週刊 新大土壌研

新潟大学農学部農学科 土壌学研究室の活動日記です 『週刊』を名乗っていますが、不定期に更新していきます

5月2日の質問 回答

2011-05-09 | MN(野中)

質問があります。➀梅雨前に土を削って原発に返すべきという意見はどう思われますか?②校庭などに関してはどう対処すべきでしょうか?
お手数をおかけしますが、教えて頂けますでしょうか。

 

5月2日付で上記質問を受けました。5月6日~7日福島市、相馬市、南相馬市、二本松市、で調査を行い郡山市経由で新潟に戻りました。①②については出来るだけ早くすべきです。この地域の土壌は火山灰土壌が多く、飛散しやすいことが理由です。管理型の廃棄物処理場に優先的に埋め立てるしかありません。東京電力が責任を持ってこれも廃棄物処理場も今から準備すべきです。

 


相馬市、南相馬市、飯舘村、二本松市における農家聞き取り調査 野中

2011-05-09 | MN(野中)

 

  56日~7日にかけて、学会副会長澤登先生を団長として日本有機農業学会のメンバー(新潟大学からは原田先生、伊藤先生、野中)、茨城大学、中央農研センター、東北農試、農村工学研究所、東京農工大学等のメンバーで現地調査と相馬町、南相馬町、二本松市の30Km 、20Km、40Km圏内農家多数と飯舘村農家から話を聞くことができました。

 

 相馬町では水田面積の40%が津波の被害を受けて、コメの生産量では60%程度が今年作付できないとのことです。飯舘村は昔からのやませの通り道で冷害多発地地帯でしたが、それを克服するために有畜複合と多品目栽培農業村として自立してきました。今回はやませの代わりに放射能の通り道となってしまいました。飯舘村では過去の冷害が発生しやすい田んぼと土壌汚染に相関がありそうです。

  

 福島県は原発問題があり、復興が大変遅れている印象です。

 

 改めて、詳細は紹介しますが、地元農民から農業復興のための支援を求められており、土壌学研究室としては出来る限りお手伝いする予定です。

 

 それぞれの地域で抱えている事情が異なります。画一的な対策でなく各市町村のそれぞれの地域に応じた対策が必要です。

 

 たとえば、南相馬市では来年以降稲作を行おうとした場合、その水源は飯舘村にあります。地形から水源地には汚染された水が集中しそうです。

 

 飯舘村では村の微地形と現在の土壌の状況(裸地、草地、耕作地など)で隣同士の田畑でも土壌汚染程度が異なりそうです。 

 

 二本松市では森林も含めて、土壌汚染がどうなっているか、一番心配していました。

 

 なお、相馬町では津波(約15m)が来た時、津波の轟音(ブルとーザーが100台ぐらい押し寄せる音)と家がきしみ、壊れる音、人の叫び声(悲鳴)の3重の音が聞こえ、聞いた人は1カ月程度その音が耳から消えなかったと話していました。


相馬市、南相馬市、飯舘村、二本松市を調査してきました 野中

2011-05-09 | MN(野中)

 ブログはしばらく休みました。

連休の前半は茨城で被災した叔父のお見まいに出かけ、知り合いの農家の田植えの準備をして、6日~7日、福島市から相馬市、南相馬市、飯舘村、二本松市で調査を行ってきました。おもに、農家の聞き取りが主でした。その前に、下記の情報を東京農工大学木村先生からいただきましたので公開します。

 

 

データを見て思ったのは、

南ドイツ程度の汚染(福島の広域での汚染状況に当てはまる)では、

一般的な食品で、

Cs摂取基準を上回るのは、1年目の葉菜類、1番草のみで、

1年目の対策がカギになるということです。

風評被害も、今年、対策をきっちりすることで防げるのではないかと思います。

 

野獣やキノコ(おそらく日本では山菜も)、川魚の汚染は

より長期に渡り、今後、問題になるだろうと思います。

 

木村園子ドロテア

 

 

 

 

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ドイツ南部は1986年4月26日のチェルノブイリ事故後、

4月30日から5月1日の第2波の風にあたり、汚染されました。

西ヨーロッパでは、南ドイツ・オーストリアが最も汚染された地帯で、

その後の経緯がよく残されています。

 

ドイツ南部の汚染が生じたのは、ほぼ1日間のみで、

大気中の放射線量は、

5月1日18時にピークを示し、その後急速に減少しました。

その時の最大値は、ミュンヘンでは110Bq/m3(およそ5μSv/h)でした。

大気中のCsに由来する年間積算放射量は、

1986年と1987年は50-80 μSv/年でしたが、

1988年には10 μSv/年に、その後も急激に減少していきました。

 

ドイツ南部、特にバイエルン州が汚染され、

Cs137では最大173kBq/m2の汚染が見られました。

降雨の状況によって、汚染の程度は大きく異なり、

隣接する市町村でも最大10倍程度の差が見られます。

 

バイエルン州の

畑地土壌のCs137汚染は、耕起を行ったため、

検出限界以下の地域が多くみられました。

南部での最大値は100-320Bq/kgでした。

草地でも、検出限界以下の地域が多くみられましたが、

局所的に土壌の深さ0-10㎝で高い値が見られ

320-1000Bq/kgという値が見られました。

耕起をしないため、同じぐらい高い値は2004年になっても認められました。

一方、森林土壌の落ち葉層は、ほぼバイエルン全州にわたって

320-1000Bq/kgとい値を示しました。

森林土壌深さ0-10㎝も畑地や草地よりも高く、

100-320Bq/kgを示した地域は半数以上でした。

 

バイエルン州の食品については、

1986年に特に葉菜類で100Bq/kg以上の高い値を示しました。

穀類(収穫は6-7月)も100Bq/kg近い値となりました。

根菜類や夏野菜は10Bq/kgを少し上回りましたが、

ジャガイモや飼料作物は10Bq/kg以下でした。

1987年にはすべての値は10Bq/kg以下となっており、

1989年以降は、2005年まで同様の値で推移しています。

EUの食品の摂取基準は600Bq/kgで、

葉菜類の一部が基準を上回った以外は、

基準内の値となっています。

 

牧草では、1番草が1986年に1000Bq/kgとい高い値を示しました。

2番草は100Bq/kg以上でしたが、

牛肉、牛乳やチーズは、100Bq/kg以下の値でした。

(それらの飼料を施用しなかったため)

1987年から1990年にかけて値は急激に減少し、

1987年以降は牧草も100Bq/kgを超える値はなくなり

1989年以降は10Bq/kg程度の値となりましたが、

2005年と変わらない値になったのは、1993年になってからでした。

 

年月によって、あまり変化せず、高い値で推移した食べ物は、

森のキノコ類やイノシシやシカ肉です。

特にXerocomus badiusLeccinum scabrumというキノコは高いCs吸収力を有し

Xerocomus badius1000Bq/kg近い値を現在まで示し続けています。

イノシシやシカ肉のCs濃度は、1986年から1997ねんまでほぼ同じぐらいの高いレベルで推移しました。

特にキノコを好むイノシシは、2005年も1000Bq/kgを超える値が見つかっています。

 

川魚で特に高い値を示したのは、

ヨーロピアンパーチで、

1986-1988年まで1000Bq/kg近い値をとり、

2005年には1010Bq/kgを少し超えた値となりました。

一方、マスは1986年も10Bq/kgを少し超えた値で、

1990年では1Bq/kgに減少しています。