転生の宴

アヴァロンの鍵対戦会「一番槍選手権」を主催するNishiのブログ。最近はDIVAとDBACのプレイが多めです。

COJショートショート:リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド(その7(最終話))

2015-04-26 03:23:18 | 創作物(M・o・Aちゃん他)
昨日も例によって夜から吉祥寺へ。
COJはパックを剥いていたのですが6クレジット(通算39クレジット)でこれといった成果は無し。
《スピリットアックス》や《闇取引》などの空気VRばかり出てくるので、
割りと凹んでいますが地道に集めてゆくつもりです。

さておき前回から1ヶ月以上も経ってしまいましたが、
ショートショートの最新話です。
連載作品「リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド」の最終話をお送りします。
お楽しみ下さい。

◎過去作品

○連載もの

・クエスト・フォー・ザ・ムーン(全7話)
その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7(エピローグ)

・ロボトミー・ソルジャー(全4話)
その1
その2
その3
その4

・メリー・クリスマス・フロム・アルカナ(全2話)
その1
その2

・リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド(全7話)
その1
その2
その3
その4
その5
その6

○その他エピソード

・バトルトーナメント:あなたが決める禁止カード(連載再開未定)
その1
その2

切札戦士 ジョーカー13(ワン・スリー) 第14話

エージェント・イン・スイムスーツ
イーリスの物語

<<<リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド その7(最終話)>>>

作:Nissa(;-;)IKU

――

未だに炎に包まれている廃工場に、消火液を放出する存在があった。セーラー襟の上着に濃紺色のタイツ、頭にはキャスケット、そして目にはオレンジ色に輝くゴーグル――「天鳥 烏兎」である。普段はライフルとして使う装備「飛び道具」を、ここでは消火器として使用しているのだ。

千年以上も途絶えていた「後継者」の顕現は、烏兎に新たな使命を与えた。この地――現実世界の人間からは「アルカナ」と呼ばれているものだ――を侵略者による破壊から救い、長らく封印されていた力を蘇らせる。その為には烏兎の様な「原種」の力が必要なのだ。

消火活動が一段落したところで、烏兎は通りの側に視線を移した。まだ人の気配が残っている。そのうち1人はつい先日会ったばかりの青年のもの、もう1人は青年に近しい少女――恐らく妹であろう――のものであった。その少女の気配には烏兎に対する好意が込められていた。

「後継者」によると、この地にはしばしば侵略者と戦う「協力者」が訪れるとのことである。「原種」が外部からの「協力者」と共闘した例は歴史には残されてはいないが、想定されていたことではある。今までにない連携が必要となるであろう。

烏兎は通りに降りると、ライフルを腰に戻した。直後、ライフルの筒は炎を噴出し、烏兎の体を宙に浮かび上がらせた。歴史に封印された伝説の飛行技術、「飛び道」――現実世界での物語は、「原種」である烏兎にも力を与えていたのだ。

やがて烏兎の姿は雲に隠れて見えなくなり、後にはまだ煙を立ち上らせ続ける工場が残された。その煙も次第に小さくなり、微風に流されて消えていった。

――

新小岩港に建てられた廃倉庫。その地下に隠された一室で、ナイトシェードはホログラム端末に向かっていた。この日の視察の報告の為である。

現実世界とアルカナを繋ぐ「ゲート」の安定度の問題、オフィスのシャッターの突然の誤動作、「ファイアーウォール」の正常な起動、そして都心での工作用「ロボット兵」の壊滅――報告内容は多岐に渡った。

だがその報告に、かの異常事態を引き起こした「潜入者」について書かれることは無かった――当然、「京極院 沙夜」の名も。

かつて「鈴森 まりね」と呼ばれていた少女はリバースデビルの手にかかり、残忍冷酷なるエージェント「ナイトシェード」に成り代わった。精神的手術により、彼女の純真な心は墨を吸った絹糸のごとく、闇に塗り潰されてしまったのだ。

だがその全てが闇に屈した訳ではなかった――沙夜の「復活」が微かに残っていたかつての記憶を呼び戻し、彼女の秘密――電子的ネットワークに対する「免疫」だ――の報告を未然に防いでいたのである。

恐らく明日には「鈴森 まりね」としての記憶は再び眠りにつき、「ナイトシェード」として新たな任務に赴くことになるだろう。だが端末に向かう彼女の中には、確実に「まりね」が生きているのだ。

(((沙夜ちゃん、ありがとう…)))無言で報告書を送信するナイトシェードの頬を、一筋の涙が伝った。

――

西東京の高層雑居ビル。緊急メンテナンスの為に全館休業となったこの日はどの店も照明が落とされ、フロアを横切る人の姿は見当たらない。

そんな中、17階にひっそりと建てられた喫茶店「スター」のカウンターでは、一人の男がノンカフェインのコーヒーを口にしていた。ASTのエージェントの一人で、つい昨日退院したばかりの仁である。、

「本当なんだな?これから沙夜がここに来るっていうのは」仁はカップをソーサーの上に置きながら、カウンター越しの若い男に訊ねた。同じくASTのエージェントで、前日の顛末を直に見て知っている光平である。

