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ものづくり・工場改善 地元企業編 ⑧ 出石焼窯元 上田製陶所

2015年11月10日 | ものづくり・工場改善 地元企業編

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第262回記事(2015年10月26日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
 ものづくり・工場改善 地元企業編 ⑧
 
 出石焼窯元 上田製陶所 
 ~「一品入魂」で、純白の出石焼の伝統を今に伝える~
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◆はじめに◆
 豊岡市の旧出石町の観光客で賑わう市街から出石川を渡り、西に少し離れた福住地区を車で走っていると、山側に「これは何?」と思ってしまう奇妙なオブジェが見えてきます。それはレンガで組まれた徳利の形状をしたもので、なぜか屋根までついています。さてこれは何でしょうか?  
 
 それは出石焼を焼く窯でした。形状から徳利窯と言われます。かつて使用していたころは、徳利の先端には煙突用の土管が付いていました。焼き物を焼く窯と言えば、登り窯が有名ですが、全く形状が異なります。窯の中央部での外形は3.2m、残存する高さは4.75mと登り窯と比較すると小さめのように思われます。しかし、少ない燃料で高温に出来たようです。つまり、独特の形状は効率を考えたものなのです。
 この窯は昭和14年に築かれ、昭和45年まで使われていました。新聞記事にあるように、まさに「近代産業遺産」です。
 左側は、保存整備される前の窯
 この徳利窯で出石焼を焼いておられたのが「上田製陶所」さんです。そして今もこの場所で出石焼を焼いておられます。

◆出石焼の特徴と歴史◆
 出石焼の特徴は磁器の肌の「純白」さにあります。あるホームページには「その神秘的なまでの白さは他に例を見ないほどです。」とまで書かれています。また、「白磁の中の白磁」ともいわれることがあるそうです。白さの理由は、磁器原石である柿谷陶石が「白過ぎる白色」であるためです。我が家にも出石焼の焼きものがありますがその白さが際立っています。
 出石焼のもう一つの特徴が表面に施された精巧な彫りです。下記の写真では絹のような風合いの表面に実に精巧な花の模様が施されています。
 
現在、出石焼は出石そばの小皿・そば猪口などとして多くの出石そば屋さんで使用されています。
 
 出石焼と上田製陶所さんの歴史をまとめると以下のようになります。
 ①1789年 肥前の国の石焼職人の兵左衛門により磁器石焼が創始される
          (それまでの出石焼は土焼陶器でした)
 ②1876年 盈進社を中心に出石焼の改良が始まる
          (盈進社は明治維新の失職士族対策で設立された会社)
 ③1890年 上田製陶所創業(初代上田直蔵氏)
          (ちょうどその時に国会が開設されたので国会窯という)
 
 (参考資料②より。大正末から昭和初期の上田製陶所。中央に国会窯との記載がある。)
 ④1918年 出石焼隆盛を誇る(輸出が前年度の2倍に増加)
 ⑤1939年 徳利窯構築
 ⑥1980年 出石焼が国の伝統工芸品に認定される
 ⑦1994年 第4代上田実生氏が国の伝統工芸士に認定される

◆出石焼のつくり方◆
 出石焼は一般的には、
 土つくり→形つくり→加飾→素焼き→加飾蝋さし→施釉→本焼き→完成
の順番に行われます。(以下は参考資料③より)
 (1)土つくり・・・採石、砕石、脱鉄、脱水の工程があります。
  掘り出した柿谷陶石の中から良品を選別し、クラッシャー等で砕いて泥状にし、鉄分を除いて乾燥させます。
 とてもとても白いですね!
 (2)形づくり(鋳込み成形)
 鋳型に泥を流し込んで成型します。量産に向いています。
 他に、ろくろ成形の方法もあります。
 中央が成型品。両端が鋳形。
 (3)加飾(彫り)・・・・模様を彫り込む
 出石焼き特有の工程です。
 乾いた生素地を水で湿らせ専用の彫刻刀で模様を彫り込みます。
 右下に彫刻刀が見えています
 (4)素焼き
 約850度でゆっくりと時間をかけて焼成します。
 少し茶色っぽくなった?
 (5)加飾蝋さし
 削られた図柄に溶かした蝋を塗り、その部分だけに釉(うわぐすり)が付かないようにします。
 黄色い所が蝋です
 (6)施釉
 壷のなかにある釉を柄杓でかけます。
 
 (7)本焼き
 器を磁化させるて純白の器肌を得るため還元焼成をします。約1300度の温度で焼成します。
 
 (8)完成
  やっと完成です。ここまで1~2ケ月かかります。

◆出石焼の伝統の継続と革新◆
 一般的に伝統工芸品の伝統の継続は厳しいものがあります。出石焼でも平成20年に8軒あった窯元も現在(平成27年)4軒に減ってしまっています。理由は、需要自体の低下と、土器よりも高価格になる点と、後継者がいないといった事です。
 出石焼も江戸時代に興隆期がありましたが、明治初期には衰退していました。それを再度の隆盛に導いたのは桜井勉氏(日本の各地に気象測候所を設置するよう働きかけ、気象観測網の基礎を築いた人)を中心に盈進社という会社を興し、各地の陶工を招いて技術の向上を図ったからです。その結果、1904年開催のセントルイス万博博覧会では金賞を獲得するまでになりました。
 現在は、景気が厳しい中で、事業をされている窯では上田製陶所さんが一番長く(明治23年から)事業をされています。現在の第4代目の上田実生さんは、現在61才で、1994年には国の伝統工芸士の認定を経済産業省から受けられました。つまり、40才の若さで伝統工芸士に認定されたことになります。
 上田さんに作陶に当たっての信条をお聞きしてみると、
「出石焼の一番の良さはその白さです。この白さにこだわっていきたいと思っています。」
との答えが返ってきました。
 また、
「私自身、鋳込み成形よりも、ろくろ成形が好きで、鋳込みで同じ形のものを作るのではなく、ろくろで一つ一つの器の形にこだわって成形していきたいです。」
とのことでした。
 この2つのこだわりから、私は一つの言葉が浮かんできました。

 「一品入魂」

 これからも出石焼の火を絶やさず、出石焼の伝統を継続して、出石焼の技術を後世に伝えていっていただきたいと思いました。
 作業場での上田さんの作業風景

 作陶をされている作業場とは別に、出石町の市街地の店舗(下記地図参照。大変有名な辰鼓楼の近くです。)で色々な出石焼を販売されています。店舗に伺ってみると、出石焼の白さを生かしながら、現代の二―ズにマッチするように、新たな出石焼にも果敢にトライされているようように感じました。
 店舗内の商品陳列(1)
 店舗内の商品陳列(2) 

よろしかったら、一度立ち寄ってあげてください。

                                              井上三右衛門(記) 

参考文献
①出石焼:豊岡市商工観光部商工課、H20年3月発行
②出石焼の徳利窯:豊岡市立出土文化財管理センター、H25.3
③出石焼陶芸館(ドライブイン出石敷地内)展示 
④「ザ・たじま」但馬辞典:但馬ふるさとづくり協会、2013年版
⑤出石焼:フリー百科辞典『ウィキペディア(Wikipedia)』

PS
 「上田製陶所」さんは、現在は「上田陶磁器店」さんの名前で事業活動をされていますが、歴史的な点や伝統を守るといった点を考慮して「上田製陶所」さんの名前を今回は使用させていただきました。

