不器用なヒトたちが支えてきた美しい日本

1999年、２兆円の負債を抱えた日産自動車は自主再建を断念しフランス
ルノー社の傘下にくだった。日本屈指の草分け的自動車メーカーがだ。
不沈艦も沈むときを知り、当時の塙社長は最善の道を選んだと思いたい。

あれから10年、
徹底したコストカット(下請)＆資産(含む技術)の叩き売りにより生み出された
利益はベア満額回答・ボーナス最高額などに反映され、いたずらに社員を
浮かれさせた時期もあった。が、今また経営危機が噂されている。

アメリカに端を発した世界的自動車業界の不振に加え"技術の日産"が持てる
技術を売り払い、残ったのはゴーン氏好みのデザイン重視の販売戦略だけ。
ゴーン氏の見据える販路は日本ではなく、後進国や発展途上の海外だろうが
日本で売れない車が世界で売れてもそれは"日本の車"ではない。

日産の2009年の第１四半期の決算は165 億円（1億7千万US ドル）の純損失、
前年同期は528億円（5億4千万US ドル）の純利益だった。
2008年３月期に過去最高の売上高、営業利益を計上したトヨタ自動車でさえ
2009年度は度重なる下方修正の結果、大幅な減益・減収が見込まれている。

利益率が薄いハイブリッド車がいくら売れても全体的な収益は悪化するばかり、
今が過渡期などと呑気なことを言っている自動車メーカーは後発ながら高品質
・低価格で押す海外ブランドに先を越されるだろう。プラグ・インしかり。

押しなべて製造業は不況のしわ寄せを受けやすいと言われている。
が、はたしてそうなのか。大企業になりすぎた製造業の硬化体質がこの不況に
拍車をかけているような気がしてならない。生産と販売を系列企業として分割し、
完全独立企業にしているところが構造閉塞のネックになる。

造るはじから売れるバブル絶頂期ならいざしらず、生産調整に社運がかかる昨今、
販社との連携が密でない企業はここが正念場。本来は長期生産見通しに則って
生産ラインを組む製造メーカーが、生産見通しの誤りでライン調整に後手を踏む。

販社の行き当たりばったりの販売予定申告も悪いが、数字を鵜呑みにしリサーチも
疎かで、生産適性数字を察知できないメーカー担当部署の不明もある。
原因錯綜のクロスリンクは末端から壊死していき経営首脳陣が気がつくころには
既に手遅れになっている。

会社の創世期を築いた叩き上げ団塊世代の多くが定年を迎え、ここで富める者と
そうでない者が道を分かつことになるのだが、リッチな老後を過ごす者はごくわずか、
その多くは高齢者再雇用制度の恩恵に預かり食うための職にとどまる。

砂糖などの生活物資が店頭から消えた昭和48年の不況を知る輩たちが非情な
リストラの波に呑まれ、あとに残るのは疲弊した中堅社員と世間を知らぬ新人たち。
この状況で･･･チャンスは誰にあるのか？

それは間違いなく入社したての新人だ、マッサラは無限の可能性を秘めている。
この不況下で思い通りの企業に就職できた者は千載一遇のチャンス到来と思い
仕事に精進されることを願う。この先しばらくは集合離散をくり返し自然淘汰の
あとに体質強化された企業が残っていく。

終身雇用もナシ崩し的に変化していき能力本位の年収制度が大企業はもとより
中企・零細まで及んでいくだろう。
即戦力として期待されるのは、現実に即した意識変化と当意即妙な判断力を持ち、
バランス感覚に長けた人間だ。

DOS型不器用人間には厳しい世の中になる。
しかし、そういう不器用なヒトたちがこの美しい日本を支えてきた。
10年・20年と手を掛け愛して乗れるシンプルで無骨な日本車を新しい時代の
職人達に造って欲しい。モノ造りNIPPONの原点に立ち戻りながら...。