にゃんこと黒ラブ

猫達と黒ラブラドール、チワックスとの生活、ラーメン探索、日常について語ります

井上雄彦『スラムダンク』よりブレイクスルーと快感

2020-12-16 18:52:00 | 日常

 私より少し下の世代(53歳)のマンガ家に井上雄彦という稀有なマンガ家がいる。彼はあまり知られていないが、鹿児島出身で熊本大学を中退して単身マンガ家目指して裸一貫で上京してきた。

 小中は剣道に打ち込み、高校からバスケットボールに3年間打ち込んだという。ほんとうは東京芸大で絵画をやりたかったみたいだ。

 そんな彼が20代半ばに『スラムダンク』という当時としてはそれまで成功した事のないバスケ漫画で大ブレイクして一世を風靡することになる。もう30年くらい前の話である。

 その後も彼は意欲的に『バカボンド』(宮本武蔵を題材)、『リアル』(車椅子バスケを題材)と大ヒット作品を生み出す。彼のマンガ家としての大成功は凄いのだが、ライフワークとしていくつか面白い取り組みをしてることに妙に感心する部分がある。








 その中で、スラムダンク奨学金なるものを開設した。アメリカのプレップスクール(大学に入るための準備スクール)にかかる学費、向こうでの生活費全てを返還なしで与える奨学金である。

 将来、プロのバスケットボール選手目指す若者を育成、援助したいと名乗りを挙げた。もうすでに何人もの高卒者がこのスラダン奨学金を受けて渡米している。日本に帰国後、トップリーグや現行のBリーグで活躍する選手もいる。

 バスケ漫画で億万長者となり、その一部でも今後の日本バスケ界に貢献したいと、バスケットボールに恩返しする試みを実践してくれている。








 こういう練習をすれば必ず上手くなる、ということを教える側はきっぱりと断言できるし、教わる側はその言葉を信じることができる。

 なぜそういうことができるかというと、身体運用の場合は「うまくいった」ときの快感というものが強烈な身体記憶として、教える側にも教わる側にも個人的経験として共有されるからである。

 「できた!」というときには、その達成がもたらす身体的快感が記憶される。その種の快感をそれまで経験したことがない人は、それを求めて熱狂的に練習するようになる。

 スラダンの主人公「桜木花道」は、高校からバスケを始めた初心者である。一つ一つまさに「できた」という成功体験と身体的快感が狂気的な練習へと向かっていく。

 運動も勉強も集中的な鍛錬や修行によって、それがもたらすブレイクスルーを可能にするのは、ある段階、段階で経験した強烈な快感の記憶である。

 身体運用を動機づけるのが、「私の身体にはこんな動きができる潜在能力があったのか!」という発見の快感であるのと同様に、知性の運用を動機づけるのは、「私の脳にはこんなことを思考できる潜在能力があったのか!」という発見の快感である。

 身体的な達成感を獲得する方法については多くの経験的データとそれに基づく適切な指導方法が存在するけれども、「脳が加速するときの快感」、「思考にアクセルがかかる感じ」については、書かれたものも語られたものもほとんど存在しない。

 スラムダンクには、桜木花道だけではなくその周りの登場人物が更生して組織的にブレイクスルーしてゆく様が素晴らしい感動を呼ぶ。たまたまバスケットボールという競技を通じてであったが、部活動のみならずあらゆる組織で模範となる要素をたくさん含んでいた。

 もう続編はない。青春の瞬きする時間だからあのような強烈な快感とブレイクスルーが達成できたのだと思う。




博多麺房『赤のれん』@東京都千代田区丸の内

2020-12-15 16:46:00 | ラーメン探索

 菅内閣が決断力なく、優柔不断な後手後手内閣だと今回のGOTO対応でよくわかった。内閣が依頼して組織したコロナ対策組織の医師の方々や各都道府県知事の方々は特に実感されたことでしょう。

