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タイムを作るためのラインの検討

2006年10月11日 | 中級テクニック
 10月8日に行われた貸切中級クラスのコースレイアウトです。かなり長い時間をかけてじっくりと走りこめたので、走っている間にかなりのタイムの改善をすることができました。
 そこで今回はタイムの作り込みの手順と考え方についてご紹介したいと思います。
 もちろん、これは今回のコースにおける私自身のケースであって、車種車両、グラウンド条件、ライダーのスキルなど、諸々の条件によって考え方は変わってきます。唯一の答えではないし、人によっては有効でない方法も含まれている可能性があるという前提で読んでいただくことになります。また私は以前にご紹介したようにタイムを測っていますので、このやり方が「きれいで、スムーズで、気持ちの良い」方法であるとは言えない可能性があります。主観的に考えてスムーズではなかったがタイムは出た、ということもあり、測っていない人には納得できないことも起こりえます。

 さて、当日は、前日の大雨による冠水の名残で、新コース側は路面が茶色くなっていて、場所によっては砂が浮いている状態でした。ですから当初はかなり探り加減で走り始め、周回を重ねた結果、ライン上の砂が消え、またグリップ状態が完全に確認できるようになりました。そういう意味でいつもより慎重にラインを探っていったことは確かです。車両はCB900です。コースは推定ですが周回で730メートル、実走行距離が700メートルくらいで、当初2、3周目のタイムが87秒、最終的には81秒位になりました。平均速度が8.1メートル/秒から8.6メートル/秒で、新コースに間隔の広いオフセットがあるため比較的速いコースとなっています。コースの設計はY下さんの担当でした。

 冒頭の図は当初の走り始めのラインを描いたものです。コース案内でガイドされる通りにまずは走り出します。1周目は様子見で、89秒位のスタートになります。2周目はラインについてはあまり考えずに、加減速や倒し込みの感覚を高めるようにして、パイロンなりに走っていきます。ここでの87秒という時計が実質的な最初のタイムになります。ここからラインを考えてタイムを追求する作業が始まりますので、以下は番号を打った図で説明しましょう。



1)最初に確認するのは明らかに仕掛けられているパイロン設定のセクションです。このコースでは③④のセクションと、⑮⑯⑰のセクションです。③の2本並んだゲート状のパイロンは「通り方を考えてね!」というイントラさんからのメッセージです。大抵の場合、2本並んだゲート・パイロンは、「2本の間を直角に通りなさい」と言っているように見えますが、実は逆で「ゲートの手前で進入角度を作ってからゲートを通りなさい」というメッセージなのです。ゲートをくぐってしまってから方向転換すると苦しくなるというサインであることが大半です。ここでも例に漏れず、③のゲートの手前で小さく左旋回を行うと④の2本目のパイロンに向って真っ直ぐ走ることができるラインがあるのです。下図左、ラインXだと④の2本のパイロンに対して切り返しを行わなければならないですが、右図のラインだと④の1本目のパイロンを無視することができます。その分、しっかりアクセルを開けていくことができます。


 ⑮⑯⑰は、普通の切り返しですが、⑮と⑰に回転半径を広げるための制約のパイロンが置かれているので、「コーナーの半径を広げることで難しくしましたよ」というメッセージを伝えています。そこで⑮に対しては少し大回りのラインから入って旋回の速度を高め、⑯まで速度を維持できるようにします。また⑯から⑰に対しては成り行きでパーシャルのまま切り返すと旋回半径が大きくなっている分ダラダラするので、ここはコーナーを分けて⑰に対してしっかり加速して⑰を小さく回るようにします。
 この結果、1秒くらい、タイムが縮まりました。

2)次に、最近のK島さんの薫陶を受けている「つないで回る」走り方が気になっているので、それを検討します。⑪、⑫のセクションがそれに該当します。下図を参照してください。コース案内では左図コースXに近い走り方でした。パイロンを見て、それを追いかけて走るとそういうラインになります。しかし⑪へのアプローチは大変長い直線になりますので、アプローチスピードは大変速いスピード域からしっかり減速するところまで自由に選択することができます。


 そこで、二つのラインを試してみます。ラインXのコーナーを二つに分けて直線を作って加減速をするパターンと⑪と⑫を一つのコーナーに統合してパーシャルで旋回する大きなコーナーにするパターンです。このケースでは、高い進入速度を作ることができ、またフルバンクで回り切るとちょうど⑫の次のパイロンに差し掛かる回転半径となったため、ラインYが非常に効果的でした。それだけでコンマ5秒かコンマ7秒ほど違ったようです。この状態で何周も回るのですが、85秒くらいの水準から改善されなくなります。そのため、考え方を変えざるを得なくなります。

3)第三段階としては、アクセル、ブレーキの程度を全般に高めていくことを考えます。ここまでに、ラインの路面がきれいになり、グリップが余り変わらないことが確認されてきます。そこで直線部分でのアクセルの開けを強め、ブレーキングポイントを遅らせて、より、メリハリの効いた走行を目指します。⑤⑥のUターンをはさんだ直線部分での加減速とか、新コース側の間隔の長いオフセットの折り返しがそれにあたります。さらに、この段階で、加減速以外にも幾つかの新しい改善点が出てきます。
 例えば⑦の直線パイロンスラロームです。これは概ね7から8メートル間隔の3本のパイロンが立っています。これをパイロンが導く通りに走ると下図ラインXのような左右に滑らかに振ったラインになります。ところが現実には⑥から⑦に向けて全開に近い加速で走るとバイクを立てたままで⑦のパイロンに対してバイクを右に振ることができます。で、そこでブレーキをカツンとかけてそのタイミングで左に振ればこの3本のパイロンはクリアすることができることがわかります。「く」の字のラインで乗り切るわけです。これはバイクを立てたまま進路を変更するので「きれいな」乗り方ではないですが、速い走りになります。

