ときめ句ノスタルジッ句昭和親父の温故知新

思うままに、俳句と唄を、昭和の匂いをぷんぷんさせて。

青空に向いて咲き初む白木蓮

2020-03-16 | 詩物語
     

     

     


     


     風吹けば白木蓮の羽ばたきぬ


     


     曇り日の白木蓮の薄曇り


     


     コーラスの純白ドレス白木蓮






沈丁花

2020-02-24 | 詩物語
沈丁花が今あちこちで見かけます。若い時はもっと匂いが強く感じられたのは、若い時はそれだけ嗅覚が発達してたのでしょう。齢とともに嗅覚も衰えて来る気がします。中耳炎を患ったことも原因でしょうが。

         沈丁の突き刺さりたる香の刃


     


     沈丁の毬の艶めく雨上り


     


     沈丁の雨に頷く如く揺れ


     沈丁花雨の滴も香るかな


     文鳥の嘴のごと沈丁花


     晩酌に混じりたる香や沈丁花


     沈丁の香のピン止めや片思ひ


     沈丁の香りに恋の予感して


     


     白猫の青い片目や白沈丁



コーヒーの香り③初めての東京

2019-04-11 | 詩物語
 コーヒーは孤独を誘う香り
 そして 孤独を癒す香り
 時には苦く ほろ苦く…

その年だったのか 正月休みに東京に行った
クラスメイトだった 親友のYに会いに
Yとは 卒業してから時どき手紙のやり取りをしていた
前もってYには手紙で伝えておいた
汽車で着く東京駅で 待ち合わす場所も連絡済みだった
このことをショートホープの彼に話すと
「俺も行く 一緒に行っていいかな」と言った
心細い自分には嬉しいことではあった
ただ Yと会って気が合うのかが心配だった

まだ蒸気機関車だったと思う
寝台ではなかったように記憶している
着くと ショートホープの彼が先に立って出口を探した
すぐに待ち合わせの場所に辿り着いた
Yはすでに来て待っていた
僕は人混みの向うにYの横顔を見つけた
と同時に こっちを見たYと目が合って
傍に近づいて行った そして
言葉を掛け合うよりも表情を交わし
すぐに学生の頃の気持ちになった
とYは僕の隣りにいるショートホープの彼に気づいた
僕は簡単に会社の人だと紹介したと思う
お互いに軽く頭を下げた それだけだった
この時 Yが何か受け付けない気を発したのだろう

「じゃあ Sちゃん」と僕に言うと手を振った
驚いて どこへ行くのかと訊くと
姉のところに行くからと 心配しなくていいと
すぐに僕の気持ちを察して 雑踏に消えて行った


初めての東京は やはり九州の片田舎の町とは雲泥の差だった
はぐれないように Yの後をついて行くのがやっとだった
順序は覚えていないが 東京タワーに連れて行ってくれた
それから新宿にあった「灯」にも
そして 思い出すのはピロシキ
新宿の 名前は忘れたがデパ地下で買ったと思う
大好物のようで にこにこしながら
僕にもくれて一緒に頬張った あの時の笑顔
学生の頃のままだった

その夜 Yのところに一泊して翌朝すぐに
東京駅まで見送ってくれた
東京タワーで僕に土産に買ってくれた
ビートルズのポスター二枚は
長い間 僕の部屋に飾っておいた
当時 流行りのシルクスクリーンだった


会社の倉庫の隅に部屋をこしらえて
独りで住んでたY
卒業して初めての会社は半年続いたのだろうか
二度目の職場の片隅だった
ペンキの匂いのする片隅の 粗末な部屋だった
古い石油ストーブの 灯を見つめて
Yのそれまでの愚痴を聞いた
それは 初めて見る苦労の横顔だった
僕は時おり パネルにして飾った
ビートルズのポスターを見ては
Yのことを思った

ピロシキの 笑顔の他に
空に 耀く目をして大きく見せた笑顔
それは担任の先生のことだった
在学中は大嫌いで センコー呼ばわりしていたのに
それが Yが東京へ就職するため
故郷の駅を離れる時だった
担任の先生が見送りに来てくれたのだ
餞別を渡しYの手を握って涙を流して 頑張るんだ
と あのこわい厳しい先生が
涙など一度も見せたことのない あの先生が
まさかの 予想もしなかったことだった

