国道118号を少し戻って、矢祭小学校の脇で国道349号へ左折しました。
その先、国道は名も知らぬ久慈川の支流に沿って阿武隈高地へと入ってゆきます。
次なる目的地は、福島県いわき市山王町膳棚です。
ナビが「目的地に到着しました」と告げる前から、田畑の脇に赤いヒガンバナの炎が揺れていました。
どうということのない、いつかどこかで見たことのあるような、懐かしい里村の風景が周囲に広がっていました。
道路わきの法面が赤い花に染まっています。
少し日が暮れてきたためか、花色が濃さを増したように感じられます。
明るい場所の花色は、赤よりも紅とでも呼ぶべきかもしれません。
淡い黄金色の稲穂を背に、ヒガンバナの紅が目に染みます。
日本中どこにでもありそうな、それでいて、殆どの人が目にしたことがなさそうな、不思議な感慨を伴う光景が、秋の虫の音を伴いながら、私を包み込んでゆきました。
一瞬、夕闇が近づく気配で我に帰り、今夜はどうしようかと、俄かに現実に引き戻されました。
いわき市ではもう一か所、常盤水野谷町の梅林寺というお寺にヒガンバナが咲くはずです。
今日中に梅林寺を訪ねることができれば、夜道を二本松市まではしり、明日からのスケジュールが随分と楽になります。
ナビで到着時間を確かめると、18時前後を示していました。
ん~ ちょっと微妙ですが、何とかなるかもしれません。
がしかし、いわき市周辺で夕方の渋滞に巻き込まれました。
とは言っても、ナビは信号が連なる都会の速度で計算していますので、陽が山影に沈み込んだ時間に少し遅れて、梅林寺に到着しました。
山門横の駐車場に車を止めて、本堂に上る石段の下に立つと、両脇をヒガンバナが赤く染めていました。
そして、刻一刻と周囲は闇に包まれてゆきました。
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