仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

映画『三島由紀夫vs東大全共闘』

2020-03-23 04:00:47 | ドラマ、映画

 

映画『三島由紀夫vs東大全共闘』を観てきました。
兵庫県民は大阪に行くなと言われてるので、兵庫県西宮市の映画館へ。
 






実は僕は大学の卒論のテーマを三島由紀夫にしていたので、東大全共闘とのシンポジウムでの三島の発言はおおむね知っていました。
有名なところでは、「君たちが天皇と言ってくれれば、私は君たちと共に闘う」という言葉。
でも、この言葉がどんな文脈で語られたのか、三島の真意がどこにあったのか、その場の空気はどうだったのか、それはわからなかったのです。
 
さて、観ての感想はというと。
三島の偉さを再認識しました。
それは発言内容もさることながら、討論の姿勢が素晴らしい。
学生たちの言葉を一度たりとも遮ることなく、最後まで聞く。
自分の言葉が学生に遮られても、自分の言葉を中断してまで学生の言葉を聞く。
これはなかなか出来ることぢゃない。
 
いまテレビでなんらかのテーマで催されている討論会を観ても、必ず誰かが発言中に相手のことばを遮って自説を喋り出す。
昔のことをいえば、地下鉄サリン事件の時の、あの有名になった女性評論家。あれは発言内容は的を得ていたものの、議論をするルールを無視した見苦しいものだった。
今でもそう。
とある老人司会者の見苦しいことたるや筆舌に尽くしがたい程だ。
会社にもいるよね、そういう人。
特に地位の上の人に多い。
あれは自分の立場が上だという意識のなせるわざなのだろう。
 
ところが三島にはそうした姿勢が全く見られない。
学生たちの、生煮えで咀嚼不足な言説にも、そうだねと受け容れる。
その上で自説を語りかける。
役者が違う。
 
東大全共闘の学生たちは今72歳前後の高齢者になっているのだけれど、この映画を見せられて、どんなに恥ずかしい思いをしているだろう。
と思いきや、全く成長していない自我肥大のままの演劇関係者がいたのには苦笑した。
あ、こんなことを云うと、あの世代の方々に嫌われてしまいそうですね。
 
それはさておき、これは面白かった。
三島は翌年、憲法改正を訴えて市ヶ谷で自決するのだけれど、それを予言するかのような言葉もあった。
これは僕も知らなかったので、興味深かった。
僕の視点は少し偏っているかもしれないけど、思い入れなしに観ても、それなりに得るものがあるんぢゃないかな。
 
1969年という、あの時代の空気を感じることが出来るだけでも観る価値があるでしょう。
おすすめです。
 
 

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4 コメント

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Unknown (AZM)
2020-03-23 05:23:00
おはようございます。
とても気になる作品です。
レビューありがとうございました。
AZMさん (仙丈)
2020-03-23 05:28:29
左翼と右翼なんてレッテルを、三島はどこ吹く風といった様子でした。
この映画ではありませんが、新宿騒乱の時も、あっけなく鎮圧されたことを残念だと云った言葉が残されています。
ちなみに登場した元全共闘の闘士で地方公務員になった人物がいたのにはウケました。
三島由紀夫籠城と私 (馬鹿も一心です。)
2020-03-23 07:12:59


三島由紀夫事件と同期
https://blog.goo.ne.jp/kikuchimasaji/e/f768b6485c2759bfea557bd2adf07d84

https://blog.goo.ne.jp/kikuchimasaji/e/de6e29b880f996a7af682e64936cc6a0

https://blog.goo.ne.jp/kikuchimasaji/e/fe69d61f7b297f84cc44937aef8cd922

https://blog.goo.ne.jp/kikuchimasaji/e/be5c203e17cdb4f36e213fb0b4c764c5
森田を介錯した同期は静岡で余生を送っていますが
右翼の神様として警察も手をだしません。
又公安調査庁は、絶えず動向を監視しています。
Unknown (仙丈)
2020-03-23 08:34:46
古賀さんでしょうか。
古賀さんは確か2人いたかと思いますが…
高校のOBに楯の会の会員がいましたので、その人から聞きました。

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