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仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

ただあなたの優しさが怖かつた

2011-02-03 21:38:13 | 日々雜感
このところ、湯槽に30分浸かることにしてゐる。
その間、結構ヒマなので、歌を歌つたりする。
カラオケで歌ふ、私の數少ないレパートリーの中から歌ふので、たいがい毎日同じ歌になる。

その中に、南こうせつとかぐや姫の「神田川」がある。
私が中學生の時に流行つた歌で、初めて聽いた時には衝撃的だつた。
何が衝撃的だつたかと云ふと、メロディーが平坦で、まるで獨り言のやうに聞えたのだ。
歌といふものが持つ華やかさがまるでない、まるでお經のやうな歌だと思つた。

そんな歌でありながら、意外にもこの歌は私の中に住みついてしまつた。
犬の散歩にも歌ひ、風呂の中でも歌ふ。
歌ふたびにいい歌だと思ふ。

ところが、風呂の中でヒマにあかせて歌つてゐる所爲か、最近、妙なことに氣が附いた。
と云ふか、疑問に思ふことがでてきた。
歌詞の最後に「ただあなたの優しさが怖かつた」といふ件りがあるが、「あなたの優しさ」とは何だらう?
1番の状況。
一緒に錢湯に行つて、一緒に出ようと約束したのに男がなかなか出てこない。
お蔭で、私は髮の芯まで冷えてしまひ、持つてゐた石鹸箱がかたかたと鳴るほど顫へてしまふ。
それなのに、男は私のからだを抱いて、一言、「冷いね」と云ふのだ。
2番の状況。
男は私の似顏繪を描くが、ちつとも似てない。
三疉の狹い部屋で、男は私の指先を見つめて「かなしいかい」と訊く。
この状況で、男の優しさは、いつたいどこに現れてゐるのだらう。
どうにも理解できない。
1番に至つては、女を寒空の中で待たせる男の身勝手さが描かれてゐるだけではないか。

この頃の、私小説的なフォークを「4疉半フォーク」などといふ。
このやうなフォークソングに登場する女は健氣な女が多い。
男にとつて、古き良き時代の歌と云へるかもしれない。
いまの女性は、この歌のやうな女性をどう思ふのだらう。
男からみても御伽話としか思へないのだから、いまの女性からすれば、絶滅した生物のやうに見えるのではないだらうか。

でも、身勝手な私は、いまの世の中にもこんな女性がゐて欲しいと願ふのであつた。




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