負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

五○年代に書かれた人工現実

2004年06月18日 | 詞花日暦
買い手のあるかぎり、科学がつくり
出せないものは絶対にありません
――R・シェクリイ(SF作家)

 SFは堅苦しい技術用語やたあいない架空話でつまらないという先入観があるなら、一度、ひまなときにロバート・シェクリイの短編集を立ち読みしていただきたい。一九五○年代を代表するアメリカの作家で、ユーモアや風刺や叙情にあふれた作品がおおくの読者を持っている。
「地球への巡礼の旅」は、若い男が星間行商人のパンフレットに触発され、農業を専業にしたカザンガ第四惑星から地球へ旅する短編。「戦争と恋愛はわが地球の二大生産物でね。地球創世の時代から、わたしたちはこの大量生産に従事しておるんでさ」。
 ニューヨークに降り立った青年は恋愛配給会社を訪ね、かねて夢見た月の夜、海辺で美しい女性と語り合う恋愛コースを体験する。しかしそれは、技術の力で「頭脳中枢を調整し、刺激し」てつくり出された感情でしかなかった。こんなものは恋愛ではないと叫んで、青年は地球をあとにする。アメリカのSFは、すでに五○年代、科学による人工現実世界を描いていた。

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