上田陶磁器店さん住所・連絡先など
 住所:兵庫県豊岡市出石町田結庄21
 TEL:0796-52-2002(FAXも同じ)
 代表:上田実生
 地図
 
               


ものづくり・工場改善 地元企業編 ⑦ かみや民芸店

2015年11月09日 | ものづくり・工場改善 地元企業編

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第240回記事(2015年5月11日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定

 タイトル  ものづくり・工場改善 地元企業編  ⑦ かみや民芸店
       ~約300年の伝統を持つ麦わら細工を今に伝える~
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 今回の記事は半年に1回の豊岡市のものづくり関係の会社さんの紹介です。

<はじめに>
 旧城崎町は志賀直哉の「城崎にて」で有名なように、温泉の町です。もっと言えば、温泉のみの町です。その旧城崎町で「ものづくり」をしている会社さんを探すのは一苦労でした。そんな苦労の中でやっと見つけたのは、約300年の伝統を今に伝える職人さんです。
 今回は伝統工芸品の「麦わら細工」を製作されている「かみや民芸店」さんをご紹介したいと思います。

<始まりは約300年前>
 我が家には写真のような麦わら細工のきれいな箱があります。

 
 (幾何学模様がきれいな麦わら細工作品)

結婚時に家内が旧城崎町出身の上司の人からいただいた結婚のお祝いの品で、兵庫県の伝統工芸品の「麦わら細工」の箱です。約25年前に製作されたものなので、少し色あせてはいますが、当時は麦わら細工とは思えない鮮やかな色で、とても美しい幾何学模様の細工が施されています。
 この「麦わら細工」は、今から約300年前の江戸時代の享保のころ(将軍徳川吉宗の時代です)、因幡の国(今の鳥取県東部)から湯治にやって来た半七という人が、湯治の手なぐさみに、竹笛やコマに麦わらを貼り付けて売り、旅館代の足しにしたのが始まりといわれています。
 製造技術はその後長足の進歩を遂げ、箱や絵馬にもこの技術が使われました。そして、明治以降、城崎温泉に来遊する文化人の支援で、芸術性が格段の進歩をしました。明治35年(1902年)には万国博覧会で最高名誉賞牌を得ています。しかし、現在では日本の中で麦わら細工技術が残っているのは城崎温泉のみといわれており、兵庫県の伝統工芸に指定されています。

 
 (温泉寺内にある半七の顕彰碑。墓とも言われている。)

<技術が見られる麦わら細工伝承館>
 この「麦わら細工」の作品は、麦わら細工伝承館(TEL0796-32-0515)で見ることができます。

 
 (川ぶちに建つ白い土蔵の麦わら細工伝承館)

 1Fでは現代の職人さんが作り上げた作品が、2Fでは過去の職人さんがつくられた作品が展示されています。それはそれは、繊細な加工が施された芸術作品そのものです。また、ボール状の球面に模様の描かれた作品もあります。(どうして作製するんでしょうね。)さらに、シーボルトにより江戸時代にヨーロッパに渡った麦わら細工の復刻版も展示されています。
 
 私が特に注目したのは、麦わら細工の製作工程のビデオです。面白くて、ついつい約30分も見入ってしまいました。麦わら細工の技術ことが実によくわかります。

 
 (麦わら細工伝承館のパンフレット)

<技術の種類と製作工程>
 麦わら細工の技術の種類は3種類があります。
 ①編組物・・・ストロー状の麦わらを立体的に編み込んだもの
 ②模様物・・・麦わらのさやを開き、花鳥などの模様を桐箱などに張ったもの

 
 (左:麦わらと編組物の作品  右:模様物の作品)

 ③小筋物・・・麦わらのさやをきり開き、平行に並べ、幾何学模様を作り、張ったもの
         模様としては、市松模様やざらし模様があります
 具体的な作品は、冒頭の写真の箱の作品です。
 具体的に小筋物のつくり方を紹介しますと、
  ・麦わらに色々な色を付ける
  ・麦わらを貼り付けるのりをつくる
  ・麦わらを開き平面にする
  ・麦わらを筋状にカットする
  ・筋状にカットした麦わらを横に並べて平面状にする・・・・①
  ・直角な方向からカットする・・・・②
  ・模様をずらし、幾何学模様をつくる・・・・③
  ・桐箱などに張り付ける
 
 

<技能の継承の危機>

 城崎温泉のお土産として好評を得ている「麦わら細工」ですが、技術の継承の危機に瀕しています。危機に瀕している理由は、どの伝統工芸でも同じなのですが、技術者が高齢化し、後を継ぐものがいないからです。明治末期には約30人もいた職人さんは、2015年1月に職人の方が一人亡くなり、残る職人は3人まで減少しています。(その後新たに認定があり、職人さんは5名まで復活したようです。)また、時代の変遷の中で、ニーズとのミスマッチが生じており、売り上げが上がらないという問題もあります。そんな中で、かみや民芸店(TEL0796-32-3259)の神谷勝さんは「麦わら細工技術者の会 会長」として、伝統工芸の継承に取り組まれています。

 
 (かみや民芸店さんの玄関)

 お父さんの元治郎さんも麦わら細工職人で、麦わら細工をつくられていました。そして息子の俊彰さんも麦わら細工職人をされています。つまり、親子三代で麦わら細工を支え続けておられます。

 初代:神谷元治郎
 二代:神谷勝(画号「麦椿」)
 三代:神谷俊彰

 写真の土鈴は神谷さんの作品で、「椿」が描かれています。右下に落款が押されています。私はこの落款に職人の心意気を感じてしまいました。


                 ↑「勝」が落款

 また、普通ならば「貼る」という言葉を用いるところを、麦わら細工では「張る」という言葉が用いられています。これは、「一面を覆う」「緩みなく引き締める」といった意味を含めています。(かみや民芸店ホームページ(HP)より)この言葉の中にも、職人の方の気持ちがにじみ出ているように思います。

参考
 麦わら細工関係のマップ(本文記載分以外)
  ・城崎文芸館(TEL0796-32-2575)・・・麦わら細工の製作体験ができます(4月から、 
  城崎麦わら細工伝承館に移管されているそうです)  
  ・まるさん物産店(TEL0796-32-2352)・・・写真の編組物を販売されています
  ・麦わら細工 神(TEL0796-20-1460)・・・神谷俊彰さんの作品が販売されています
   (木屋町小路内)
  ・みなとや(TEL0796-32-2014)・・・・家内の麦わら細工の箱が販売されていたお店?
                           大きな箱物の作品が多数ありました



                                             井上三右衛門(記)


