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「東京物語」 昭和28年小津安二郎監督 名場面 「201」

2024-03-31 14:48:41 | goodシネマ

「東京物語」 昭和28年小津安二郎監督  名場面 

 

 

 東京物語 小津安二郎

「東京物語」   昭和28年小津安二郎監督作

小津100年祭では世界で催され、世界で再評価されてます。

日本の家族の崩壊を予見させる映画です。

その当時の日本人の美しい言葉使い、他人に対する思いやる心が満ち溢れています。

小津安二郎の映画は絶えず生と死を感じさせます。

我々は大切な家族の思いやりを思い出させます。

  

とみの前に座り、 
紀子・・・「ねえお母さま-」 
と言う紀子。 
とみ・・・「なんな?」 
紀子がとみへ、そおっと小さい包み紙を差し出す。 
紀子・・・「あの……お恥かしいんですけど これ-」 
とみ・・・「なに?」 
紀子・・・「お母さまのお小遣い」 
とみ・・・「なにを あんた」 
紀子・・・「いいえ ほんとに少ないんですけど……」 
とみ・・・「だめでさあんた こんなこと-」 
紀子・・・「でも 気持ちだけなんですから……」 
とみ・・・「いけんいけん」 
とみの手に両手で包み込むようにして渡す。 
紀子・・・「でもお母さま-」 
とみ・・・「だめよ こんなことしちゃ」 
紀子・・・「どうぞ-」 
とみ・・・「ううん わたしのほうこそあんたにあげにゃいけんのに」 
紀子・・・「いいえ そんなこと ねえ どうぞお母さま どうぞ-」 
とみ・・・「そお? すんませんな-」 
包み紙を両手でかかげお辞儀をするとみ。 
「じゃ いただきます」 
紀子・・・「どうぞ」 
とみ・・・「あんたもいろいろ入り用が多いいんじゃろうに- 
 こんなことまでしてもろうて ほんとになんというたらええか……」 
紀子の手を両手で包み 
「ありがとよ紀さん……」 
と言い感極まるとみ。 
「ありがと……」 
とみは紀子が昔と変わらない心遣いをしてくれるのが嬉しくて涙を流す



周吉は窓から見えるとみと勇の方を見る。 
周吉・・・「ああ あんなとこで遊んどるよ」 
文子も見る。

無邪気に遊んでいる幼い勇に向かってとみが言う。 
勇・・・「…」 
とみ・・・「勇ちゃん あんた 大きうなったらなんになるん?」 
勇・・・「…」 
遊んでいる勇を見ながら、独り言をいう。 
とみ・・・「あんたもお父さんみたいにお医者さんか?- 
 あんたがのう お医者さんになるころァ お祖母ちゃんおるかのう……」 
勇・・・「…」 
老いを感じながら見詰めているとみ。 
 とみの身に迫っている死を暗示している。 
 一方、周吉も背中を丸めとみたちを部屋から眺めている。 
 老いを感じさせる描写に死に向き合っている老人の孤独が見えてくる。 
 それを自然の移り変わりのように撮っている小津監督の手法は見事だ。 
 別の所帯を持っている幸一たちに気遣う老夫婦の姿もその一端であろう。 
 このような描写はこの後も繰り返される。

  

高台に佇み、明け染める海を見詰めている周吉の所へ行く紀子。 

紀子・・・「お父さま-」 
周吉・・・「ああ……」 
紀子・・・「敬三さんお見えんなりました」 
周吉・・・「そうか…… 
 ああ ……きれいな夜明 けだったァ…… ああ……今日も暑うなるぞ……」 
 とみを亡くした悲しみに耐えようとするかのように心静かにいう周吉。 
 そして、小津監督はどんなに悲しい出来事があっても世界は存続していることを周吉の台詞で伝えている。

    

若い京子は兄姉達の非人情が嫌だった。 
紀子はそんな京子に、 
紀子・・・「でも みなさんお忙しいのよ」 
と言う。 
京子・・・「でも ずいぶん勝手よ 言いたいことだけ言うて さっさと帰ってしまうんで すもの」 
紀子・・・「そりゃ仕様がないのよ お仕事があるんだから」 
京子・・・「だったらお姉さんでもあるじゃありませんか 自分勝手なんよ」 
紀子・・・「でもねえ京子さん」 
京子・・・「ううん お母さんが亡くなるとすぐ お形見ほしいなんて あたしお母さんの 気持ち考えたら とても悲しうなったわ 他人同士でももっとあたたかいわ 親子ってそんなもんじゃないと思う」 
紀子・・・「だけどねえ京子さん あたしもあなたぐらいの時にはそう思ってたのよ 
 でも子供って大きくなると だんだん親から離れていくもんじゃないかしら 
 お姉さまぐらいになると もうお父さまお母さまとは別の お姉さまだけの 生活ってものがあるのよ お姉さまだって 決して悪気であんなことなすったんじゃないと思うの 
 誰だってみんな自分の生活がいちばん大事になってくるのよ 
京子・・・「そうかしらん でもあたしそんな風になりたくない それじゃあ親子なんてずいぶんつまらない」 
紀子・・・「そうねえ…… でも みんなそうなってくんじゃないかしら…… だんだんそうなるのよ」 
京子・・・「じゃお姉さんも?」 
紀子・・・「ええ なりたかないけど やっぱりそうなってくわよ」 
京子・・・「いやァねぇ 世の中って……」 
紀子・・・「そう いやなことばっかり……」 
京子・・・「……」 
紀子から大人の生活の厳しさを言い聞かされ、京子はこれから踏み入れる世界を思い気が重くなる。 

 

京子・・・「じゃお姉さん お大事に」 
紀子・・・「ええ ありがとう あなたもね」 
京子・・・「うん」 
紀子は京子の手を両手で包み込みがら、 
紀子・・・「きっといらっしゃいね 夏休み」 
と言う。 
京子・・・「うん」 
優しい瞳の紀子が京子の髪に手を持ってゆく。 
京子・・・「じゃ さよなら」 
紀子・・・「さよなら」 
京子・・・「行ってまいります」 

 

周吉から貰ったとみの形見の時計をバッグから取り出す。 
形見の時計を両手で包み込み、 
紀子・・・「……」 
紀子は前を向き東京へ向かう。

 

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銀幕の女神 原 節子 永遠に

 
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