り出しました。
 「たい焼きがいくつほしいんだ?」
 「10個ください」
 「今焼くから少し待っていろ」
 少年は不躾な口調のたい焼き職人にも気にした様子もなく、柔らかな笑顔を浮かべると素直に頷きます。
 たい焼き職人も相手の態度に気を良くしたのか、口元に笑みを浮かべてお得意のたい焼きを焼き始めました。
 少年は好奇心が旺盛なのか、緑翠の瞳をくるくるさせて屋台を見つめていきます。
 そして少年は店先に吊るされている黒いたい焼きを、その優しげな緑翠の瞳で映し込むと、口コミで聞いていたその名前を感慨深そうに口にしました。
 「これが黒いたい焼きちゃんか…」
 少年は噂の美味しいたい焼きが食べたくて、学校が終わるとわざわざ隣の県にあるたい焼き職人の屋台に来ていたので、出来るなら噂の黒いたい焼きも見てみたかったのです。
 黒いたい焼きは、見た感じ不味そうで、焦げているため黒炭のように真っ黒です。
他のたい焼きから一つだけ仲間はずれにされているように違います。
 黒いたい焼きが看板たい焼きとは言え、吊るされて見せ物になっていては、少年も黒いたい焼きが忍びなく思えてきます。
 「頑張ってね」
 少年が労うように労りの言葉をかけると、黒いたい焼きはそれに反応するように、ぽっぽっとほかほかの湯気をたて始めました。
 人間だったら、まるで恥ずかしくて顔から湯気が出てしまうと言う表現がピッタリくる感じです。
 黒いたい焼きは真っ黒なため、今まで笑われたり、からかわれたりすることが多く、優しく労うようなことを言われたことがありませんでした。
 そのため、少年の気遣いの言葉に反応して、何だか恥ずかしいような嬉しいような気持ちになり、体中から熱を発してしまったのでした。



 それからたい焼きが焼きあがりました。
 噂のたい焼きを買えて、少年もご満悦です。
 紙袋に入ったたい焼きはほかほかで、今にも食いつきたくなる魅力があります。
 「おい、お前」
 「何ですか?」
 たい焼きの入った紙袋に視線を落としていた少年に、たい焼き職人が声をかけました。
 少年が顔を上げてたい焼き職人に視線を向けると、職人はその手に黒いたい焼きを持っています。
 そして、黒いたい焼きを持つ手を少年の方へと差し出してきました。
 「こいつがお前を気に入ったらしいから、持って帰れ」
 「え…この子は看板たい焼きじゃないんですか?それにどうして僕に持って帰れなんて…」
 「だから、こいつがお前を気に入ったから持って帰れと言っている。今までこいつはうちの看板たい焼きをやってくれたからそろそろ自由にしてやろうと言う優しい親心だ。だから持って帰れ」
 「黒いたい焼きちゃんが僕を気に入ったとかよくわからないですけど…たい焼きは好き だからもらえるならもらっていきます」
 少年は黒いたい焼きが生きていることは知らないので、たい焼き職人の言葉の意味をいまいち理解出来ないまま、黒いたい焼きを受け取ります。
 少年は黒いたい焼きからあんこが飛び出さないようにそっと手にして、他のたい焼きと一緒に袋に入れました。



