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公立相馬総合病院の研修医のブログ

被災地医療を支える公立相馬総合病院
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こどもと震災復興シンポジウム

2016年05月08日 | 日記
前回のブログでむちゃ振り?されているような気がする研修医名取です。

ところで、この週末は相馬市で”こどもと震災復興”という国際シンポジウムが開催されていました。主催したのはお隣の病院の先生のようです。津波被害や放射線被害のその後に興味があったので行ってきました。

ちなみにこういった話題になるとすぐ政治的なイデオロギーと結びつけてしまう人がいるのですが、そういった事には私は関心はなく、本当にサイエンティフィックに津波や放射線の被害を知りたいので行っています。

今回のシンポジウムは、福島県と言えば放射線の話!というような固定観念にとらわれたものではなく、災害後のPTSDやストレス、避難リスクや損害賠償など幅広い話題に触れておりなかなか興味深いシンポジウムでした。時が経ち津波や放射線の話に少しずつケリが付き始めて興味の対象が実生活の中に向き始めていることなのかなとも思います。そして、これまで草の根的に住民の方々に教育活動をされてきたことが功を奏して、この地域の年間追加被ばく量がたったの1ミリシーベルト以下だったという知見が浸透し、関心が減ってきているのかもしれません。そうだったら良いなと思います。実際に私が相馬で会った人たちはこういったことにあまり興味を持っていない印象を受けます。

そうなのですが、これは地元の方や専門家などよくわかっているような人の話であって、県外の人にも同じ知識があるかというと話は変わります。これは去年や今年の話なので驚くかもしれませんが、相双地区に魅力を感じて科学的にも納得したうえで研修を希望した女性医学生が、親御さんから反対されて来られなくなってしまうことがあります。実際に私も相馬に来るにあたって、「相馬って今住めるの?」と聞かれたこともありました。相馬在住の人たちにとっては失礼極まりないですが、これらのことはまったく悪気はなく、単に相馬市と原発被害地域の位置関係が認知されていないということと、放射線の知識が5年前のよくわからなかった状態からアップデートされていないことだと思っています。県内に住んでいると地元新聞や地元TV局でよく目に付くので知識が更新されますが、残念ながら県外の人の知識は少し古いままのようです。

そういうわけで、これまでの間に観察研究がかなり進んでおり、外気から受ける外部被ばく量はとても少ないことが分かっていますし、食物から受ける内部被ばくもスーパーのものを食べていれば大丈夫ですよ、という知見がもっと全国に浸透して、親御さんも納得して、心ある研修医の方々が相馬に来てくれればなと思っています。