 大手町から東京丸の内まで歩いた。コートなしでもお昼時の風は心地よい乾いた空気感だった。丸ビルの飲食店フロアはガラガラだ。昔、連れと何度かランチ食べに来たときとは別世界だった。

















 大手町あたりに美味しそうなラーメン屋ないか検索していたら「赤のれん」の文字見つけて即決した。

 昭和50年代後半に、長浜地区の元祖長浜屋、とん吉、中洲の大砲ラーメン、天神の赤のれんにはよく足を運んで食べたものだ。その当時は替玉2回してもワンコイン以内でお腹いっぱい食べられた。

 綺麗とは言えない古ぼけた食堂みたいなテーブルや屋台でドカンと巨大タッパに紅生姜が山盛りあって、辛子高菜も食べ放題だった。何も言わずテーブルに着くとすぐ豚骨ラーメンが運ばれてくる。

 替玉する人は、「バリ」とか「カタ」とか言えば通じる。たまに「ハリ」と申告する人がいる。たぶん茹で時間は10秒くらいだろう。ラーメンは安くて美味くて庶民や学生の貴重な食事だった。



















 味だけは懐かしい美味しい味だった。替玉を2回もしたが、麺量が少なくてお腹一杯にはならなかった。

 丸ビルの中の飲食店では安い方かもしれないが、私の中ではどうしても昭和の福岡で食べた青春のラーメンといろんな事を比較してしまう。

 丸の内のビル群のお洒落なところで食べる博多ラーメンはどこか何か違う。料理や食事には味だけでない雰囲気や思いがついてくるのだろうか‥‥。

 今も「赤のれん」本店は、福岡市天神にあるのだろうか?
 あるとしたらラーメン一杯いくらで出してるのだろうか?替玉はいくらだろう?

 ラーメン一杯800円、替玉1つ150円は東京のラーメン屋としては標準レベルである。1100円のお会計をしながらふとそんなことが頭をよぎった。

 東京での店舗料は計り知れないものだ。まして、東京駅前の丸の内ビルディングである。ざっと50席はありそうな巨大席数と従業員が何人もいた。かかる経費は大変な金額になるのだろう。

 完全リタイアしたら必ずや福岡を訪れて青春のラーメン行脚で味わいたい。豚骨ラーメン退職旅なるものもいいもんだ。生きていれば学生時代の仲間にも逢える。

 ご馳走さまでした。東京で本場博多のラーメンを求めてはいけないということなのだと思った。







 

知の巨匠『ひきこもれ』『老いの幸福論』吉本隆明

2020-12-14 19:05:00 | 日常

 学生時代、文系、理系問わず様々な学部学科の学生が同じサークルで活動していた。文学部の先輩が吉本隆明氏やデビューしたばかりの村上春樹氏について熱く語ってくれて、その後も長きに渡り追っかけて読んだ。

 私のライラワークに文芸(文学)と音楽は友人や先輩の影響を受けて、自分の専門とはかけ離れたところで人生に楽しみをもたらしてくれている。

 先輩がバイト外せないからと、吉本隆明氏の講演会にカセットデッキ持ち込んで何度か潜り込んで録音を頼まれた。その当時、福岡県小倉で講演会(無料)があって聴講して来たが、その内容についてはさっぱり分からなかった。

 しかし、このおっさんは只者ではなくよく分からないが直感的にとんでもない広大な領域でオリジナルな凄い研究をされていることは肌で感じ取れた。

 それからというもの、何度も何度も「共同幻想論」、「言語にとって美とは何か」、「心的現象論序説」を精読してみるが、あまりに壁は高かった。それでも惹きつける凄さや隆明氏が掴んでいる真髄に少しでも触れたくて今なお心に刻まれて憧れている。