 それから少年は、黒いたい焼きを食べれないまま、家に持って帰りました。
 帰り道の途中で他のたい焼きは食べれたのですが、何だか黒いたい焼きは食べる気がおきなかったのです。
 たい焼き職人が言った「黒いたい焼きが自分を気に入った」と言うことが気になっていたからです。
 まるで、黒いたい焼きが生きているような言い方です。
 そのため、黒いたい焼きはたった一つ残り、皿の上に乗せられて、その皿は少年の机の上に置かれていました。
 「でも、このまま食べないって言うのもな…」
 少年は黒いたい焼きが痛まないことを知らないので、このままたい焼きを放っておいたら、痛んでしまうと考えます。
 たい焼きが好きな少年としては、大好きなたい焼きを食べないまま駄目にしてしまうのは許せません。
 そのため、食べづらいと思いながらも、食べることを決断しました。
 皿に手を伸ばして黒いたい焼きを手にすると、わずかにたい焼きがぴちぴちと動いた気がしました。
 けれど、たい焼きが動くはずがないとすぐに気を取り直して少年の手は口元へを近づいていきます。
 そして黒いたい焼きの口が少年の口に触れた時でした。
 たい焼きが少年の手の中でばたばたと元気に動き始めたのです。
 少年が何事だと慌てて手を離すと、手の中のたい焼きの全長は変わらないものの、たい焼きの姿は変わっていました。
 黒いたい焼きは、艶やかな黒髪に、白雪のような肌、紫水晶の理知的な瞳を持つ、端整な容姿の少年の姿に変わっていたのです。
 ただ、元がたい焼きのためか、元黒いたい焼きの少年の下半身には足でなく、たい焼きのしっぽがついていましたが。
 ぱっと見た感じは、おとぎ話に出てくる人魚のような姿です。
 たい焼きの胸元には苺のような愛らしいピンク色の胸の突起が誘うようにあり、それが少年の視界に入って、彼はたい焼きの艶かしい姿に音を立てて唾を飲み込みました。
 「え、た、たい焼き…?」
 少年は訳がわからず、元たい焼きだった少年の美しい容姿に惹かれながらも、どう言葉を発して良いのかわかりません。
 思わずたい焼きを握った力に手を入れてしまい、黒いたい焼きは苦しそうに顔をしかめます。
 「そ、そんなに力を入れたら、あ、あんこが出る…」
 「ご、ごめん!」
 黒いたい焼きの形の良い濡れた唇から、心から苦しそうな言葉が零れて、少年は慌てて力を緩めます。
 黒いたい焼きはその配慮に嬉しそうに瞳を細めて、ゆっくりと唇を開きました。
 「俺は黒いたい焼きと呼ばれていたものだ。お前が俺にキスをしてくれたからこの姿になれたんだ」
 黒いたい焼きは、少年に恋焦がれるように潤んだ瞳で真摯に見つめてきます。
 熱い視線を送ってくれる黒いたい焼きの姿に、少年もドキドキと大きくなっていく胸の鼓動を隠すことは出来ませんでした。
 「僕はただ君を食べようとしただけで、キスをしようとしたわけじゃないんだけど…」
 「それでも唇と唇が当たればそれはキスだ。古今東西、昔からキスでカエルが王子になったり、魔法がとけるじゃないか。その原理と一緒だ」
 「そうなんだ」
 少年にはいまいちわからない原理だったので、考えることを放棄して、とりあえずそういう原理なんだと納得することにしました。
 「俺はお前と話したかったんだ。真っ黒で不味そうな俺でも優しく声をかけてくれて、俺をこの姿にして話せるようにしてくれて有難う。お礼と言っては何だか、お前はたい焼きのあんこを美味しいと言っていたよな。俺は中身があんこのたい焼きだから、舐めるとあんこの味がするぞ。遠慮なく舐めろ」
 「え、ええ!?」
 少年も思春期だっため、目の前にいる綺麗な人(たい焼き?)に舐めろと言われると、思考はいかがわしい方向に向かってしまいます。
 体を舐めて良いと言われたら、目の前にさあ食べてと言わんばかりに視界に入る可愛らしい乳首を舐めたくなってしまうのが人情と言うものです。
 少年は黒いたい焼きの言葉にすぐさま同意して、胸元の乳首を攻める勢いで舐め始めました。
 「ん…んぅ…」
 少年が舐めるたびに、黒いたい焼きからは艶かしい声が零れます。
 たい焼きの唇から零れる熱い吐息が少年の頬にかかって、それがさらに煽るものでした。
 「う…まずいかも…」
 たい焼きが少年に舐められてぴちぴちと反応するたび、彼の下半身は色々とまずいことになっていきます。
 苦しそうにたい焼きから舌を離すと前かがみです。
 「ん…どうかしたのか?」
 舌の動きが止まると、たい焼きは舐められて反応した体を小さく震わせながら、少年に声をかけてきます。
 少年は理由を言うわけにもいかずに困った状態です。
 とりあえず何とか誤魔化さなければ、と思考を巡らせました。
 「あ、あのね…僕の名前は枢木スザクって言うんだ…」
 思考を巡らせて浮かんだ結果が、無難に自己紹介でした。
 「俺は、黒いたい焼きと呼ばれているが、俺を作ってくれた人は俺をルルーシュと呼んでくれていた」
 「ルルーシュか…宜しくね」
 「ああ、宜しく頼む」
 スザクは前かがみになり、苦しそうにしながらも何とか笑みを作ります。
 ルルーシュもスザクが笑ってくれたことが嬉しくて、ぴちぴち跳ねながらあんこのように甘い甘い笑顔を浮かべました。
 これがたい焼きのルルーシュと人間のスザクの出会いでした。
 これがまた恋に発展するのは別のお話です。



以前出したペーパーの小説を再録させていただきました。
たい焼きなルルーシュで本当にすみません…。
ルルーシュがたい焼きだったら最高に可愛い!!と妄想していたら、生まれた作品だったり…。
一緒にいた友人も、まさかルルーシュをたい焼きにするとは思っていなかったらしく、ちょっとビックリしておりました…でもたい焼きなルルーシュって可愛いと思うのです…!
甘くてふわふわ生地(ふわふわなのは暖かいとですが)で…!
ルルーシュなら何でも可愛いのですが、たいやきもまた可愛い!!