ものづくり・工場改善 地元企業編 ⑥ しょうゆの花房

2015年11月08日 | ものづくり・工場改善 地元企業編

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 ブログ 「晴耕雨読 in 神鍋高原」
 第213回記事(2014年10月13日(月)配信)・・・・・毎週月曜日配信予定
 タイトル ものづくり・工場改善 地元企業編 ⑥ しょうゆの花房
  ~モーツアルトを聞きながら熟成されるさしみしょうゆ~
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お宅ではどこのメーカのしょうゆを使われていますか?
 突然ですが、お宅ではどこのメーカのしょうゆを使われていますか?しょうゆの味なんてほぼ同じと思うので、メーカにはこだわらない?私の実家では1年前までは自家製のしょうゆを使っていました。保存性を上げるためでしょうか、とにかく塩分が多かった。
 しかし、さしみしょうゆだけは竹野の浜の花房商店さんでした。まったりとしてさしみによくからみ、うまみ豊かな、そのさしみしょうゆは一度知ってしまったら手離せません。
 花房商店さんは、
   しょうゆの 花房
として但馬地方では有名ですが、我が家ではもっぱら
   さしみしょうゆの 花房
さんのイメージです。今回はその花房商店さん(住所:豊岡市竹野町竹野375。)のさしみしょうゆのおいしさの秘密をうかがいに訪問してきました。
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(工場玄関のしょうゆの花房のロゴマーク(左上)と、社長の花房さん(右)と奥様(中央)。)

(尚、取材の当日デジタルカメラが故障し、この記事に使用している写真は全て花房商店様からご提供いただきました。有難うございました。)

<しょうゆのおいしさの秘密は、①材料、②製法、③愛情>
 社長の花房さんに開口一番、
  「御社のしょうゆのおいしさの秘密は何ですか?」
とお聞きすると、
  「それは、”材料”と”製法”と”愛情”ですね。」
との即答。それぞれの項目について詳しく説明する前に、まずしょうゆがどんなにシンプルな方法でつくられているか説明する必要があります。
 下記の資料にあるように、
   ①蒸した大豆と
   ②炒った小麦を  
 
    ③混ぜ合わせ、
       ④これに麹菌を混ぜて温度管理された室で麹菌を増やし、
     ⑤さらに塩水を加えて(この状態をもろみという)、  
       
⑥蔵の中で長期間寝かせます(仕込)
   ⑦発酵がすすみ熟成したもろみを1年後に絞り、 
     
⑧加熱(これを火入れという)をして、
     ⑨ボトルにつめてしょうゆが出来上がります。
 つまり、材料は大豆と小麦と塩と水だけでとにかくシンプル、後は醸造する時間などが違う程度です。このシンプルな製造方法の中でどう他社と違うと言われるおいしいしょうゆを作るのか?工夫がいるところです。

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  (しょうゆの作り方)

<おいしさの秘密 その①材料・・・安全・安心な国産丸大豆を使用>
 花房商店さんは「安心・安全・おいしさ」をモットーにされており、その中の「安心・安全」の実現のために国産丸大豆を使用されています。
 「安全・安心」の為に国産丸大豆にこだわられる理由は、その対極にある遺伝子組み換え大豆と脱脂加工大豆について説明する必要があります。遺伝子組み換え大豆は遺伝子が操作変更されている為、それを食べたひとに将来何らかの問題が出てくる可能性が完全に否定されているわけではありません。また、脱脂加工大豆は丸い形状の大豆をつぶしたものですが、人体に有害な物質があるとの報告もあります。これらはあくまでも可能性についてのことですが、人が口にするものを製造するメーカだからこそ、安全について不安が無い材料を使うことで、消費者や子供に安心して口にしてもらえるしょうゆをという強い思いがあります。
 しかし、国産丸大豆を使用することはそんなに簡単なことではありません。一つ目に入手の問題があります。しょうゆ用の大豆の内、国産は約2.3%しかないため、入手には大変困難が伴います。二つ目に、国産大豆は輸入大豆に対してコストが高くなります。これらの困難があるにも関わらず、「安心・安全」のモットーを実行するため18年前の平成8年に仕込み材料を全て国産丸大豆に変更され、それ以来コストダウンの企業努力を継続されながらしょうゆづくりを継続されています。
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  (各材料 左:天日塩 中央上:国産丸大豆 右:国産小麦)

おいしさの秘密 その②製法・・・・再仕込み天然2年醸造>
 しょうゆの熟成・醸造には長い歳月をかける必要があります。もろみを発酵が進行しやすい適温状態に置く適温醸造では、通常半年程度が醸造期間ですが、但馬の気候に熟成・醸造を委ねた約1年間の天然醸造が花房商店さんではされています。だから、出来上がったしょうゆは自然・気候が作り上げたしょうゆになります。また、しょうゆつくりには但馬の自然・気候を把握した職人の勘と経験が欠かせません。
 そして、さしみしょうゆにはこのしょうゆにさらにひと手間加えます。1年間天然醸造した加熱前のしょうゆ(これを生しょうゆという)を国産丸大豆と国産小麦と混ぜてさらに1年間熟成させ、合計2年間もの熟成をします。つまり、作業的には再度仕込みをすることから、再仕込みしょうゆとも言われます。2年間の熟成の結果、その再仕込みしょうゆは実に濃厚な味で豊かな香りを持ち、塩分は控えめとなります。(この再仕込みしょうゆの割合は全国的には約1%であり、たいへん貴重なものです。)
 最終的なおいしさは、材料を国産に変更された翌年に開催された第24回全国醤油品評会で2つもの賞を受賞されており、折り紙つきです。そしてその時の製法を今まで伝え守られています。
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  (国産小麦・麹菌と混ぜ合わせた、丸丸とした大豆)

<おいしさの秘密 その③愛情・・・・醸造中にモーツアルトを聞かせる>
 醸造は人がするわけでなく、しょうゆ麹菌という微生物による発酵の働きでできるものです。人間にできることはただ麹菌が活動しやすいようお膳立てをするだけです。しかし、同じように微生物で発酵させてつくるお酒でも、銘柄によって味が大きく変わります。なぜ?いろいろ調べてみると、水の違いが大きいようですが、杜氏の腕・人柄も影響するようです。お酒の味に杜氏の人柄が出てくるというのは科学的には信用しにくいのですが、微生物やお酒への愛情が大切なことは間違いありません。お酒と同様にしょうゆに対しても、いっぱいの愛情が大切です。
 花房商店さんでは、麹菌への毎日の愛情いっぱいの声掛けが行われています。醸造期間中は朝の7時から1時間ほど、モーツアルトの曲が醸造蔵に流れます。「波動理論」なるものがあって、この理論を応用して音楽を聞かせるとおいしいしょうゆができると言われている方もあるようです。しかし、花房社長さんは「科学的な根拠が不明確なので、この波動理論を私は信じていません。しかし、親が子供にすくすくと育ってもらいたいとの気持ちで胎教に良いと言われているクラシック特にモーツアルトを聞かせている方がいます。私も同様の気持ちでモーツアルトを毎朝流してしょうゆつくりをしています。」との事でした。
 曲の最初の部分を実際に聞かせていただきました。曲を聴いていると、麹菌に「おはよう。今日も一日しっかり頑張って発酵してね。」という愛情のこもった声掛けをされているように感じました。
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(蔵の中の両脇の6つの丸いタンクの中で、毎朝モーツアルトを聞きながら発酵が進みます)

