負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

英国海軍大将は暗号の日記で好色本について書き残した

2005年01月25日 | 詞花日暦
十七世紀英国には……ポルノグラフィは
なかったと多くの人が考えてきた
――D・フォクソン(書誌研究家)

 奇特な研究家がいるものだ。匿名詩人のことを調べるため、大英博物館の図書館で古い新聞と格闘していたフォクソンは、「デイリー・アドバタイザー」紙の広告欄に英訳本『ヴィーナスの学校』の発売が告知されているのを見つけた。一七四四年八月二十五日付の新聞である。
 これをさかのぼり、十七世紀の英国にはポルノグラフィがなかったとする通説がくつがえることになった。ただし同じ十七世紀、政府の要職(海軍大臣)につくサミュエル・ピープスの高名な『日記』には、彼がこの本をこっそり購入し、一読後、燃やした事実を書き残している。暗号で書かれた彼の日記が出版されたのは、ずっとのちのことである。
 ピープスが本屋で見つけた『ヴィーナスの学校』は、裁判で焚書され、破棄されたフランス語原本『娘たちの学校』のオランダ製海賊版である。同じ本が貸本屋の手でルイ十四世の宮廷に勤める女官達に渡り、回し読みされていた。秘密文学は、文学史の正史の裏側でいつの時代も密かに読まれたようである。

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