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蛇沼牧場のアメリカスズカケノキ

2018-10-08 00:28:34 | 東北のヒガンバナを訪ねて

 

 十和田湖生出から発荷峠に上り、頂上の展望台で十和田湖に別れを告げました。

 


 

 国道103、104号、県道32号を経て、目的の蛇沼牧場に到着しました。

 

 

 

 牧場の玄関口に、県道に面して、見事な樹形のスズカケノキが枝を広げ、その横に。樹高34m、幹回り5.25mと記された解説板が添えられていました。

 

 牧場の方にご挨拶をと思い周囲を見回しましたが、人影がなかったので、そのまま木の観察を始めることにしました。

 

 

 

 最初に幹を確認しましたが、下の小石川植物園のアメリカスズカケノキとは異なるように思えます。

 

 

 

 次に葉を確認しました。

 

 

 

 何とも言えませんが、小石川植物園のように明らかな五角形を示す葉がなく、葉の切れ込みが深いように思えます。

 

 また、小石川植物園の木に発現する異形葉性は認められません。

 

 蔵王町と山形市で見て来た、アメリカスズカケノキが全てモミジバスズカケノキだったことから、私はかなり疑い深くなっています。

 

 高い枝を見上げ、他の葉と重ならずに、葉形が確認できる葉を、可能な限り撮影し続けました。

 

 葉脈の形態なども撮影し、92枚の葉の画像を得ることができました。

 


 

 観察を終え、周囲の環境などを確認していると、牛舎の方で人声が聞こえたので、近づいてゆき、東京から蛇沼牧場のアメリカスズカケノキを観に来たことを伝え、木の来歴などを教えて頂きたいとお願いしてみました。

 

 すると、一人の方のご案内で母屋に導かれ、お婆様からお話を伺うことができました。

 

 この木は明治45年に北海道大学から、数多くの苗木を持ち込んだうちの一つで、当時はこの周辺に街路樹として、あるいはシンボルツリーとして葉を茂らせていたそうです。

 

 苗木はアメリカから持ち込まれ、当初からアメリカスズカケノキと認識されていたそうです。

 

 この話をお聞きして、アメリカスズカケノキの可能性は高いかもしれないとは思いました。

 

 しかし、自分で直接木を観察した印象は拭い切れず、しかも、日比谷公園のアメリカスズカケノキがモミジバだと判断されたことなどを踏まえ、更なる検討が必要と考えています。

 

 牧場の方から、二戸図書館に行けば、この木に関する資料があるかもしれないと教えられたので、牧場を辞した後、予定を変えて二戸市内へと車をはしらせました。

 

 

 図書館のカウンターで訳を話し、関連する複数の資料を探し出してもらいました。

 

 その中の一つ、教育委員会編纂の「二戸の先人たち」という、小学校の副読本に、蛇沼牧場を開拓した蛇沼政恒(1849~1921)が紹介されていました。

 

 極めて興味深い内容なので、項を改めて紹介したいところですが、このブログの主題から外れますので、要点だけを記しますと、

 

 蛇沼政恒は1849年(嘉永2年)青森県三戸郡猿辺村蛇沼に生まれました。

 

 蛇沼家はその地に700年以上住む、有名な武士の一族だったようです。

 

 政恒は21歳の時に江戸に出て慶應義塾に学びました。

 

 やがて政恒は、大久保利通が奨励した緬羊飼育を二戸で行う夢を持ち、東京駒場で緬羊飼育の研究を始めました。

 

 そして明治9年、政恒は25頭の緬羊をつれて、徒歩で二戸に向かい、23日後に二戸に到着しました。

 

 順調に子羊が育ち始めたやさきの明治13年秋に突然、緬羊牧場が狼に襲われ、全滅するという悲劇に見舞われました。

 

 しかし政恒は再度江戸から徒歩で、二百頭の緬羊を連れて二戸に戻り、冷害で緬羊を失うなどの苦労を重ねながら、牧場経営を続け、1921年(大正10年)に72歳で世を去りました。

 

 この資料の末尾に、「彼の夢を見守り続けたアメリカスズカケノキは、日本一の大きさになって、今でも上野地区を見守っています。」と記されていました。

 

 二戸図書館で資料を数十枚コピーし、14時半頃に次の目的地へと車を走らせましたが、車の中でフーとため息をついて、まだ昼食を摂っていないことに気付きました。

 

 蛇沼政恒と蛇沼牧場に関連する資料に記載されていた、夢とロマンに溢れる物語は、それほどまでに私を夢中にさせてくれたのです。

 

 

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