花房商店さんの本当の強み
 花房社長さんからお話をうかがって、花房商店さんのさしみしょうゆのおいしさの秘密は分かりました。①厳選した国産材料(丸大豆・小麦)。②再仕込み製法。③しょうゆへの愛情・モーツアルトの音楽。その他にも、有機材料の使用、地元材料の使用(特に兵庫県豊岡市産のこうのとり大豆の使用)、原材料からの一貫生産などなど。
 しかし、これらは商品のおいしさの理由であり、花房商店さんの企業としての強みはなんだろうか?という疑問が出てきます。価格が高い材料を使用し、長期間醸造すると資金の回転率が悪くなり、製品自体は高価格になります。国産大豆は海外産大豆の約3倍という話をどこかで聞いた記憶があります。コスト低減も企業の努力範囲を超えるのではないか?これでは、どうしても競合他社商品と比較して高価格となり、いくら「安全・安心・おいしさ」を訴えても、いくら希少なしょうゆであっても、スーパーなどの店頭では消費者は選ばないのではないのか?そんなことを考えながら花房商店さんを後にしました。

 そしていろいろ考えて、結局行き着いた花房商店さんの強みの結論は、
  但馬地方で一番早くさしみしょうゆを手がけた
ことと
  さしみしょうゆのおいしさを支持し選び愛してくれる消費者がいる
ことではないかと思い当たりました。

 詳しく説明します。但馬地方には海岸に近いしょうゆメーカもあれば、山間地にあるしょうゆメーカもあります。竹野の浜という魚介類が豊富に水揚げされる浜にある花房商店さんは、その魚介類にあったしょうゆを浜の住民・消費者から求められ、「再仕込み天然2年醸造」のしょうゆを但馬地方で最初に醸造した。そのしょうゆが住民・消費者に支持され、城崎温泉・湯村温泉などの旅館や香住・竹野などの民宿の宿泊客に支持された。つまり、おいしいさしみしょうゆを提供したいという花房商店さんのモットーからつくられた「再仕込み天然2年醸造さしみしょうゆ」が、提供した浜の住民・消費者・宿泊客によって支持され、選ばれ続け愛され続け、その結果、現在があるのである。

  消費者から選ばれ続け愛され続けるさしみしょうゆ 花房

だから、花房商店さんのさしみしょうゆは当然おいしいのである。

                                            井上三右衛門(記)

☆ ご参考 ☆
花房商店さんの「(天然2年熟成再仕込み)さしみしょうゆ」おいしいですよ。
一度お試しください。
また、お友達にもお勧めください。
HPアドレス:http//:www.syouyuhanafusa.co.jp/
もしくは「しょうゆの花房」で検索。
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ものづくり・工場改善 地元企業編 ⑤ 「はばたけ」 玄さんがんこサブレ 

2015年11月07日 | ものづくり・工場改善 地元企業編

第188回記事(2014年3月31日(月)発行)(毎週月曜日発行予定)

(独り言:今、もの造り企業の環境はたいへん厳しいですね。3K職場ですし、海外から安価なものが入ってくるし。
また、但馬は”谷間”から来ているのではと言われるくらい平地が少ないところです。
そんな但馬地方のもの造り企業の応援の気持ちでこの記事を書いています。
                                       井上三右衛門@晴耕雨読)

今回は、企業とは違い、福祉作業所さんの紹介です。福祉作業所をご存知ない方も多いかもしれませんが、障害を持った方が働いておられる処です。色々な問題を克服されて、玄さんそっくりの形をしたサブレ(クッキーとほぼ同じです)を作り上げ、スイーツの大会で準グランプリをとられました。そのサブレに関するこだわりをご紹介します。

<玄さんが準グランプリ>
●ある日「玄さんが準グランプリ」という記事タイトルを見て、私はたいへんがっかりしました。理由は、玄さんには他のゆるキャラにはない独特の特徴があり、多くの人でなくても一部の人に深く愛されてほしい、くまモンやふなっしーのように人気ものになる必要は全く無い、玄さんは玄さん独自のキャラクターがあり(渋キャラというようですが)、その点を伸ばしていってほしい、そんな風に強く思っているからです。

●記事をよく読むと、ゆるキャラのコンテストと思ったのは私の先走りでした。しかし、準グランプリをとったのは「スイーツ甲子園」というコンテストで、玄さんとスイーツは全く似合わないとまた思いました。が、記事の内容を読み、詳細を調べていくうちに、そのスイーツは本物の玄さん以上に玄武岩に似せたスイーツをつくることにこだわりを持たれ、約1年間もの開発期間を経てできあがったものだということが分かりました。

●準グランプリを受賞されたのは、豊岡市手をつなぐ育成会の障害者多機能施設「はばたけ」さんの「玄さんがんこサブレ」で、第5回スイーツ甲子園(NPO法人兵庫セルプセンター主催。2013年11月10日開催)での受賞です。コンテストには兵庫県・関西地区以外からも複数のエントリーがなされ、さながら全国大会の様相のコンテストです。
では、「玄さんがんこサブレ」の形、色・食感、味に関する「がんこ」なこだわりについて以下に紹介します。

<まず、形にこだわる>
●玄武岩の特徴は独特の6角形ですが、これが形へのこだわりに繋がります。まず下記の写真の玄さんがんこサブレの形状をよく見てください。ほぼ6角形をしていますが、本物の玄さんに似せるため鉢巻や口のところが飛び出しています。この部分はサブレの生地を金型(金属で出来た原型)で抜く場合にちぎれ易く、特に鉢巻の先端は形が崩れやすい部分です。
Photo

●また、表面の凸凹は玄さんの顔をリアルに表現するには大きくするのが良いのですが、大きくしすぎるとサブレが割れやすくなってしまいます。ある程度の凸凹で玄さんの顔をリアルに表現する必要があります。鉢巻のねじり具合がとってもリアルですね。実際の金型作りでは、今までお菓子の金型を作製したことも無く、インターネットで金型メーカをやっと探しだされたそうです。また、金型メーカとの打ち合わせや、試作によりわかった問題点の改善に苦労されたそうです。
Photo_8(金型はしわまで再現されています)

●サブレの生地を実際に抜く製造現場を見せていただきました。作業者の方が丁寧に金型でサブレの生地を6角形に抜かれていました。しかし、一番驚いたのはその後、余分な生地を外すために竹串を使って、丁寧にそして起用にサブレの生地をまるで玄さんの顔を掘り出すように作業をされていました。機械化された製造工程とは異なり、一つ一つが手仕事で行われています。
Photo

<そして、色と固さにこだわる>
●形へのこだわりの次に、色と固さにもこだわられました。サブレの商品開発にあたり、玄武岩は当然石ですからそれらしい色のものにしたいし、また石であるだけに少し固めの食感も実現したい。そう思われたそうです。とくに、キャラクターの玄さんが白っぽい色になっているだけに、本物の玄武岩の色により似せたいと思われたそうです。

●そのため、まず材料として黒ゴマと黒糖を使うことを先に決めて、その後配合を工夫されました。その時、黒ゴマはペーストを使用すると色は近いものになるのですが、固さ・食感に問題が出て、わざわざ黒ゴマをミキサーでスライスして練りこむことで固さ・食感を出しているそうです。さらに、ゴマに脂分があり、バターとの量の調整を何回か試作することで食感がよくなるよう決められたそうです。
Photo_4(左:いり黒ゴマ 右:ねり黒ゴマ)

●商品の集合包装には、「黒糖&黒ゴマ」が特徴と記載されています。
Photo_2

<もちろん、味にもこだわる>
●もちろん味にも大変こだわられています。そのこだわりは、材料にこだわることとも繋がってきます。個装袋の裏の原材料表示を見てください。
Photo_6