「にわかには信じがたい話だろうけどね」コック帽を被った光平は、食器を拭きながら応えた。「沙夜ちゃん自身が言っていたんだ、ちゃんと迎えに行かなきゃね」

二人は既に最近の状況について一通りの情報共有を済ませていた。置き手紙と共に病院を脱走した時矢の行方が未だに分からないこと、軍司の退院の目処が立ったこと、まりねが「ナイトシェード」の名でリバースデビルの一員として活動していること、そして沙夜――。

沙夜のアルカナ内における特異な能力はASTにおける重大機密である。死んだと思われていた彼女が生きて戻ってくるというのであれば、会見の為の特別な場が必要であった。

緊急メンテナンスの日程が組まれたのもその一環だ。この雑居ビル自体、ASTの秘密基地のカモフラージュであり、物理・電子両面の全面閉鎖によって理想の会見場所となるのである。

「確かに、あいつは『化けて出る』性格じゃないからなあ」仁は最初に沙夜と会った日のことを思い出した。あの歳不相応に落ち着いた雰囲気は、恨みつらみにまみれた悪霊のイメージから最もかけ離れたものであった。「だが、あの『密室』からどうやって抜けだしたのか――」

店の奥から物音がしたのは丁度その時であった。壁に仕込まれた隠しエレベータが開く音である。「ん?」二人は同時にその方角に向き直った。

現れたのは白いAST制服を身に纏った、銀髪の女――少女である。薄手の黒いタイツと銀色のパンプスのお陰で、その姿は年齢以上に大人びて見える。「沙夜!」「沙夜ちゃん!無事だったか!」二人は同時に声を上げた。

「急な呼びつけになったことをお詫びする」沙夜は改めて二人に一礼し、カウンターへと向かった。「今いるのは光平と仁の2人じゃな」

「こっちも色々あってな」仁はアタッシュケースからメモ帳と万年筆を取り出した。恐らくここでの会見は重大な転機となろう。「光平、録音を頼むぞ」光平は小さく頷くと、棚の上に隠された磁気テープレコーダーを取り出した。

――

駅へ向かういつもの帰り道を、愛美は一人で歩いていた。この日は藤色のワンピースを身に纏っていたが、キャスケットやタイツはそのままであった。その姿は「天鳥 烏兎」の作中でしばしば見られる「変装」を思わせた。

駅前を賑わせていた、あのデモ活動の音声が無くなってから数日が経っていた。「烏兎」への敵意をむき出しにした女達による、あの恐ろしい抗議演説。だがその日の出来事を、愛美は未だに忘れることが出来ないでいた。

女達を追って公園に入ったら廃墟の様な街並みに迷い込んだこと。こちらに気づいた女達に取り囲まれ、捕らえられたこと。ホログラムで現れた、親玉と思われる仮面の女。このまま連れ去られるかというところで、「お兄ちゃん」が助けに現れた。

目まぐるしい勢いで繰り広げられる戦いは、女達が工場に向かって走り去り、爆発していったことで終わりを告げた。ホログラムで現れた、さっきとは別の少女の持つ、独特な雰囲気が心の奥で引掛かっていた。

体が重くてうまく動けないところを、「お兄ちゃん」に背負われた――覚えているのはここまでだった。そして目を覚ました時にはいつもの寝室のベッドの中だったのだ。「お兄ちゃん」にも話してみたけれど、「そういうリアルな夢って、よくあるよね」とはぐらかされてしまった。

図書室の「烏兎」のコーナーも、気づいたら元通りになっていた。司書の先生によると先日のクレームの主からも「軽率だった」と直に謝罪の電話があったのだという。気が付くと何もかもが元通りの日常に戻っていた。結局あれは夢だったのだろうか、それとも――。

駅前の交差点が見えたところで、一人の少女とすれ違った。銀色に輝く長い髪。黒い和服姿ではあったが、裾の間からは黒いタイツに包まれた脚を覗かせていて、さながらフロントスリットのドレスを纏った貴婦人である。その姿は愛美にかのホログラムの少女を思い出させた。

振り返ると、少女の姿は既に見えなくなっていた。人通りの少ない坂道で、人混みに紛れた様には見えない。何処かで横道にそれたか、それともただの見間違いだったか。もし道を戻れば、彼女を追うことも出来たかも知れない。

愛美は少女を追うことを思いとどまった。いつもの坂道が、突如安易に足を踏み入れてはならない聖域の様に見えたからである。彼女を追ってはならない、今はその時ではない――周りの景色がそう押しとどめている様に、愛美は感じた。

交差点に向き直り、いつもの駅舎が見えたところで、愛美は現実に戻された。最早あの恐るべきデモ隊の姿は無く、いつも通りの有線放送による音樂が駅前を彩っていた。

見慣れた光景が、先日「お兄ちゃん」が話した引越しのことを思い出させた。仕事の関係で西東京まで引越すことが決まったのだという。急な話だと申し訳無さそうに詫びる表情が、何故か心の片隅で引掛かっていた。

しかし愛美には特に不安は無かった。住み慣れた街並みを離れるのは寂しいけれど、新しい街での新しい生活に対する期待の方が大きかったのだ。長くなるであろう通学時間も、ちょっとした小旅行をほぼ毎日出来ると、前向きに捉えていた。

交差点を渡り、駅舎へと向かう愛美。その頭上では一番星が、彼女を見守るように金色に輝いていた。

<<<リターン・フロム・ザ・ドラゴンズ・ヘッド おわり>>>

――

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