 そんな隆明氏が晩年(70代から80代)に書いた書物は非常にわかりやすくて身にしみる作品が多い。

 ひきこもりが社会問題に表面化し始めた20年くらい前に書かれた作品。自分もひきこもり気質の人間だと吐露しながら、ひとりの時間をもつことの大切さ、いつかは自分なりのフィールドで社会と接点を持てばいいと、押し付けない大丈夫感で励ましのように聞こえる。







 今では、エネルギッシュな20代に隆明氏の40代後半の姿、肉声を聴けたことは夢のようだった。こんなに凄すぎる独学おっさんはもう当分この日本には現れないだろうと思う。

 隆明氏の書物や研究がほんとうに評価されるにはまだ半世紀以上かかるだろう。日本の学芸研究が追いついていないとまで思っている。

 「老いの幸福論」これも20年ほど前に書かれた作品。老いるということはどういうことか、その中で少しでも幸せに老いるためには何を心がけたらよいか、今の私のバイブル(人生指南書)になっている。








野菜たっぷり鶏白湯そば『孝蘭』@東京都葛飾区立石

2020-12-13 13:20:00 | ラーメン探索

 12月半ばだというのに穏やかな小春日和の日曜日だ。午前中にお決まりの洗車済ませほぼ地元の京成立石へ。

 きれいな街とは言えないが昭和のレトロ感アリアリの下町だ。この地域に住み慣れてしまえば妙に落ち着く哀愁ある街並みで、裸でなければ何を着て出かけようが誰も気にする人はいない街だ。

















 ラーメン専門店にはない、中華料理屋だから出せるオリジナルラーメンがある。だから食べログなどのラーメン部門には掲載されていない。でもほんとうに美味しい創作ラーメンがある。

 野菜たっぷり鶏白湯そばと麻婆ラーメンと迷ったが、前者を選択。昨日食べたあご出汁鶏白湯と比較してみたくなった。先ずは生ビールと前菜サラダから。中華というよりイタリアンみたいな味付けだ。















 これは参りました。私が今まで食べた鶏白湯スープの中でもダントツに美味しいスープ。これほど鶏の旨味だけをストレートに出汁切ったスープは初めて出会った。薄塩で胸がスッとするクリーミーな鶏白湯スープだ。

 野菜も白菜、にんじん、キクラゲ、キャベツ、マッシュルーム、しめじととても良い味出している。鶏肉の千切りが山盛りあって麺と絡ませて食べるとホント美味しい。

 貪るように最後の一滴まで食べ尽くしてしまった。食べログ評価3.9の超行列店に負けないくらい美味しいラーメンだった。













 ご馳走さまでした。大満足の一杯でした。また来年お世話になります。



鶏白湯あご出汁ラーメン『ばらや』東京都江東区東陽町

2020-12-12 17:19:00 | ラーメン探索

 12月から新規オープンしてお昼時は5、6人が並んで待つようになったみたいだ。オープンして最初の2、3週間は新規のお客さんが来る。年が明けた1月くらいからおそらく真価が問われる。

 オープン日にお邪魔して、スープの量が少ないのと熱々でなかったことが非常に残念であったが、2回目の訪問でどうだろうか?今回改善されていなければもう行くことはたぶんない。














 今回は、4種類(あご出汁、背脂中華そば、鶏白湯、辛子味噌)の中から鶏白湯をオーダー。行列店で流行りの和え玉も追加オーダー。

 この前書いた記事を読んでいただいたのだろうか、スープが熱々でたっぷりではないが十分入っていた。何より、鶏白湯にあご出汁が絡まってとても新鮮なオリジナリティを感じる。

 塩加減とちょうど良いスープになっていた。このレベルならかなりのお客さんを満足させられるだろうと思う。













 チャーシューは非常に柔らかくてよい味付けだ。和え玉は非常に薄味で微味だった。あご出汁油があっさりとした身体によさそうな油に思えた。

 今度年明けには3回目の訪問が決まりです。背脂中華そばを次回いただきます。
ご馳走さまでした。美味しかったです。