●小麦粉は安全・安心を追求するため国産を使用されています。
バターには「四つ葉バター」を使用されています。マーガリンや普通のバターよりかなり高価です。私のいわゆる作業所のスイーツに関する経験では、技術力が高くノウハウの蓄積がありおいしいスイーツを作られる作業所さんほど、ただの「バター」ではなく「発酵バター」や「四つ葉バター」を原材料欄に記載されています。
鶏卵は地元で有名な「おかちゃんたまご」を使用されています。但馬地方限定の出荷で、卵黄の色が鮮やかで盛り上がりがあり、味が濃厚で、評判が大変良いそうです。
塩は普通の塩ではなく、岩塩を使用されています。

黒砂糖で最後にほんのり独特の味が出てきます。
黒ゴマは香ばしさとしっかりした歯ごたえを狙っています。

●原材料表示の上のシールにあるように「壊れやすさは美味しさの証」だと思います。

最後に玄さんから一言

「がっせぇうめーしけー 食うてくれーやー」

(とってもおいしいから 食べてねー)
 

<販売について>
この「玄さんがんこサブレ」は、
 〇「はばたく」さん(豊岡市九日市中町75。Tel0796-23-3350)
以外では、以下のところで売っているそうです。
 〇道の駅 神鍋高原(豊岡市日高町栗栖野。国道482号沿線)
 〇玄武洞ミュージアム(豊岡市赤石。玄武洞の道を隔てた向かい)
 〇コウノトリの里公園の売店(豊岡市祥雲寺。コウノトリ公園内)
 〇北前館(豊岡市竹野町竹野。竹野浜海水浴場近く)
 〇いたや商店(豊岡市城崎町湯島。城崎温泉一の湯前)
 Photo_7(道の駅 神鍋高原にて)

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ものづくり・工場改善 地元企業編 ④ 絆工房 昇華転写プリントでオリジナルTシャツ

2015年11月06日 | ものづくり・工場改善 地元企業編

第167回記事(2013年10月28日(月)発行)
         (次回11月4日(月)発行予定)

(独り言:今、もの造り企業の環境はたいへん厳しいですね。3K職場ですし、海外から安価なものが入ってくるし。
また、但馬は”谷間”から来ているのではと言われるくらい平地が少ないところです。
そんな但馬地方のもの造り企業の応援の気持ちでこの記事を書いています。
                                       井上三右衛門@晴耕雨読)

 ブログを書き始めて4年目に入りました。今回は、3周年の記念記事になります。
 企業さんの記事は半年に1回程度の周期で書いており、今回は、神鍋高原のある旧日高町の浅倉区にある「絆工房」さんを実際に訪問しての記事です。大幅に業績を伸ばされており、私にとってもたいへん参考になりました。興味をもって読んでいただけるとありがたいです。


<2012年度「但馬産業大賞」を受賞>

〇株式会社絆工房さん(2013年4月1日に有限会社マジックより社名変更)は「但馬産業大賞」を受賞されました(下の写真)。おめでとうございます。
 但馬産業大賞は但馬地域において優れた技術やサービスで活躍し、地域の発展や経済の活性化に大きく貢献した事業者に贈られる賞です。評価項目として、①経営・地域貢献度、②技術・手法レベル、③技術・手法の独自性・優越性、④効率性があります。当ブログでも紹介している、中田工芸さんと白炭工房さんも既に受賞されています。
〇受賞理由は「昇華転写プリントシステム構築への取組」によるものです。具体的には①色調管理のデジタル化、②高いデザイン力、③一貫した品質管理等が評価されたものと思われます。その絆工房さんの本社に先日伺い、笠原代表にお話を聴いてきました。

Photo


<圧倒的な表現力を持つ昇華転写プリントの技術をさらに品質向上>

〇Tシャツへの印刷はシルクプリントが一般的ですが、印刷に使用する版の価格が高いため、印刷枚数が少ないと1枚あたりの価格が高いという欠点があります。また、多色印刷にすると色の数だけ版が必要となり、価格が高くなります。そのため、笠原代表が従来から注目されていた「オリジナルTシャツ」の印刷に適した昇華転写プリントに着目し、そのプリント技術の向上を進められてきました。昇華転写プリントは、昇華型のインクを使いインクジェットプリンタで転写紙に印刷したうえで、その転写紙を布と密着させ、熱プレス転写機の中で高温・圧力を加えることで、気化したインクが布の繊維の分子構造に入り込み、転写されるものです。そのため、版は必要ありません。単色で均一な色を得意とするシルクプリントに対して、昇華転写プリントは全面にフルカラーでグラデーションが可能であり、圧倒的な表現力があります。また、色が布に浸透し一体感があります。先日の男子体操の世界選手権で内村選手・白井選手が着ていた体操服を覚えておられますか。とってもきれいでしたね。昇華転写プリントでつくられたものと思います。
〇ただ、同じ程度の機能・性能のインクジェットプリンタで、同じ程度の昇華型インクで、同じ程度の機能・性能の熱プレス転写機を使用するならば、競合の昇華転写プリントメーカの製品と差別化することは出来ません。①インクの温度管理を行い、②転写紙への印刷後に自社独自設計の定着機を使用することで印刷の品質向上を図られています(定着機は下の写真参照)。また、熱プレス転写では、③より高い品質のプリント仕上がりを求めてイタリア製の機械を導入されたうえで、④独自の改造を施されてより転写の品質向上を図られています。

Photo_4
黒い曲面がオリジナルの定着機。曲面の上に印刷後の紙が降りてきて、熱で定着される。


<高いデザイン力で「Tシャツ職人グランプリ2012」を受賞>

〇オリジナルTシャツの良い点は、何と言っても自分達(自分)だけのオリジナルデザインです(たとえばユニ〇〇などの商品とは違って。)。そのデザインはお客様の希望されるデザインをそのままTシャツにするのでなく(これでは下請けと同じ)、お客様の希望をこと細かく聞くのではなく、お客様の使い方や使われるシーンを確認し、デザイナーがお客様の希望・想像を越えるものを提案する必要があります。そうすれば、デザイナーがデザインしたオリジナルTシャツをお客様にお見せした時、
 「そうそう、これが私達(私)欲しかった!!!」
と感激していただけるはずです。
〇その為には、お客様の希望の聞き方(コミュニケーション方法)と高いデザイン力が必要であり、高いデザイン力を得るために、デザイン力の高い人の採用、デザイン力の向上施策の実施、デザインの情報の収集(本棚に多くのデザインの本がありました)など色々な工夫・努力が必要です。それらの努力の結果が、Tシャツ職人グランプリ2012のグランプリ・最優秀賞受賞に繋がったのではないでしょうか。
 ちなみにデザイナーは笠原代表の娘さんだそうです。プロを目指す決意が「お客様の驚く様なデザインをさせていただきます。」というコメントから伝わってきます。
 グランプリのテーマは「大阪王将」のスタッフTシャツで、グラデーションが施されて、さりげなく餃子が描かれています。(写真を載せられないのが残念です。)

Photo_5
ショールームのカラフルなTシャツ

〇ただ、グランプリ・最優秀賞はデザイン点だけでは決まりません。縫製技術点、トレンド点、消費者視点からも評価されており、グランプリ・最優秀賞は絆工房さん全体の総合力によるものでしょう。