 また⑩のUターンは、通常であればパイロンに近付いたところでターンするのですが、その部分の路面が荒れていることがわかりました。以前の冠水の時にアスファルトが割れて補修した後遺症です。そのためリアが跳ねてブレーキが甘くなるのでこのパイロンだけは、緑の■で示した部分を避けて右よりにラインをとります。
 ⑬のパイロンは、その前のセットと違っていきなり180度オーバーのUターンになるので、早めに目線を次のパイロンに送るように意識して走ります。
 その他⑧のコーナーはどの程度の膨らみで走ることができるかを試します。
 

4)さらに煮詰める部分が最初のコーナーです。ここは実は初めからわかっていることなので、本来は1)の段階のテーマで「イントラさんのメッセージを読む」という範疇に属します。ただ、それは丁寧な走りをするということで、他の問題が片付いてから取り掛かろうと考えていたテーマです。
 スタート直後は大きなUターンになります。この場合、旋回速度まで加速するのが一杯一杯で、そこからアクセル全閉のエンジンブレーキを使う旋回をすると失速してしまいます。(下図ラインX)
 図の黒破線の部分では失速しているのでアクセルを開けるとギクシャクし、そのままでいると失速してバイクを立ててアイドリングのままバイクが次の目的に向くまでなすすべがなくなります。



 これに対する対策は、
ラインY:コースにこだわらず、十分な加減速ができるところまで奥に突っ込んで、そこでブレーキを使って小さく回る。奥を余計に回ることになるが、メリハリを優先する。
ラインZ:アクセルを開けると同時にリアブレーキを踏んでスピードを抑制しながら旋回する。
ラインXA:加速していてバイクは倒せないのでリーンインの態勢でハンドルを切って旋回し、旋回速度を維持することで早めにパーシャルのアクセルを作り回りきる。
 で、私としてはラインXAで走ることにしました。
 ちなみに図の赤実線はフル加速、赤破線は抑えた加速、青実線はフルブレーキ、青破線は曲がるためのコントロールされたブレーキ、青破線と赤破線が複合しているのはリアブレーキを踏みながらアクセルを開けている旋回、緑破線はパーシャルによるコントロールされた旋回、黒破線はアクセルコントロールされていない旋回を意味します。
 ここまでで、84秒を切るところまで来ました。ここで休憩になりました。

5)後は全体を詰めていく作業になります。上に述べたような概ね8箇所から9箇所のチェックポイントを全体に詰めていきます。ここで、82秒を切るところまで追い詰めていくことになります。結果としては、上級を走るKさんに後を走ってもらったときに、そのプレッシャーが生きて81秒までいったのですが、その後2周はタイムが上がらないまま、82秒くらいの走行で終わりました。ですから、この辺が最終的な実力値ということになります。

 今回は、じっくり検討する時間と周回数があったと思います。いつもの体験からするとここまで追い詰めることなく時間切れ終了となったでしょう。
 なかなか良い経験でした。


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4 コメント

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Unknown (かんじ)
2006-10-12 11:20:41
@sushiさん、こんにちは。貸切では前や後を走っていただき、ありがとうございました。私は最近600に乗り換えたのですが、それまでは半年位1000に乗ってました。同じセパハンとはいえ、まだポジションなどに慣れておらず、基本のAのラインで走ってるつもりが、ハンドルを押さえつけてしまって、結果的にBの定常円旋回になってるようなのです。しばらく上体の力を抜いて、ゆっくり走ろうと思います。貸切のコース解説では、タイムを縮めるために、1つ1つの課題をクリアしていく過程が面白かったです。@sushiさんはジムカーナ大会に出られてますか?
>かんじさん (@sushi)
2006-10-12 12:11:05
こんにちは。こちらこそ大変お世話になりました。

このコースは休憩を挟んで2時間位走ったでしょうか。時間が長かったので色々工夫する余地がありましたが、普通は6秒もタイムが縮まることはないです。



私は一発勝負よりもじっくり繰り返して積上げる方が好きなのでジムカーナにはあまり関心がありません。きっとガタガタになるでしょうね。



お疲れさまでした (RR)
2006-10-13 19:30:29
こんにちは。8日はいろいろとありがとうございました。

blogで目にしたテーマや仕掛けを随所に発見、ヘルメットの中で一人ほくそえむRRだったのですが、、、参加者の多くが私よりずっとディープにここを読み込んでいたという…





気持ちよく走れなかった⑮~⑰、工夫できそうなのだけど未消化のまま終わった⑥~⑧をもう一度走ってみたいなあ。

毎回異なるバイクに乗る今の参加スタイルだと問題の輪郭がぼやけるので、次回からは練習車両を絞って取り組もうと思います。またよろしくお願いします
イントラさんの仕掛けにはまりましたね! (@sushi)
2006-10-13 23:06:56
 この日のコースレイアウトは、たくさん仕掛けや工夫のしどころがありましたね。皆さん、楽しまれたのではないでしょうか。



 車種はあんまり浮気しない方が良いですね。テーマを決めたらそれに合う車両を選んで、そこで納得いくまでは練習を積み重ねたら良いと思いますよ。私も今はそうしていて、CB900に集中しています。

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