負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

大衆好尚の三幅対はホラーとポルノと推理小説である

2005年01月27日 | 詞花日暦
怪談と艶話……茶前酒後落ちゆくさきは
必ずやここに集まる
――日夏耿之介(評論家・詩人)

 日夏耿之介は大正時代に発表した『黒衣聖母』などで、高踏的な詩人として知られている。一方、文学の正史が取り上げなかった古今東西にわたる神秘・怪異・幻想文学に深い理解を示し、数おおくの評論を残した。その指摘は、たとえば幸田露伴の「対髑髏」などには「知性の弄戯」があって、怪談の興を減じていると的確である。
 つまり、怪談や艶話は知性とは無縁、あくまで人間の本能や怪異への篤信に根ざすのがいいといいたげである。かつての知性に根ざした文学が読まれなくなった昨今、「浮世話の二大テーマ」はこの知性を排除し、感覚に頼ったホラー小説や官能小説に集約している。書店に山積みになった小説には、この種のものの数が圧倒的におおい。
 ついでに日夏は、「これに犯罪探偵譚を加えれば、まさしく大衆好尚の三幅対が出来上がる」とも付け加えた。高踏派詩人の高みから見晴るかす恐怖小説、官能小説、推理小説は、知の崩落現象によって起きた小説隆盛のありようでもある。

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