<絆づくりこそ、至福の人生をあゆむこと>

〇企業は常に競争をしており、差別化できる強みを持つ必要があります。絆工房さんの強みは、昇華転写プリントとデザイン力であると書いてきました。また、そう思っていました。しかし、インタビュー時に笠原代表から突然一つ質問を受けました。「F1用の最高性能タイヤと1000馬力のエンジンのパーツがある。パーツだけでつながっていない。もう一方は、ちゃんと完成しているゴルフ場の電動カート。この2台が競争したとしたとすると、どちらが速いですか?」 正解は当然お分かりですよね、パーツが繋がっている電動カートです。この質問に最初はピンと来ませんでしたが、インタビュー後によくよく考えてみると、笠原代表・絆工房さんのスタンス・戦略を一番表した質問でした。そこに第3の強みがありました。
〇オリジナルTシャツはモノであり目で見ることができます。むしろ、オリジナルTシャツに関係する見えない部分に思いを馳せてみると、そこに見えてくるものがあります。
また、絆工房さんでは色々なことをされています。
 お客様へのニュースレター「絆通心」発信、
 お客様のプリント体験実施、
 社員の毎日の朝礼での絆発表、
 社員でそれぞれの良いところを掲示板に書いて貼る、
 経営計画発表会の実施、
 着るサプリ サプリフレの販売。
それぞれを個別に見ると繋がりがありません。しかし、全てを繋げてみると見えてくるものがあります。
「人と人が繋がっている」=「絆」という言葉を使うところを書き出してみると、
 オリジナルTシャツを着るお客様のチームの絆
 お客様と絆工房の絆
 絆工房内のオリジナルTシャツをつくるチームの絆
により、それまでは点と点であったものが線となり、線と線が面となり、さらに面と面が立体となります。

 絆づくりこそ、至福の人生を歩むこと

企業理念でもあり、会社パンフレットの表紙とニュースレター「絆通心」裏表紙に記載されている言葉です。


右上のマークは自分の手と相手の手を表しています


編集後記
 今回が4回目の会社編の記事ですが、実際に会社さんを訪問して記事を書く初めての記事でした。そのため、少し不安になるところがありました。そんな私を笠原代表はあたたかく迎えて下さいました。
 そして、帰り間際に一冊の本を頂きました。
  「ありがとう」と言われる商い(小阪祐司著 商業界発行)。
3冊本があったので「ご参考にどうぞ。」という軽い気持ちと私は考えましたが、2度読んでみてそれは全くの感違いだと気がつきました。
  「この本の中にこそ私の商いの本質があります。(よく理解してください。)」
というような気持ちでしょうか。
 本の中には本当に楽しんで儲けることのできる方法を実践されている「ワクワク系の商人」の話がいっぱい載っています。面白いですよ。機会があれば一読をお薦めします。


ものづくり・工場改善 地元企業編 ③ 北村わさび 約300年間のわさび作り

2015年11月05日 | ものづくり・工場改善 地元企業編

第140回記事(2013年4月8日(月)発行)
         (次回4月15日(月)発行予定)

(独り言:今、もの造り企業の環境はたいへん厳しいですね。3K職場ですし、海外から安価なものが入ってくるし。
また、但馬は”谷間”から来ているのではと言われるくらい平地が少ないところです。
そんな但馬地方のもの造り企業の応援の気持ちでこの記事を書いています。
                                       井上三右衛門@晴耕雨読)

1年ぶりのものづくり・工場改善 会社編の記事になります。

<はじめに>
この「ものづくり・工場改善 企業編」では、兵庫県豊岡市にあり、独自技術を持った企業である、
①中田工芸さん(高級木製ハンガーシェアNo.1)
②東海バネ工業さん(人の背丈以上の高さのバネがスカイツリーの先端に組み込まれている)
を紹介してきました。これらの企業は、
 会社の形態をとり、
 工業的な生産をされており、
 特定の分野で独自技術を持ち、
 全国的に大変知名度が高い
会社さんです。

今回紹介するのは、神鍋山からの伏流水の清水(毎秒約700L湧出)で「わさび」を育てられている北村わさびさん(十戸区)です。上記の会社と比較すると、
 家業の形態であり、
 農業の分野に属し、
 気候・天候の変化に対応されながら、
 良質の大型のわさびを生産
されています。
しかも、十戸区の地で300年近くに亘っての生産になります。大変長い期間であり、何代にも亘っての生産になります。固有種としては約50年位になるようです。

<わさびについて>
わさび生産と言えば、長野県(安曇野市にある大王わさび農場は有名。行ったことがあります。)や静岡県(伊豆半島のわさびは有名。)の生産量が多く、北村わさびさんの知名度は低いと私は思っていました。しかし、グーグルの検索で「わさび」を入れると、4番目に登場してきました。ホームページを作成されていろいろ営業努力・情報発信などされている結果が検索順位に表れており、全国的に知られたものになっています。

わさびはアブラナ科ワサビ属に属します。わさび、特に沢わさびは、大量のきれいな水のあるところで栽培されます。つまり、大量のきれいな水がないと栽培できないものです。栽培には2年から3年かかります。また、抗菌作用・抗サビ作用・抗虫作用などを持っています。
そして、春に花が咲きます。実家の裏の農業用水路で小さいが白く可憐な花がひっそり咲いていた記憶があります。
(①わさび畑を見させていただいたときも白い花が咲いていました。
花から種が出来ます。)
Photo_3

<栽培は苦労だらけ>
北村わさびさんのホームページを読ませていただき、「わさび」栽培の苦労の大変さをつくづく感じました。ほんとうに大変です。その苦労はホームページを読んでいただければよくわかるはずですので、
ぜひ「わさび作りのこと」のページところを読んでください。
 
 http://kitamura-wasabi.com/
また、「種取り人から種とり人へ」で検索していただくと、第17回のビデオ(前編と後編があります)の中で栽培の苦労がしみじみと語られています。
具体的に挙げてみると
 作土関係
  わさびを植えつける田に敷く、小石作り(田は面積で33アール=60m平方程度あり)
 育成関係
  わさびは高温を嫌うので、夏の温度管理
  雨が降ると清水の量が増えるので、水量管理
  冬場の冷たい中での、水を扱う作業
  イノシシ・チョウチョなどの獣虫害の防止
 種とり関係
  良質で均一なわさびとなる種を取り続けること
  約2ケ月かかる種の取り出し
  発芽管理
 再生
 
  収穫後に泥にまみれた小石の洗浄(これは唯一機械化されたようですが)
  手作業での小石のコケや水草の除去
などです。
(②苗床で育っているわさびの苗)
Photo_2

<長く継続することの難しさ>
北村わさびさんを紹介したくなった理由は2つあります。
一つは、ブログの2本柱である「神鍋溶岩流」と「企業・ものづくり」を両方カバーしている点。
もう一つは2013年3月2日(土)に「長寿企業の研究」と言うシンポジウムが京都市の同志社大学であり行ってきました。シンポジウムで登壇されたパネリストは、
 池坊由紀氏(華道池坊次期家元:華道池坊はご存知かと思います)
 大倉治彦氏(月桂冠株式会社社長:月桂冠は清酒の売り上げ日本一)
 石田隆一氏(株式会社イシダ会長:イシダは秤でのシェア日本一)
です。たとえば、月桂冠さんは200年以上の歴史があります。しかし、今隆盛しているこれらの会社なども、ある時期には
 社会・環境の変化による事業の継続
 後継者の育成
では、大きな問題があり、それらを乗り越え乗り越えての現在があるという話を聞くに及び、300年近く苦労の多いわさび栽培を継続されることがどんなに大変なことか認識をあらたにしました。
(③苗床から畑に移植され、畑で育っているわさび。少し大きくなっています。)
Photo_4


