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映画制作裏話ブログ

映画制作裏話をかき集め作品ごとに整理したブログです。mixi「独身社会人映画ファンコミニティ」のログ集!

映画VS原作「世界の中心で、愛を叫ぶ」

2004年09月13日 | 映画原作 映画製作裏話 独身社会人
原作と映画のノヴェライゼーション「指先の花」の両方が出版されているという
珍しいケースですが、両方見るに値します。
では、原作と映画のあらすじ比較を始めましょう。

映画の冒頭では、高校生の朔(森山未來 テレビ「ウォーター・ボーイ」)と
アキ(長澤まさみ「ロボコン」「黄泉がえり」)が、
病室で窓外の嵐の様子を見ながら「出発できるだろうか」
などと語らう場面から始まっています。

原作では、アキの死後、アキの両親と共に朔が、
アキの遺骨を散骨にオーストラリアへ旅立つところから始まっています。
映画には高校時代の散骨のエピソードそのものがありません。

映画では、大人になった朔太郎(大沢たかお)が職場で目を覚ます場面へ続きます。
上司(天海裕希)に「正社員は土曜出勤ですか?」などと言っています。
「朔太郎の名は、萩原朔太郎から取っている」というエピソードが
この上司とのやり取りの中で出て来ます。
原作では、中学二年の始業式の翌日に足を骨折し入院したクラスメートの大木を、
アキと二人で病院に見舞いに行き、
大木の名が、大木龍之介で芥川龍之介から取られているという話が出るところで、
出てきます。
原作ではこの中学二年のときに、
アキと朔は知り合ったことになっています。

その上司に「恋人とかいないの?台風なんだから、一緒に居なくて良いの?」
と言われて、ブラインドの表を見ると町は曇り空です。

朔太郎の婚約者・律子(柴咲コウ)がアパートで引越し荷物の荷解きをしながら、
実家の父と電話で話しています。
「父さんこそ、だれか良い人いないの?」
どうやら母親のいない娘のようです。
部屋の中を歩き回る様子から、彼女が片足を引きずっていることが分かります。
引越し荷物を整理するうちに、
小さな赤いカーディガンが出てきます。
「まだあったんだ」
律子は頬を緩ませ、鏡の前で羽織って見ます。
よほど小さな頃の服だったようで、肩は通りますが、前のボタンを占められず、
胴も大きくはみ出してしまい、律子は苦笑しますが、その時、
ポケットの中から古いカセットテープがケースごと出てきます。
テープの背には、“86/10/28”と丸みをおびた女の子の筆跡で
書かれています。

律子は家電店を訪ね、ウォークマンを探します。
MDやCD用のウォークマンを勧める店員に
「カセットテープの聞けるウォークマン」と念押しして怪訝な顔をされます。

夜の街の雑踏を歩きながら、
律子はウォークマンにテープを入れて聞きます。
そこから「明日が来るのが怖くて眠れない」と泣き声で訴えるアキの声が流れます。
律子は行き交う人並みの中で立ち尽くし、黙って涙します。
頬を涙が流れ落ちたところで、画面は暗転しメインタイトルが登場。

「世界の中心で、愛を叫ぶ」

原作ではお終いの部分で、成人後の朔太郎とその恋人らしき女性が
朔太郎のふるさとを訪ねてくるのが出てきますが、
女性には名前が無く、婚約者かどうかも分かりません。
この原作のイメージを手がかりに映画では、
大人の朔太郎とその婚約者・律子が創作されています。

暗いアパートに朔太郎が戻ってくると、真っ暗な部屋の中に律子の
「ちょっと出かけてきます」という書置きが残されています。
朔太郎は大木龍之介がやっている喫茶店に姿を見せ、
何か食わせろ、と注文しています。
「かわいいフィアンセがいるんだから、こんなとこに来るな」
と叱られています。
大木龍之介の役は脚本家の宮藤官九郎が演じています。
「GO」「木更津キャッツ・アイ」などの売れっ子脚本家です。
最初、映画を見たとき、この店長役がどういう人物なのかよくわからず、
二度目に見て、大木龍之介と気がついて結構驚きました。
大木龍之介は映画でも高校時代のエピソードに登場しています。
原作では中学時代からアキと朔を見守る友人役ですが、
映画では、その後の朔に律子を紹介したのも彼のようです。
登場場面は原作よりはるかに少ないですが、
ドラマ全体のバックボーンを支える重要な人物の一人として登場しています。

朔太郎が、律子が書置きを残して留守にしていると聞いて、龍之介は
「書置きというのは駆け落ちとか自殺の時に書くものだ」と妙な脅かし方をして、
朔太郎に電話をするよう勧めます。
店内のテレビでは高松からの中継で台風が四国に向かってることを報じています。
朔太郎が携帯をかけると、
テレビのアナウンサーの背後の歩道で若い女の子が携帯電話を手にしました。
「あれ、律ちゃんじゃないか?」
確かにあの足を引きずる姿は律子です。
朔太郎は、思わず携帯の呼び出しを止めてしまいます。
次の瞬間、どすんと音がして、横断歩道を歩く律子の姿が突っ込んできた
乗用車の影に消えます。
アナウンサーも思わず振り返りますが、
何事も無く律子が姿を現し、アナウンサーも中継を続けます。
テレビの前で息を呑んだ朔太郎と龍之介も安堵し、今度は
「なんで高松にいるんだ?」と首をひねります。
朔太郎は律子を追って、高松に向かいます。
ふるさとは初恋の彼女、アキとの思い出が眠る場所でもあり、
朔太郎はしだいにその思い出の中に迷い込んでしまうのですが。