そのことを聴いて 僕もほんとに意外だった
このことも時おり思い出して 熱く想像した
僕が東京へ Yのアパートに
転がり込むことなど まだまだずっと
微塵も想いもつかない頃だった












にほんブログ村 ポエムブログへ
にほんブログ村

コーヒーの香り②歌声喫茶

2019-03-19 | 詩物語
 コーヒーは孤独を誘う香り
 孤独を癒す香り

街に 一軒だけ歌声喫茶があった
ショートホープの彼が連れて行ってくれたと思う
場所はもうはっきりとは思い出せない
繁華街の外れの 狭い階段を上がった二階にあった
喫茶店の名前も忘れたけど おばあさんが経営していて
一人で注文を聴いてテーブルまで運んでいた
六十代ではなかったろうか
そうそう おとなしいダックスフンドが居たっけ

小さいピアノがあった
それを弾いてる女性が 娘だったのかもしれない
初めてドアを開けた時も すでに伴奏と歌声がしていた
そう広くもない店内は テーブル席ばかりだった
二人掛けと四人掛けで ほぼ満席だった
それを一つ詰めてもらって僕らは座った

でも 彼は歌好きというふうではなかった
備え付けの歌本を捲ってるだけだった
と言う僕も 一緒に歌うのはまだ恥ずかしく
やはり下を向いて歌本を捲っていた

東京の歌舞伎町にあった「灯」の
あの活気には到底およばない
店の大きさだけではない
指導者もいないから 実に細々とした空気で
もしもここに「灯」の指導者が来たなら
叱り飛ばされたかもしれない
だけど僕には ここの雰囲気が好きになって行った
みんなどこか慣れ切っていなくて 内気だ 
高らかに 力強く歌う人はいない
その はにかんだ連帯感が好きだった


彼は僕に場所を教えてくれただけだった
その後は僕一人で行くようになった
初めて歌ったのは「ドナドナ」だった
よく流行った歌で テレビやラジオでもよく聴いた
だから 歌えるはずだった
歌本を見ながら歌い始めたのだが
ピアノの伴奏で歌うのも初めてだったし
テーブル席で座ったままでも あがってしまった
そして「ドナドナ」と歌う箇所が 歌詞には
「ドンナドンナ」とあったため その通りに歌ってしまった
それでどうしてもリズムが狂う
狂うけど「ドンナドンナ」とまた歌う
合わない 顔が真っ赤になってるのが自分でわかる
見るに見かねたのだろう
傍の席の人が一緒に歌ってくれて
何とか歌い終えて ほっとした

床をダックスフンドが走り回っていたっけ
ヘタクソな歌声に興奮してたのかもしれない
吠えはしなかったと思う


この店で覚えて好きになった歌がある
「囚人の歌」だ
のちにこれが「ガレリアン」だと知った
この歌の歌詞に どこか
今の自分の気持ちを重ねていたのだろう
どこかに 自由を求めていたのだろう








にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村

コーヒーの香り①

2019-03-14 | 詩物語
コーヒーは孤独を誘う香り
孤独を癒す香り

初めて喫茶店でコーヒーを飲んだのは
あれは十八の頃だった
社会に出て 働き始めて
半年ほどは真面目に会社に行っていた

原因は漠然としか思い出せないけど
サボるようになって行った
それで 初めてズル休みを決め込んだ日
まだ朝の早い時間で 目についた喫茶店に入った
そこは 降りたバス停の近くの二階建ての
狭い階段を上った二階にあった
木の枠の ガラスのドアを押した
今でも名前を憶えている
「トリコロール」
名前のように 店のマッチは三色のデザインだった
小さな箱で 軸は黒だった
気に入って使わずにポケットに仕舞ったっけ

煙草はショートホープ
これは会社の仲のいい同僚の影響だった
中の銀紙の上の部分を半分残して切り取った 
煙草を抜き取るとき摘みやすくするためだった

彼は二度目の職場だった
髪形を 分けてはいずに
左目の上に少し隠れめに流していた
それは当時「若者たち」に出て来る俳優の
影響で流行っていたようだ
左目が隠れそうになると
ヒョイと頭を振って髪を風に直すのだった

                           
                    つづく




にほんブログ村 ポエムブログへにほんブログ村