この記事を書くために、北村わさびさんのわさび園を一目でも見てみたいと思いました。観光化された長野県の大王わさび農場に行ったことがありましたので。そのことを長寿庵さんという北村わさびさんのわさびを使用しているお蕎麦屋さんで話すと、わさび園は周辺を囲ってあるのでわさび園を見ることはできないとの事でした。実際に行って見て確かにそうでした。

わさび園を見ることが出来ずに帰る時、家の前で3歳くらいの子供さんが遊んでいて、手を振ってくれたので、こちらも手を振って別れ、車を停めた大清水商店の前の駐車場まで帰りました。帰る途中思いだされたのは、スクールバスで日高西中学校に通っていたころのこと。あのころは大清水商店の前は多くの生徒で溢れていたように思います。しかし、母校の西気小学校が生徒数の減少で138年目で閉校になってしまい、長く継続することがどんなに大変なことか。それは、卒業して都会に出てしまった私達に責任の一端がありますが。後を継いでくれる人がいないことはさびしいことです。

北村わさびさんは宜弘(よしひろ)さんが跡を継がれ、わさびの栽培を継続されています。

<まとめると>
TV東京などで放映されている「カンブリア宮殿」の村上龍氏風に書くと、次のようになるでしょうか。

 時代が変わり、社会が変わり、環境が変わり、人が変わる。色々な変化がある。
 そして、気候も年によっては大きく変動することがある。
 そんな中で、100年以上も事業を継続していく事は難しい。

 一つのことを長く継続することの難しさ
                             by晴耕雨読

後日談
4月30日にわさび畑を見学に行ってきました。
思っていた以上に、はるか彼方までわさび、ワサビ、山葵です。
それは、壁で仕切られた別世界でした。
一部のわさびには白い花が咲いていました。
(④大きく育ったわさび。はるか彼方までのわさび畑)
Photo_12

わさび畑全部の本数は約2万本ぐらいではとの事でした。
種から育成した場合の歩留まりは半分程度とのことでしたので、
約4万本をまず最初に育成されることになります。大変な数ですね。

また、約300年続いている点は、北村さんの本家がわさび栽培をされていたのを譲り受けて栽培を継続されており、合計で約300年になるとの事でした。


ものづくり・工場改善 地元企業編 ② 東海バネ工業 ロングテール戦略

2015年11月04日 | ものづくり・工場改善 地元企業編

(2012年3月26日発行)(次回4月2日発行予定)

(独り言:今、もの造り企業の環境はたいへん厳しいですね。3K職場ですし、海外から安価なものが入ってくるし。
また、但馬は”谷間”から来ているのではと言われるくらい平地が少ないところです。
そんな但馬地方のもの造り企業の応援の気持ちでこの記事を書いています。
                                       井上三右衛門@晴耕雨読)

 今回は、2011年度最後の回になります。
 ものづくり・工場改善のカテゴリーには多くに方に来ていただいており、ものづくり・工場改善 会社編の1回目は、豊岡市の中の旧日高町にある、木製ハンガーシェア50%の中田工芸さんを紹介いたしました。最終回は「2011年版 ものづくり白書」(経済産業省・厚生労働省・文部科学省 編)を私なりにまとめてみようとトライしてみたのですが、巻頭に平成22年度ものづくり白書の骨子ということで、8ページにわたりまとめられたものがありました。
 そのため、方針を変更して、白書の292ページに「東海バネ工業」さんのコラムがあり、「東海バネ工業」さんのご紹介をしたいと思います。

 まず、白書のコラムに記載されている内容から、「東海バネ工業」さんの概要を把握ください。
 卓越したばね職人が1個から手作り、顧客開拓の壁を破ったWebへの着眼
 東海バネ工業(株)(大阪府大阪市)は、大量生産が85%という業界にあって、平均ロット5個という大手企業が参入しにくく価格競争に巻き込まれにくい、ばねの微量生産を行っている。同社は、2段階のIT経営の実践によって、5年間で売上高5割増を実現した。
 1段階目は、受注管理システムの導入である。・・・・・
 2段階目は、Webを活用した顧客開拓の実現である。・・・・・多様な業界から問い合わせが入り、新規顧客は年々増加。2003年13億円だった売上げは2007年には19.8億円、経常利益は10%近い数値になった。さらには、受注増によって同社製品の社会的貢献性を認識し、従業員のモチベーションが向上した。

以下に記載した内容は、①~④の資料を参考にしました。
①2011年版ものづくり白書
②「多品種微量の経営」(京都経営品質協議会平成18年度エクセレント企業調査事業の配布資料)
③2011年6月23日TV東京系列放映「カンブリア宮殿」放映内容・他
④「東海バネ工業」会社ホームページ

●はじめに
 東海バネ工業さんは、本社は大阪市に、工場が伊丹市と豊岡市にあります。豊岡市の工場は、神美台の工業団地(実は、母親の実家の目の前)にあり、匠の技を伝える館のようなものも工場に併設されています。

●会社データ(資料④より)
 本社 大阪市
 資本金 96445千円
 従業員数 80人

●バネ業界の特徴(外憂)
 バネ業界は自動車・電機関係の下請け色が濃く、生産は大量生産が85%を占め、価格は既に決まっており、常にローコストが要求されます。
●会社の問題点(内憂)
 
 
 昔気質の職人さんが多く、コストダウンのための生産性の向上を目指す活動をしても、なかなか付いてきてくれないという問題がありました。
●転機
 そんな中で、現在の社長の渡辺さんが社団法人バネ工業会のバネ業界視察に参加され、今日の東海バネ工業さんの発展に繋がる大きな気づき・お土産を2つ持って帰られました。
  1つ目が、ドイツでの気づきで「注文が欲しいばっかりに値引きをして、損はしないが儲からないバネ屋になっている。お客様の言いなりにならない、(こちらの)言い値で買っていただける、あるいは適正な価格で買っていただける、そういう製品・サービスに絶対しなければいけない。」
 2つ目が、フランスでの気づきで「誰もやりたがらない仕事に取り組んで一生懸命汗を流している連中が「もっと良いバネを作ろう、誰にも出来ないバネを作る職人になろう」と、そういう気持ちになるように、彼らの仕事を正当に評価し、そして、それに見合う報酬を与えてあげなければいけない。」
●その後の改革
 すぐに改革ができたわけではないようですが、改革が成功したポイントは2つあるように思います。
 1つ目が、多品種少量の受注・生産に対応できるコンピュータシステムを導入されて、バージョンアップを重ねられている点。この点は、②の京都経営品質協議会の資料にかなり詳しく書かれています。
 2つ目が技術の継承を大事にされている点。この点は、③のガイヤの夜明けの放映内容でかなり詳しく説明されています。また、社長の渡辺さんは、「人件費は経費でない、投資だ。しかも未来への投資だ。」と言われています。
●すごさ
 1点目は、全国880社のお客様に対し、1件あたりの受注金額がせいぜい5から6万円で、そういった小口受注が年間約3万件ある中で、納期遵守率が99.97%(資料②より)である点から推測できます。
 2点目は、「3月11日の東北関東大震災による大きな揺れが首都圏を襲うなか、東京スカイツリーが無傷でいられたのは(東京タワーは先端が曲がりました)、先端部に取り付けられた「制振装置」のお陰。そこにとりつけられたのは 人の背丈程もある巨大なバネ…実は東海バネが作ったものだった。」(資料③より)という点から推測できます。
●まとめ
 製造メーカは製品を大量生産する方が楽なはずです。しかし、それは圧倒的な技術差が無い限り価格競争に巻き込まれることを意味します。日々求められるコストダウン要求にどこまで対応できるのか。先日のTV東京系の「ガイヤの夜明け」の番組でも出ていましたが、下請け製造企業の生きるひとつの道は独自商品を、もしくは独自技術を持つことです。
 その道は厳しいですが、決心して一歩前に踏み出さない限り、一般的な中小製造業メーカに明るい未来は無いように思います。
 多品種少量高付加価値の生産・販売をめざすロングテール戦略(少量しか発注しない多数の顧客層をターゲットとする戦略)が、一般的な中小製造業メーカの生き残りの一つの選択肢であるはずです。
 