雨の中を走る朔太郎が、高校生の朔の走る姿にダブります。
映画の故郷の高松、木庭子町(こばねまち)というのは架空の町で、
原作では町の名さえ出てきません。
朔は港の岸壁の堤防を叫び声を上げながら走ります。
カメラは青く高い空を捕らえて、
嵐の現代とは違って、色鮮やかに見えます。
いったん画面全体が真っ白になって字幕が出ます。

1986年

原作では時代は特定されていません。
しかし、映画ではウォークマンがはやった1986年に定められています。
ディスコの「マハラジャ」が絶頂で、おにゃんこクラブととんねるずが流行で、
スペースシャトル「チャレンジャー」が爆発事故を起こし、
アイドルの岡田有希子が飛び降り自殺した年です。
68年生まれの行定勲監督にとって思い入れのある年なのでしょう。
アキと朔は69年生まれと設定されています。

つづきはhttp://www.cam.hi-ho.ne.jp/la-mer/pro-aiosakebu.htmlに掲載。

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トラバありがとうございます。 (由松)
2004-10-21 09:17:03
TBありがとうございました。

こちらからもTBさせて下さい。



読み応えのあるブログですね。

他の記事もゆっくり読ませていただきます。



『世界の・・・』は原作もドラマもなんとなく軽い気持ちでスルーしてしまったのですが、映画も見て見ようかな、という気持ちになりました。
返信する
こちらこそ (管理人・新宿です。)
2004-10-21 16:42:19
是非、ゆっくりご覧くださいまし。笑



軽い気持ちでスルーというのは良くわかります。

「世界の…」も知る人ぞ知るラブストーリーだったのですが、いつの間にかメガヒット作になって、かえって世間の反発を買ってしまったようなところがありますね。

私はプレイク直前くらいに見たのでまだ、愛情をもって原作も映画も見たのですが。
返信する
Unknown (snow_slow_snow)
2005-03-26 20:57:14
映画のDVDを1回観て、よくストーリーわからなかったので、こちらに来ました。

僕のBLOGでも引用させていただきました。事後承諾で済みません。映画はなかなかわかりづらいストーリーになっていると思うのは僕だけでしょうか?柴咲コウさんがこの小説の牽引役だったなんて、知りませんでした。ヒットしただけある良い映画でした。
返信する
引用 (管理人・新宿です)
2005-03-27 09:14:35
引用とあったので、全文のコピー貼り付けだと嫌だなと思い、そちらのブログを拝見しました。

プログ名の紹介とリンクなら”宣伝”のうちと理解できます。

 究極、うちにとっての”宣伝”と言うのは、独身映画ファンメーリングリストに人集めがしたいということですね。ブログはそのための手段のひとつという位置づけです。
返信する
はじめまして (雨宮けいこ)
2005-09-30 12:47:26
はじめまして、TBありがとうございます。

正直ビックリしました。どこからきたの!? という感じで。当方のブログは、1ゲーム特定のプレイ日記でしたので、また売名行為、宣伝目的の輩かと(失礼、時折いるもので/笑)。

原作と映画化(映像化)の比較って、面白いですね。製作者がどんな意図で、変更したのだろうと、考察してみると楽しいものです。

この作品は、原作、TVとも全く見てなかったので、興味深く拝読させていただきました。

過去の記事も興味をそそられ、今、読んでいるところです。また寄らせていただきますね。
返信する
ありがとうございます。 (k-japan)
2005-10-02 23:09:14
はじめまして。TBありがとうございます。

初めてのTBだったので大変うれしく思っております。

当方の内容がまったく世界の中心で愛を叫んでいなかったため大変驚いています。

私は本もドラマも見ていない状態で今回映画を見たので原作とこのように差があったとは、知りませんでした。ただ、その差に製作者の意図を感じ取れる考察で大変興味をそそられました。

今後も寄らせていただきます。

返信する
Unknown (にこちゃん)
2005-10-03 22:00:17
おそくなりましたが、TBありがとうございます。

とても映画についてくわしくブログにかかれていて、映画についてさらに興味をもちました☆

またぜひよらせてください☆
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トラバありがとうございます^^ (羊羽)
2005-10-05 00:15:01
遅れながら↓↓はじめまして&トラックバックありがとうございます。

「せかちゅー」の奥の深さを感じさせられてしまいました(・∀・;)

また何か気になったりした映画の情報など見させていただきますw
返信する
TBどうもです☆ (ピコ)
2005-10-05 22:46:50
TBありがとうございました☆実を言うとじっくり映画を観るのは『世界の…』が久々でした。普段映画あまり観ないので(汗)

何か色々と原作と映画の設定が変わってたみたいでそこが少し残念だったかなと。原作でじいちゃん、映画は写真屋の親父だったりとまぁ役的にはあんま変わらないのですが(笑)
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