 頑張れ!中小製造業メーカの方々。


ものづくり・工場改善 地元企業編 ①中田工芸 木製ハンガーシェア5割

2015年11月03日 | ものづくり・工場改善 地元企業編

(2011年10月3日臨時発行)

(独り言:今、もの造り企業の環境はたいへん厳しいですね。3K職場ですし、海外から安価なものが入ってくるし。
また、但馬は”谷間”から来ているのではと言われるくらい平地が少ないところです。
そんな但馬地方のもの造り企業の応援の気持ちでこの記事を書いています。
                                       井上三右衛門@晴耕雨読)

(下記の内容については私の知識レベルがまだ低い時に記載していますので、
適切でない部分があるかも知れませんが、修正はしていませんので。)

●今日、10月2日、NHKのルソンの壺という25分番組で、兵庫県豊岡市にある中田工芸さんが紹介されました。実は、9月4日に放送予定だったのですが、和歌山県の台風による大災害の報道が急に入ったため放送されず、1ケ月遅れでやっと見せていただきました。
●中田工芸さんは、豊岡市の中の旧日高町に本社があり、神鍋高原も同じ旧日高町にあり、地縁があります。
●中田工芸さんの主製品は木製のハンガーで、国内シェアは5割だそうです。中小企業診断士が関係するJ-NET21などでも、俳優の方が来て取材をされ、紹介されていたと記憶しています。
●個人的な中田工芸さんの思い出は、母が中田工芸さんから折りたたみ傘を購入した時に、(当時の)社長の奥様からアドバイスされた内容です。それは、もうだいぶ前のことで、当時は雑貨店をされていたはずで、概観でほぼ同じように見える傘なので安い方を母が購入しようとすると、「見てください、奥さん。こちらの安い傘の骨はこの程度の太さですが、少し高いこちらの傘の骨はこんなに太いんです。だから、丈夫で長持ちしますよ。」とわざわざ傘を開いて示され、アドバイスされたそうです。価格だけでなく、消費者・使用者の視線が入ったアドバイスをされているところがすばらしいと当時思った記憶があります。
●そんな会社さんですから、ここまで会社が大きくなったのではと想像をします。
●番組を見て、私も1つ購入したくなりました。

前置きが長くなりました、番組で紹介された内容を中小企業診断士風にアレンジ・構成して紹介します。

会社名:中田工芸
売上:7億5000万円
従業員:46名
市場シェア:木製のハンガーで5割
社長:中田孝一さんPhoto

市場の環境:ハンガーの市場はプラスチックの安価な製品が主流であるが、ブランド品の店頭販売などで使用されるハンガーは、ブランドのイメージやコンセプトを保つこだわりのハンガーが必要となる。
Photo_12
会社の強み(知的資産からの視点):
①著名デザイナーなどのブランド・コンセプトに関わる細かい要求に応えてきたため、信頼を得ている。(関係資産)
Photo_4 Photo_10
③細かい要求に応えてきたことで、細かい要求にを実現する設計力・製造技術力が蓄積されている。(人的資産)
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動機付け:東京の青山・渋谷などへの社員旅行時に、自分たちが製造したハンガーが店頭販売時に使用されている様子を見て、モチベーションがあがった。
最後に:番組の中で出てきましたが、ハンガーは服をかけるものですが、服だけでなく福もかけたいですね。
Photo_8
(上記内容では著作権に触れない程度で、公共放送としての番組の写真をわかりやすいよう使用させていただいています。著作権侵害の意図はありません。)


経営 BSC ⑨ 実践バランス・スコアカード 柴山慎一

2015年11月01日 | 経営 BSC

第152回記事(2013年7月8日(月)発行)(次回7月15日(月)発行予定)

 バランス・スコアカードの本の紹介も6冊目になり、今回が最後になります。
 前回の櫻井先生の本は約500ページもある大作でしたが、こちらの柴山先生らの本もかなりのページ数のある大作です。
 特徴としては、より実践的で、企業で実務関係をされる方・されている方にはとても参考になると思います。

タイトル
 実践 バランス・スコアカード
  ~ケースでわかる日本企業の戦略推進ツール~

著者
 柴山慎一
 正岡幸伸
 森沢 徹
 藤中英雄
 (既に本は手元にありませんので所属は不明です。)

出版社
 日本経済新聞社

定価
 2600円(出版当時)

目次
 
Ⅰ章 なぜ、いまバランス・スコアカードか
 Ⅱ章 進化するバランス・スコアカード
 Ⅲ章 日本的経営戦略との関わり
 Ⅳ章 導入の目的を明確にする
 Ⅴ章 クロスファンクション・チームで検討する
 Ⅵ章 ミドル・アップ・ダウン方式で導入する
 Ⅶ章 展開にあたってのポイント
 Ⅷ章 運用段階で大きく「発展させる」
 Ⅸ章 バランス・スコアカードの導入の実例

おすすめ度
 内容は大変重いです。ただし、柴山先生らは日本でのBSCの実務をBSCがブームになる前からされているようで、企業の実務に関わられる方には参考になると思います。
 読み込まれることを条件に、5段階中4.3。

おすすめポイント
 
目次を分類すると、
Ⅰ章は序、
  Ⅱ章とⅢ章が基礎理論、
  Ⅳ章からⅧ章は導入の手順、
  Ⅸ章がケース
 になります。導入の手順に多くの章・ページが割かれているように、この部分がポイントになります。その中で、86pの図表Ⅲ-5日本企業への標準的な導入ステップと、導入におけるボトルネックが大変参考になるはずです。また、110pの図表Ⅳ-4典型的な経営管理上の問題症状と対処法も参考になると思います。
 さらにもう1点、最後の部分に「バランス・スコアカードFAQ」が入れてあり、よくある質問16とその回答が記載されていますので、バランス・スコアカードに関して疑問を持っておられる方は一度読まれたら思います。
  

外観
 現在無し

                                                   井上三右衛門